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 ネットワークにつないだ誰かのパソコン操作を見張るソフト,いわゆるスパイウエア(Spyware)が米国で社会問題化している。先週も19歳のマサチューセッツ州に住む学生がこれを悪用して証券詐欺を働き,FBIに検挙されたばかりだ(The Washington Postの記事The New York Timesの記事)。

 この学生は,インターネットの掲示板で「僕が作った株価予想ソフトを試しに使ってみませんか」と呼びかけた。返事をした投資家の一人に彼は電子メールを送ったが,それに添付された株価予想ソフトには「Beast」というスパイウエアがこっそりと仕掛けられていた。

 Beastは相手のパソコンに,これまたこっそりとインストールされ,それ以降はユーザー(この場合,まんまと引っ掛かった投資家)のキー・ストロークを全部読み込んで,これを仕掛けた犯人(この場合は学生)に送信して知らせる。この投資家は株式のオンライン取引口座を持っていたが,口座の利用IDとパスワードを,学生に盗まれてしまった。

 学生は手に入れたIDとパスワードを使って,この投資家になりすまし,学生自らが所有していた10万ドル相当のストック・オプションのうち,4万ドルを買い取った。学生のオプションは,ほぼ100%損出しが確定しており,そのまま保持していれば権利行使日にはタダの紙切れになる。そこで学生はこの投資家になりすまし,当人の知らぬ間にオプションを買わせてしまったのだ。つまり損失を肩代わりさせたのである。4万ドルで止めておいたのは,この投資家の口座には,それだけの現金しかなかったからだ。

2002年から急増,軽く600種類を超える

 これら一連の行為を遂行するに当たって,学生はわざわざオーストラリアのプロバイダーを経由してネットにアクセスするなど,犯罪の足跡を消すために周到な対策を取った。しかしFBIサイバー捜査班の執拗な追跡を逃れることはできなかったという。ここら辺のFBIの自慢話はとにかくとして,使い方によってはスパイウエアがとんでもない悪事に応用できることが分かる。

 スパイウエアは現在知られているだけでも,軽く600種類を超えるという(CNET News.comより)。米国でスパイウエアが急増し始めたのは,つい最近のことだ。2001年まで20種類あまりに過ぎなかったスパイウエアは,2002年から一気に増殖した。パソコン・ユーザーなら,誰でも一つや二つのスパイウエアに取り付かれている可能性はある。

 数多のスパイウエアの中でも,特に悪名高いのが「Lover Spy」と呼ばれるソフトである。これは嫉妬深い人が,自分の恋人を見張るために使うのだという。バレンタイン・デーやクリスマスに送るグリーテング・カードに,こいつを忍ばせておくと,相手のパソコンにとりついて,彼/彼女の一挙手一投足を監視して,知らせてくれる。

 ここまで行くともはや犯罪ではないかと思われるが,実際のところ犯罪に当たるらしい。米国のComputer Fraud and Abuse Actでは,こうしたサイバー・ストーカー的な行為に対し,最高で懲役十年の刑期を科している。

 ここまで過激ではなくても,それ以外のスパイウエアも十分に犯罪行為に該当するように思える。しかしこうしたソフトの開発業者によれば,ユーザーがダウンロードするに当たって,ちゃんと許可を取っているので問題ないという。スパイウエアの大半はソフトウエアをダウンロードするときに,何気なく付いて来るのである。その旨,「ただし書き」が画面に表示されるはずだが,大抵のユーザーは細かい文字で書かれた文章など,注意して見ていない。結局,我々のパソコンには,それと知らないうちに,無数のスパイウエアが付着しているのだ。

思わぬ被害に遭わぬようご用心

 これらが一体どんな悪戯(わるさ)をしているのかは,大抵のユーザーにはよく分からない。それが分かる位の人なら,そもそも最初から,こんな物に取り付かれたりはしない。下手をすると銀行口座のパスワードを盗まれてもおかしくはない。またスパイウエアはOS(基本ソフト)の奥深く付着し,その設定を変更してしまう恐れもある。パソコンの動作が妙に遅くなったな,と思い当たる節があれば,それは悪質なスパイウエアのせいかもしれない。

 かく言う私もその一人だ。これまで私は,かなり無頓着にフリー・ソフトをダウンロードしてきた。最近,やたらとパソコンの動きが鈍いのは,そのせいではないかと思う。そこで一つ,対策を打った。アンチ・スパイウエア・ソフトをインストールしてみたのだ。ハード・ディスクに潜んでいるスパイウエアを探し出して,消去してくれるソフトである(やはり何種類もあるが,私が使ったのはinterMute社のSpySubtractである)。

 これを私のパソコンで走らせてみると,出るわ出るわ,何と100個以上のスパイウエアが検出された。今までよく無事でいたものだと,我ながらあきれるやら,ほっとするやら。何はともあれ,さっそく全部消去した。

 重要な情報を扱う機会の多い読者の皆さんも,気づかないうちに誰かに見張られているかもしれない。思わぬ被害に遭わぬように,スパイウエアには十分ご注意いただきたい。