■はじめに

 EC(電子商取引)とは,インターネットなどのオープンなネットワーク環境において,電子的に,取引から資金決済までを同時に処理するシステムと位置付けられます。しかし,現実にEC(電子商取引)という言葉でまず思いつくのは,インターネット・ショッピングではないかと思います。今の時期,20世紀最後のクリスマス商戦とあって,既存,新規を含め数多くのECサイトが百花繚乱しています。ECサイトにとって通年の30%近くを売り上げるといわれる年末商戦のこの時期に,こういった題材を紹介できるのは,筆者としてもうれしい限りです。

この連載では,まず,ECとはどんなものか,を整理し,さらにECサイト構築手法をテーマに説明していきたいと思います。

■ECとはどういったものか

 EC(電子商取引)とは具体的にどんなものを指すのかというと,かなり幅広い見方ができますし,いろいろな観点があると思います。大きな枠組みで考えれば,B to B,いわゆる企業間の取引(EDI : Electric Data Interchange)も当然その一つに含めることができます。人によって定義は様々ですが,筆者は,ECを以下のようにとらえています。

(1)インターネット技術またはインターネット・インフラを利用している
(2)企業と個人,企業と企業,企業内などの取引を指し,特に取引相手を定義しない
(3)受注,出荷,決済などビジネス上の基幹部分がシステム化されている

図1●EC(電子商取引)のイメージ
 このようにECを定義すれば,最近のECのトレンドや,サイト構築の上で重要なポイントを整理しやすいのではないでしょうか。例えば(2)に示したように,ECは,個人対企業だけでなく,企業間取引も入ります。また,(3)に示したように,ECは単にWWWサーバーを構築すればよい,というものではありません。物流,商品管理,売上分析,財務会計など,WWWのバックエンドに位置する業務系システムも不可欠な存在なのです(図1[拡大表示])。

 先ほどの定義は少し抽象的だな,とお感じになるかもしれません。そこで,インターネット・ショッピングを例にとって,もう少し具体的にECという言葉を考えてみましょう。一般的なインターネット・ショッピングをごく簡単に説明してほしい,などという依頼があった場合は,「インターネット上のお店」のことを例に取って具体的に,

(1)お店の装飾がホームページになり,
(2)店員のあいさつや接客応対がメールに変わり,
(3)レジがクレジット・カード取引などの電子決済に変わったもの

といった表現で説明することもあります。

 このように,現実の世界とインターネットの世界とを対比させてみれば,ECに必要な要素をとらえやすくなると思います。

 ただ,ご注意いただきたいのは,ECサイト構築という命題は,単に現状の商取引をインターネット上で実現させるだけではなく,新たなビジネスを創生していくものである,ということです。単に現実の世界にあるものをそのままインターネットの世界に置き換えただけでは,優れたECシステムは構築できません。バーチャルな世界の中で,店舗をいかに巧みに演出していけるか否かという点を,多くの店舗(運営企業),出店請負人(ソリューション・ベンダー)が競っています。つまり,「ECは実体の模倣ではなく,新たな創造である」と表現できると思います。

 ECの分野ではたいへん興味深い技術,アイデアが次々に生まれてきています。次回からはこうした動きをふまえて,ECサイトの構築,運営手法を,インターネット・ショップを例にとって説明していきたいと思います。どうか最後までお付き合い下さい。