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 米長距離通信大手WorldComの38億ドルに上る水増し申告は,いわゆるグローバル・スタンダードともてはやされた米国の会計監査システム,さらには経済モデルの評価にトドメを刺した感がある。

 粉飾決算が発覚したのは米国時間6月25日。6月26日には,ダウ平均がほぼ9カ月ぶりに9000ドルを下回り,NASDAQ総合指数も昨年9月の同時多発テロ後の安値を下回った。ドルの為替レートも2年来の最低水準となっている。その最大の理由は,外国の投資家が米国市場から資金を引き揚げているからだ。かつては,その透明性がうたわれた米国の経済モデルが,Enronに端を発した一連のスキャンダルによって,完全に信用を失ってしまったのだ(関連記事)。

 既に広く報道されているように,今回のWorldComの不正会計は,「通信設備のメンテナンス」など本来なら期末ごとに一括して計上すべき「企業の運営コスト(operating cost)」を,長期にわたって分割可能な「資本支出(capital expenditure)」の欄に移し変えていたことにあった。

 こうすると四半期ごとのキャッシュ・フローが水増しされ,会社の経営がうまく行っているように見える。特に経理の専門家でなくても簡単に理解できるようなカラクリが,いつまでも放置されていたことに,外国の投資家らはぼうぜんとしている。

 日本や一部の欧州諸国など,これまでグローバル・スタンダード(=米国型経済モデル)を導入するために四苦八苦してきた国々は,米国の惨憺たる現状を見て,「今さら,どうしてくれるんだ」と困惑を隠し切れない。

米国型経済モデルの欠陥

 米国モデルの根幹を成すのは,GAAP(Generally Accepted Accounting Principles)と呼ばれる会計監査基準だが,これはカッチリとしたルールというより,長年の歴史に基づく“解釈集”に近い,と言われる。頭の回転が速く有能な経理担当者であればあるほど,自分の会社にとって都合の良い「新たな解釈」を生み出すことが可能だ。

 WorldComのChief Financial Officerとして,数々の大型合併で中心的役割を果たしたScott Sullivan氏は,弱冠33歳で巨大企業の経理の全権を握った「やり手」として知られる。

 彼は先日,解雇される直前に役員会を前に弁明のチャンスを与えられたが,「企業の運営コストは,資本支出として計上するのが通信業界の慣例だ」と説明したという。しかし,これは通信業界の規制が撤廃される以前の慣習であって,94年にCFOに就任したSullivan氏が,この事実を知らないはずはなかった。

 米国型経済モデルの欠陥は,結局その会計監査基準(ルール)にあったのではなく,「会社の経営を良く見せかけることによって,CEOやCFOなど重役たちが巨額のボーナスや株式を得るような経営体質にあった」というのが,米国における一致した見解となりつつある。