米IT産業の資金源となってきたVenture Capital(VC)業界は今,次の大きな投資チャンスを待ち受けながら,金を貯め込んでいる。調査会社Venture Oneによれば,米国のVenture Capitalが2001年に調達(raise)した資金総額は482億ドル。これは過去最高を記録した2000年の901億ドルから46.5%減少している。確かに急落しているが,1999年の調達金(505億ドル)と比べると,わずかに5%減少しただけだ。

 では,VCは調達(raise)した資金を,どの程度まで投資(invest)しているか。VCによる新興企業への投資総額は2001年に321億ドルと,2000年の916億ドルから約65%も減少している。調達総額と投資総額の推移をグラフにして比較してみると,2000年から2001年にかけて調達総額は半減ですんだのに対し,投資総額は約3分の1にまで落ち込んでいる()。

投資先の選択に厳しくなったVC,行き場のない金があふれる

 調達時期と投資時期にはタイムラグがあるから,本当は単純に計算することはできないが,しかし粗っぽい試算では,2000年は調達された資金がほぼ全額投資に振り向けられたのに対し,2001年になると,かなりの部分が投資されずに残っている。米VC業界の2001年のキャッシュ・フローはプラス161億ドルである。投資したいのだが,その先が見つからず,金が宙に浮いている状態だ。

 VC業界が,すっかり財布のひもを固くしたお陰で,最も困っているのが,本当に創立したばかりの新興企業である。1月にワシントンDCで開催された,Early Stage Capital Forum(ESCF)では,VCからのSeed Money(手付金に相当する初期投資)をもらえない起業家の悲鳴が聞こえた。

 地元DCや近郊のバージニア州などから新興ハイテク企業が参加し,経営者らが投資を求めるピッチ・トークを披露したが反応はほぼゼロ。会計事務所PricewaterhouseCoopersの投資コンサルタントは,パネルの席上で起業家に向かって,「VC以外から調達する道を考えた方がよい」と突き放す始末だった。

 これでは一体何のための会議なのか分からない。ESCFは今年で3回目を迎えるが,これほどひどい状況は初めてである。

 結局,VCが投資先の選択において,かなりPicky(気難しく)になっている,という結論に落ち着く。バブル崩壊を生き残った,一部の企業にしか投資したがらないのである。それでも行き場を失った金があふれているということは,あえて建設的にとらえ直せば,「次の大爆発(ハイテク・ブーム)を待って,エネルギー(資金)が着々と蓄積されている段階」と言えるかもしれない。

HP,MS,シスコ・・・巨大企業はいずれも景気後退期に産声をあげた

 こうした見方は,Silicon Valley Networkが先ごろ発表した「Next Silicon Valley: Riding the Waves of Innovation」という報告書からも裏付けられる。地域振興団体の自己宣伝めいたところもあるので,割り引いて評価する必要もあろうが,レポートの楽観的な論旨には,ある程度の説得力がある。

 それによれば2001年のシリコン・バレーでは新たに職を失った労働者が全体の3.7%に達した。これは同地域の歴史上,70年代や80年代に経験したのと同程度の失業率である。70年代のIC(集積回路),80年代のPC,そして90年代のインターネットと,それぞれ巨大なブームがあって,その後にバブルがはじけて失業者が増えた,という点でも共通している。

 しかしヒューレット・パッカード,マイクロソフト,さらにはシスコ・システムズといったそうそうたるハイテク企業は,いずれもリセッション(景気後退期)時に創立している。

 これと同様に,現在のITリセッションも次代を担う企業を育む揺籃(らん)期ととらえることができる。第1次のインターネット・ブームによって世界中に推定4億人以上のオンライン利用者が生まれたが,第2次のブームではモバイル(ワイヤレス)インターネットの普及によって,爆発的な需要が生まれるだろう。現在のシリコン・バレー(IT産業)は,それを待ちうけている段階にある。以上がレポートの論旨である。