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エンターキナー,韓 芝馨

 前回書いたように,有線通信事業者がWiBroの割り当てに固執するのは,移動体通信事業者とこの先競争するにはWiBroが不可欠なためだと考えられる。移動体通信事業者には,IMT-2000サービス用に2GHz帯の周波数が既に割り当てられているという優位点もある。しかし,WiBroに固執するのは移動体通信事業者も同じである。

 特に,W-CDMA方式でIMT-2000サービスを提供しているSKテレコムなどは,WiBroの周波数を割り当ててもらうために必至だろう。というのも,W-CDMAへの期待が大きくはずれているように見えるからだ。しかも,今後投資を続けてW-CDMA方式のIMT-2000を“進化”させても,WiBroと勝負することは難しいように思える。

 今回の記事では,“W-CDMA派”移動体通信事業者の思惑がどのようにはずれたのか,現在どのような立場に置かれているのかを解説し,移動体通信事業者がWiBroにかける“思い”を浮き彫りにしてみたい。

移動体通信3社ともW-CDMAを希望

 韓国政府は2000年10月30日,W-CDMA方式で2社,CDMA2000方式で1社にIMT-2000サービスの免許を与えることを決めた。当時免許を申請したSK-IMT(SKテレコム主導のコンソーシアム),KT-IMT(KT主導のコンソーシアム),LGグローコム(LGテレコム主導のコンソーシアム)は,いずれもW-CDMA方式でサービスすることを希望した。

 当時は,関係者のほとんどが「世界80%以上のキャリアが使っているGSMから発展したW-CDMA方式でなければ将来性がない」と考えていたためと推測できる。前回の記事で説明したように,韓国はキャリアのすべてがCDMA方式で移動体通信サービスを提供している。このため,「cdmaOne」→「CDMA2000 1x」→「CDMA2000 1x EV-DO/EV-DV」の順に移行したほうが,比較的小さい投資で第3世代に移行できる。つまり,この点ではCDMA2000方式のほうが優れているといえる。

 それにもかかわらず,免許を申請したキャリアすべてがW-CDMA方式を希望したのは,当時,W-CDMAには以下のようなメリットがあると思ったからだろう。

(1)すべてのGSM事業者が同じ時期にW-CDMAに移行すれば国際ローミングができる
(2)すべてのGSM事業者が同じ時期にW-CDMAに移行すれば,端末やシステムを同じ仕様にできるので,それらの価格を抑えられる
(3)CDMA2000方式では難しいと言われていたTV電話がキラー・アプリケーションになる

 審査の結果,2000年12月15日,SK-IMTとKT-IMTがW-CDMA方式のIMT-2000免許を付与された。W-CDMA方式を希望していながら脱落したLGテレコム社内には,重苦しい空気が漂ったことだろう。それでも,IMT-2000サービスをあきらめられなかったLGテレコムは,CDMA2000方式での免許を申請した。そして2001年8月25日,CDMA2000方式のIMT-2000免許を付与された。

期待はずれのW-CDMA

 ところが,免許が付与されてから1~2年すると,予想していたW-CDMAのメリットが期待はずれだったことが明らかになっていった。それを裏付けるように,日本ではCDMA2000方式のKDDIが第3世代携帯電話で躍進し,欧州では,W-CDMAを採用した主要事業者の第3世代携帯電話サービスの延期が続いていた。

 SKテレコムとKTFは,せっかくW-CDMA方式のIMT-2000免許を付与されたにもかかわらず,基地局のソフトウエアをアップグレードして,従来の周波数でCDMA2000 1x EV-DO(EV-DO)方式のサービスを開始した。現在SKテレコムやKTFでは,TV電話を除いた,W-CDMAでも可能なサービスのすべて――映像・音楽ストリミング・ダウンロードサービス,動画メールなど――をEV-DOサービスで提供している。しかも,速度は2Mビット/秒。384Kビット/秒のW-CDMAよりも速い。さらにSKテレコムとKTFは,IMT-2000用のブランド「Junn」と「Fimm」をEV-DOサービスで使っている。これでは,何のための“W-CDMA争奪戦”だったのか分からない。