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 今回はLinuxの用途やLinux上で使用可能なアプリケーションについて説明する。LinuxはUNIXの流れをくんでいるOSである。従って,UNIXが使われていた所ではよく使われている。Linuxの用途をサーバー向け,クライアント向けに分けてそれぞれ見てみよう。

サーバー向けの用途

(1)インターネット/イントラネット・サーバー

 現在もっとも広く使われている分野である。WWWサーバーとしては,apacheという,もっとも広く使われているWWWサーバー・ソフトを使って構築するのは,インターネット向けのLinuxの用途として非常によく使われているパターンである。

 また,sendmailあるいはqmailというメール配送ソフトを使ったメール・サーバー,bindというドメイン情報を管理するソフトを使ったDNSサーバー,wu-ftpdなどを使ったftp(ファイル)サーバーなど,インターネットの基幹をなすサーバーでは,Linuxは非常によく使われている。

 さらに,Sambaというソフトを導入し,Windows NT互換のファイル/プリンタ・サーバーにすることも多い。企業内のイントラネット・サーバーではよく使われている。

(2)DBサーバー

 企業内でのデータ処理には,データベースが不可欠である。Linuxをビジネスで利用するためには,データベース・ソフトがLinux上で動作することが必要である。そのため,現在では,多くのデータベース・ソフトがLinux上に移植されている。代表的なものとしては,Oracle,DB2,Informix,InterBase,Sybase,Empressなどが動作している。ただし現時点では,これらのデータベースに対応した開発環境がすべてLinux上に揃っているわけではない。

(3)グループウエアなど

 比較的小規模な用途でグループウエアを使う場合にも,Linux用のものがいくつか用意されている。多くのプラットフォームで動作するロータスのドミノや,サイボウズ office,iOffice2000などが代表的なものである。

(4)業務アプリケーション

 最近ではLinux向けの業務アプリケーションも発売されるようになってきた。まだ本数は少ないが,いわゆるオフコンで行なわれているような業務(販売管理,経理関連など)用のアプリケーションが提供されつつある。

図1●HancomのHancom Office

クライアント向けの用途

 残念ながら,クライアント向けのよいソフトがあまりないため,現在のWindows環境と同じような環境をLinux上で作り出すことは難しい。ワープロなどはもともとUNIX上で動作していたものが移植されていたが,統合オフィス・スイートはまだこれからである。しかし,韓国のHancomが開発したHancom Office(図1[拡大表示])や,サン・マイクロシステムズのSunOffice(米国ではStarOffice),米VistaSourceのApplixwareなどが登場し,徐々に環境は整いつつある。

 ただ,もともとUNIX環境を使用していた人は,UNIX上のツールを駆使して作業を行っていた。その環境はLinuxでも存在しているため,UNIX流のやり方で,作業をする分にはさほど困らない。

 さらに,特定の用途(例えばプレゼンテーションなど)には,UNIX流儀に沿った専用のツールが開発されている。それらを使えば,たいていの作業は問題なく行なえる。

図2●日本エンベデッド リナックス コンソーシアム

組み込み/制御系向けの用途

 組み込み機器や制御系用のOSには,専用のOSがいくつか市販されている。リアルタイム性を要求されたり,1チップ・マイコンに組み込まなければならないなど,通常目にするコンピュータ用のOSとはOSの機能が異なるからだ。しかし,この分野でもLinuxの応用が広がりつつある。すでに,組み込み機器向けのLinuxの普及のためのコンソーシアム(日本エンベデッド リナックス コンソーシアム)もでき,活動を始めている(図2[拡大表示])。

 もともと組み込み系/制御系の機器の寿命は,パソコンなどに比べて長いのが普通である。平気で10年~20年使用する。この長い製品寿命の間はソフトの保守ができなければならない。ソースがあり,OSの中核からメンテナンスが可能なLinuxは,保守という観点からはうってつけのOSと言える。

フジテックのエレベータ管理システム
 ただし,もともとLinuxはUNIX互換であるため,リアルタイム制御やコンパクト性には欠ける。そこで,その機能を強化する改良が,メーカーやコミュニティの手で行なわれている。すでに,製品寿命の長いエレベータの制御用などに実績があり,これからも利用範囲が広がっていくものと思われる(図3[拡大表示])。

 また,組み込み機器用途としては,低価格のインターネット端末などへの応用も始まっている。この手の機器は非常に安価に作成されるため,各コンポーネントへの価格要求が厳しい。OSとて例外ではない。この点でもライセンス・コストのかからないLinuxはうってつけである。すでに,ポータブル端末としての市販例もある。