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長谷川 泰右 NTTデータ関西テクシス 技術部 技術支援担当

今や企業システムの構築や運用に携わるSEにとって,「ネットワークの基礎知識」は知っていて当然,避けては通れないものになっている。それは分かっていても,どこから手を付ければ良いか迷う読者は多いだろう。そこで本セミナーは,現在の標準となっているTCP/IPネットワークについて,SEとして最低限知っておきたい知識を分かりやすく解説していく。第1回のテーマは,TCP/IPによる通信の基本となる「IPアドレス」である。

 今日,企業システムにおいてネットワークは必要不可欠なものになっている。そのため,直接のネットワーク担当でないSE(システム・エンジニア)にもネットワークの知識が求められることが多い。

 実際に筆者も,アプリケーション開発が主な業務だったころ,ネットワークの知識がないために苦労した経験がある。顧客のシステムを増強するためにサーバーを入れ替えたところ通信障害が発生し,原因の切り分けに時間がかかってしまったのだ。結局,そのサーバーはマルチホーム・ホストとして使っており,新しいマシンのルーティング設定に漏れがあったことが原因だった。ルーティング・テーブルに1行追加するだけで通信障害は解決できたのだが,ネットワーク周りを他人任せにしていた当時の筆者は,そこにたどり着くまでにかなり苦労した。あのとき,もう少しネットワークの知識があれば,原因の切り分けの順番は異なり,解決は早かっただろう。

 日々の業務があると,業務とは直接関係のない別のジャンルについて勉強することはなかなか難しい。しかし,たとえ基礎的な部分だけであっても,ネットワークの知識は必ずどこかで役に立つ。そこで本セミナーでは,現在のデファクト・スタンダードとなっているTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)ネットワークについて,SEとして最低限知っておきたい事項をできるだけ分かりやすい表現で解説していく*1。新人からネットワーク以外の分野の担当SEまで,ネットワークの基礎を知るきっかけになれば幸いである。

IPアドレスがなければ始まらない

 第1回のテーマは「IPアドレス」である。TCP/IPの世界では,IPアドレスなしには,いかなる通信も行えない。IPアドレスがあって初めて,Webコンテンツの閲覧や電子メールのやりとりなどが可能となる。まずはIPアドレスを押さえておきたい。

写真1●自マシンのIPアドレスを確認してみる
Windows 2000/NTならipconfig(上),Windows95/98/Meならwinipcfg(下)で確認できる
図1●IPアドレスで相手ホストの所在がはっきりする
 ネットワーク用語では,ネットワークに接続されている機器を「ホスト」と呼ぶ。そして,TCP/IPネットワークに接続されているホストには,例外なくIPアドレスが設定されている。読者が利用しているパソコンも,TCP/IPを利用しているのであればIPアドレスが設定されているはずだ。実際に自分のマシンのIPアドレスを確認してみよう。Windows 2000/NTの場合はコマンド・プロンプトから「ipconfig」と,Windows95/98/MeであればMS-DOSプロンプト(もしくは「ファイル名を指定して実行」)から「winipcfg」と入力することで,そのマシンのIPアドレスを確認できる(写真1[拡大表示])。

 ここで示された「192.168.20.10」や「192.168.20.20」といった4つの数字が,そのマシンに設定されているIPアドレスである。このIPアドレスが設定されたホストは,同じネットワーク*2の中では1台しか存在してはならない。つまり,IPアドレスはホストを一意に識別する値なのである。試しに隣の人のマシンのIPアドレスを見せてもらおう。微妙に違ったIPアドレスが設定されているはずだ。

 「一意に識別する値」と言うと難しく聞こえるが,要は住所や電話番号と同じである。手紙を送ったり電話をかけたりするときに相手の住所や電話番号が必要になるように,TCP/IPネットワークの世界で特定のホストと通信しようと思った場合にも,相手を示すものが必要だ。そのために利用するのがIPアドレスだと思えばよい。××県××市××町△丁目△番地△号○○マンション○○号室は世界で1カ所しかなく,03-xxxx-xxxxに電話をかければ必ず東京の○○さん宅の電話のベルが鳴るように,「192.168.20.10」というIPアドレスが設定されたホストは,同じネットワーク上に1台しかない。だから,そのIPアドレスあての通信は,必ず「192.168.20.10」が設定されたホストへ届くのである(図1[拡大表示])。