豊田 孝

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 これまで,9回にわたってオブジェクト指向,そしてクラスを解説してきました。今後,皆さんがオブジェクト指向を学習するにあたり,次のような不安が生じるのではないかと私は思います。

・クラスは情報を整理する手段であるが,その情報の整理の仕方に自分はついていけるだろうか
・クラス内容を簡単に調べることができる手段は提供されているのだろうか
・クラス内容が公開されたところで,自分にはそれを理解する能力があるだろうか

これら3種類の不安をじっくり分析すると,それぞれの不安を次のように表現し直すことができると思います。

・定義されたクラス内容を理解する場合,文化的(心理的といってもよいでしょう)な壁がある
・仕様書内容の実装不安
・今後の学習方法への不安

今回は,これらの各項目を個別に説明し,本連載講座を終了したいと思います。

クラス内容と文化的な壁

 クラス内容を定義する作業は,文化面や心理的な後影響も考える必要があるのではないかと私は思います。どうでもいいようなことに思う人もいるかと思いますが,意外と大切なことではないかと私は考えています。

仕様書内容の実装の不安

 各種仕様書は,オブジェクト指向開発方法論が定義する分析設計工程などの上流過程で作成されるのが一般的です。オブジェクト指向開発方法論では,この上流工程の重要性をことのほか強調しますが,仕様書内容を実装する下流工程も等しく重要であることは間違いありません。

 このため,発注者側は仕様変更,開発者の作業負担,開発期間と経費などを慎重に考慮する必要がある,といえるのではないでしょうか。

今後の学習方法への不安

 私は次のような学習方法を採用しています。

・W3Cなどから公開される標準仕様書を読む
・Microsoftの実装内容を研究する

 Microsoftはだれもが認めるように,バージョンアップを得意とする会社です。そして,同社のOSであるWindowsは優れたユーザー・インタフェースを持つことでも有名です。このため,私は常に次のような期待を抱いてMicrosoftの動きを眺めています。

“Microsoftはいち早く最新標準仕様を実装するとともに,ありがたいことに,その実装内容を知るためのツールをWeb上で公開してくれる。そのツールには必ずユーザー・インタフェースがついてくる。あとは同じようにインターネット上から公開されるサンプルコードをダウンロードし,その内容を検討してしまえば,最新標準技術はほぼ具体的に,しかも正確に理解できるはずである”

 Microsoftによる標準仕様の実装内容概要を理解したい場合,OLEVIEW.EXEというツール/プログラムが使えます。このツールはここから無料でダウンロードできます。ツールの使い方の詳細については,恐れ入りますが,拙著「Visual BasicプログラマのためのCOM入門」や「Visual C++プログラマのためのCOM入門」(いずれも翔泳社発行)などを参照されてください。

連載講座終了にあたり

 本講座は,オブジェクト指向開発方法論の現状をもとに,全10回でオブジェクト指向を解説してきました。オブジェクト指向開発では,なんといってもクラスが重要な意味を持ちます。このため,クラスを作成する背景やクラスの意味については,可能な限り時間を割いて,丁寧に説明いたしました。

 RationalのRambaugh氏もその現状認識で述べているように,インターネットの普及により私たちの相互依存関係は強まっています。多種多様な依存関係が日々発生するため,“要求があいまい”になりがちです。“あいまい”な時代は今後も当分続くことになるでしょう。本連載を開始するにあたり,多数の人々と連絡を取ってみました。大多数の人は次のような文言を異口同音に口にしています。

“今は曲がり角であるが,再利用部品であるコンポーネントの時代がそこまできていることは確かである。しかし,分析・設計なくしてコンポーネント時代のメリットは享受できないはずである”

 本講座が皆様の業務や成長に少しでもお役に立てれば,講座担当者としてこの上ない喜びでございます。またどこかでお会いいたしましょう。その日まで,さようなら。