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 米Sun Microsystems社は、同社のソフトウエア・ビジネスの新たなモデルを発表しました。9月16日から18日まで開催のイベント「SunNetwork Conference」の目玉となる発表です。以前からProject Orion、Project Mad Hatterと呼ばれていたものが、「Java System」として発表されました。非常に気になる名称です。

 ここでSunは、「あらゆるアプリケーションやサービス」を、6種のソフトウエア・システムに統合する、と発表しました。マーケティングや経営学の演習問題のような大胆なコンセプトです。同社は、Java開発会議「JavaOne03」でも、驚きを与えることを意図していました。JavaOne03では技術開発という側面で見せた戦略が、今回のSunNetworkでは製品戦略となって登場してきています。

 さて、「6種のソフトウエア・システム」の内容を発表資料から見てみましょう。

(1)Sun Java Enterprise System
サーバー側ソフトウエア・スタック一式を、「従業員一人あたり100ドル/年」という価格モデルでサポートする。ソフトウエアのバージョンアップや、サポート一式を含む。四半期ごとに、定期的に新リリースが登場する。Java System Application Server(旧Sun ONE Application Server)や、ポータル、ディレクトリ、メールなどのサーバー製品を含む。サポート提供では、SeeBeyond、Sybase、TIBCO、Vitria、webMethodsなどと協業。2003年末までに出荷予定。

(2)Sun Java Desktop System
Linuxディストリビューションを、「従業員一人あたり50ドル/年(Java Enterprise Systemと同時に購入する場合)」でサポートするモデル。OSはLinuxとSolarisが対象(Linuxクライアントだけでなく、SolarisとSun Ray端末の組み合わせもターゲットとなることに注意)。StarOffice7(日本ではStarSuite)、J2SE、Moziollaなどを含む。企業ユーザー向けに、StarOfficeをカスタマイズするソフト開発キット(SDK) も発表。サービス提供でEDSと協業。アプリケーションを開発するISV(独立系ソフト・ベンダー)支援策も打ち出す。登場時期は2003年第4四半期。

(3)Sun Java Studio Enterprise
開発者用の統合ツールセット。「従業員一人あたり5ドル/年(Java Enterprise Systemと同時に購入する場合)」でサポート。単体購入は1895ドル。登場時期は2004年第1四半期。

(4)N1
ネットワーク管理者向けプラットフォーム。「グリッド」という言葉は使っていないが、内容的には近い。

(5)Sun Java Mobility System
詳細は今後発表。Java対応携帯機器向けの統合プラットフォーム。

(6)Sun Java Card System
詳細は今後発表。ICカード向けの個人認証サービス対応プラットフォーム。

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 今回の発表は、非常に大胆です。Sunは、自社のソフトウエア・ビジネスを見直しただけでなく、同社の存在そのものの位置づけを見直したといえます。同社はソフトウエア・ベンダーとしては(残念ながら)一流ではありません。一方、サーバー・ベンダーとしては一流ですが、今後は競争の激化から利益率の低下は必至です。そこで、同社が選んだ道は、ソフトウエアとサーバーを総合した「システム」と、そのシステムを動かす「サービス」を提供するベンダーになることでした。

 ただし、このモデルは、前例があります。かって、メインフレームのOSやミドルウエアは、「月額いくら」でレンタルするものでした。昔のメインフレーマは、システム+サービスを売るモデルだったわけです。そのビジネス・モデルが崩れたのは、より安価な製品(主にPCとUNIXマシン、その上のミドルウエア・スタック)の台頭のためです。

 現代にこのビジネス・モデルを成立させるにはどうすればいいか。圧倒的に多くのユーザー(Sun Java Systemsの価格体系は「従業員数」に比例して毎年売り上げが上がります)を得ることです。要はスケール・メリットと、ライバル会社に対する競争優位性です。Sunが主張する競争優位性は、シンプルで安価な価格体系。それを大手ユーザー企業が認めて一括採用してくれるなら、同社のビジネスは成立するはずです。それが実現しなければ、Sunは抜本的な経営の見直しを迫られることになります。

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 最後に、個人的な疑問がいくつかあるので記しておきます。

(1)ディレクトリ・サーバーや、オフィス・スイートなどJavaとはあまり関係がないと考えられている製品が含まれているのに、なぜJava Systemsと名付けたのだろう。サーバーもデスクトップもアプリケーション開発はJavaで統一するというコンセプトを表しているのだろうか?

(2)Sunの現状の製品ラインにはデータベース管理システムが含まれていない。では、現実のシステムでは、当面はOracleとタッグを組むということなのだろうか?(なお、明示的な協業の発表ではないが、発表中でOracleは、Sunの分散システム管理技術N1とOracle 10gは「ビジョンを共有する」とコメントしている)

(3) アプリケーション・サーバー製品Sun ONE Application Serverのエントリー版は無償にもかかわらず、ユーザー数無制限の実運用が可能という大胆な内容だったが、このコンセプトは新たな「Java System Application Server 7」でも継続されるのか?

(4)まだ発表されていない「モバイル」環境の開発環境はどのようなものになるのか?

 デスクトップとモバイルと、サーバーとうまく結びつける環境を提示できるだろうか。

(5)Sunは、この「Java System」というコンセプトを現実に売ってサポートするためのサービス部隊を必要としており、すでに数社と協業の発表をしている。日本では誰がサポートするだろうか。

 最後に、今回の大胆な発表が、肝心なユーザー企業にどう受け止められるかが気になるところですが、こればかりは実績が出てこないことには議論できません。読者の皆さんはどのようにお感じでしょうか?