PR

 この連載では,これからネットワーク管理にかかわる人のために,UNIXの基礎事項を解説します。みなさんが使い慣れているWindowsに比べると,UNIXは難しそうで,敷居が高く感じられるかもしれません。確かに,UNIXを習得するためには,OS(オペレーティング・システム)やネットワークに関するさまざまな知識が必要になってきますが,最低限知っておくと便利,というレベルであれば,それほど難しくありません。そこで今回は,Windowsユーザーでも知っておきたいUNIXの基礎について説明します。

UNIXの特色

図1●UNIXのユーザー定義
 UNIXはマルチユーザー,マルチプロセスのOSです。今でこそコンピュータを個人で持つことができるようになりましたが,少し前までは,高価なコンピュータを多くの人で共有して使っていました。UNIXもそのようなマルチユーザー・システムの1つです。UNIXでは,ユーザーの種類をさまざまに定義しています(図1[拡大表示])。

 また,大勢の人が使う以上,同時に多くの処理がなされないといけません。コンピュータでは,1つの処理をプロセスという単位で考えます。UNIXは多くの処理を同時に,それぞれ独立させて実行できます。これを「マルチプロセス」と言います。

 UNIXは,インターネット初期の担い手である大学や研究機関で多く使われていたこともあり,TCP/IPプロトコルをいち早く実装しました。 今でもインターネットのサーバーにUNIX系OSが最も多く使われるのは,こうした歴史的背景があるとともに,マルチユーザー,マルチプロセスが安定して使えることも大きな要因となっています。

UNIXのディレクトリ構造

図2●UNIXのディレクトリ構造
 Windowsでは,Cドライブなどコンピュータのドライブごとにディレクトリ(フォルダ)がありますが,UNIXでは,ディレクトリ構造は1つのツリー(木)構造になっています(図2[拡大表示])。異なる複数のドライブがあっても,1つのツリーとして扱います。UNIXでは,ハードの構成に関係なく,/(ルート:「根」という意味)以下にすべてのディレクトリを切るのです。こうすることで,一般のユーザーはハード環境にはとらわれずに利用できます。

 では,代表的なディレクトリをみてみましょう(表1)。ただし,UNIX系OSと言っても,すべてが同じ法則でディレクトリが切られている訳ではありません。

絶対パスと相対パス

 UNIXを使うときには,「パス」という概念を覚えておいてください。「パス(PATH)」は,英語の辞書では「小道,通り道」などと訳されています。

ディレクトリ名用途
bin「bin」はbinaryファイルの略です。基本的なコマンド類が入っています。
etc設定ファイルが入っています。
usr一般的なアプリケーション・プログラムが入っています。
home一般ユーザーのための作業用ディレクトリです。
varメールの一時保管(スプール)などに使われます。
tmp作業用の一時(テンポラリ)ファイルを保管します。
表1●UNIXの代表的なディレクトリ
 パスは,UNIXやWindowsなどでファイルやディレクトリ(フォルダ)の位置を示す方法です。Windowsの場合,パスはドライブ名とディレクトリ名(フォルダ名)をコロンと円記号で区切って「c:\windows\nptepad.exe」のように記述しますが,UNIXでは,スラッシュで区切りとして「/etc/inetd.conf」のように記述します。

 パスには,絶対パスと相対パスの2種類があります。絶対パスはいわゆる住所表記みたいなものです。「東京都千代田区平河町2丁目…」のように,ユニークで絶対的な場所を示します。

 相対パスは自分が現在いる場所から見た場所を指定します。 例えば,新橋2丁目交差点から目的のビルを示す場合,「堀商店の並びの2軒先」などのように表します。

 絶対パスは現在いるディレクトリの場所に関係なく,ファイルの位置を/(ルート・ディレクトリ)から表します。相対パスは現在いるところから見て,ひとつ上のディレクトリ(..),2つ上のディレクトリ(../../)などと表記します。

 次回は,WindowsマシンからUNIXマシンにアクセスする方法を解説します。