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 下げ止まらぬAOL Time Warnerの株価が先週金曜日(12日),ついに20ドルを割ってしまった。2000年1月の合併発表前にAOLの株価は220ドル,Time Warnerは96ドルの最高値をつけていた。ここからの下がり方は,まるでドットコム企業である。

 昨年12月,CEO(最高経営責任者)Gerald Levin氏が退任を発表してから,AOL Time Warnerの経営は迷走しているという印象を与えた。これが株価の下落に拍車をかけた,と見てよい。Levin氏の後任には,旧Time Warner出身のRichard Parsons氏が指名された。下馬評はむしろ旧AOL出身のRobert Pittman氏に傾いていた。しかしParsons氏が指名されたことによって,ウォール街のアナリスト達は「AOL Time Warnerが経営戦略の転換に踏み切った」と解釈した。

 実際,指名後の会見でParsons氏は「(2002年のAOL Time Warnerは)売上げで年間5~8%増,EBITDA(支払い利息,税金,減価消却などの控除前利益)で8~12%の成長を目指す」と述べた。合併発表直後にLevinが掲げた経営目標である,「EBITDAで年間30%増」という急成長路線から見ると大幅なスローダウンである。

 合併直前のTime Warnerは,EBITDAで約8%の成長を記録していたから,Parsonsが掲げた経営目標は,むしろ旧メディアTime Warnerへの回帰を示すものと受け止められた。「攻め」から「守り」への転換は誰の目にも明らかだった。

 ところがAOL Time Warnerの事業は,個別に見る限り全体の経営戦略と矛盾していた。携帯端末やデジタルTVなどからアクセスできる「AOL Anywhere」や双方向テレビの「AOL TV」など,強気の新規事業を次々と立ち上げている。そしていずれも当面は黒字の見通しが立たないのである。こうした動きは結局,同社内部の不協和音を反映しているのではないか,と受け止められた。これが株価の動きに悪影響を与えている。

 AOL Time Warnerは先週,経営をてこ入れするために,再度の人事異動に踏み切った。Pittman氏をAmerica Online(AOL)部門のCOO(Chief Operating Officer)に復帰させのである。AOLすなわちオンライン事業部門は,これから事実上Parsons氏ではなくPittman氏が運営することになる。

 AOL Time Warnerの昨年の売上げは約380億ドル。このうちAmerica Online(オンライン事業部門)は87億2000万ドルと,全体の約23%を占める。オンライン事業部門は不振にあえいでいるが,中でもオンライン広告とEコマースの売上げは昨年第4四半期に7%落ち込んだ。

 これらの売上げは,それまで年間100%の成長を記録していた。成長に急ブレーキがかかったことが,オンライン事業部門,ひいてはAOL Time Warner全体の足を引張ったのである。Pittman氏は,このオンライン広告とEコマース事業の再建に取り組む。この一方でAOL TVやAOL Anywhereなど新たに立ち上げた事業を,Pittman氏がどう運営するかが注目されている。

 本来AOLとTime Warnerが合併した目的は,Time Warnerの持つ豊かなコンテンツをAOLのオンライン・サービスを使って,全米家庭に送り届けるというグランド・ビジョンにあった。挑戦的な新規事業はこれを実現する第一歩とも言えるが,株価がここまで下がってしまった以上,理想ばかりも言っていられなくなった。当面は現実的で泥臭い営業に,力を傾注せざるを得ないだろう。