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 シリコン・バレーの雄,米Sun Microsystemsが,創業以来最大のピンチに陥っている。先週発表した四半期業績では10期連続で赤字を計上した(関連記事)。株価はドットコム企業並みの3ドル台を低迷している。IT業界アナリストの中には,「今のままでは企業買収の標的にされてしまう」と危ぶむ人さえいる。かつて80年代から90年代にかけては「Microsoftの最大のライバル」と目された企業だけに,今の惨憺(さんたん)たる有様を見ると隔世の感がある。

 Sunの業績低迷は,米IT産業が全体として回復基調に入っただけに,ひと際浮き立って見える。米Intelはパソコン需要の回復によって第3四半期の売り上げを前年同期比で20%も伸ばしたし(関連記事),Motorolaの売り上げも相変わらず好調な携帯電話市場に支えられて5%増である(関連記事)。Apple Computerは主力製品の売上げが好調な上,音楽配信サービスのiTunes Music Storeが半年間で1200万曲を売り切るなど,次世代事業の開拓にも余念が無い(関連記事)。Microsoftも堅調を維持し(関連記事),IBMに至っては来年1万人の新規採用を予定している(関連記事)。

なぜSunの“一人負け”が続くのか

 しかし,逆に言えば彼らの好調さとSunの不振は「表裏一体」と見ることができる。すなわちIntelやMotorola,Microsoftは,デファクト・スタンダードの商品を安く大量に売る商法で成功を納めてきた企業だ。AppleやIBMの商品やサービスは,彼らの提供する廉価なデバイスやソフトウエアの上に成立している。極めてマクロな視点から見れば,結局これらの企業は,同一のビジネス・モデルに属する同類企業である。

 これに対し,Sunは創業当時から比較的,高価格・高付加価値のユニークな商品を独自開発することによって成長してきた。しかし半導体集積技術の想像を絶する進歩によって,CPUをはじめとした廉価な標準デバイスが圧倒的なパワーを持つようになった今,「独自開発に力点を置くSunのビジネス・モデルは限界に達した」というのが,業界で有力な見方となっている。

 Sunが日本企業のように(あるいはかつての日本企業のように)「人員削減をしない」というモットーを堅持してきたのは有名な話だ。ITバブル崩壊後はさすがにレイオフを断行せざるを得なかったが,それでもいまだにできるだけ人減らしをしないよう努めている。こうした創業以来の経営方針が,ウォール・ストリートの投資業界から変更を迫られている。

 すなわち他の米企業のようにクールに人減らしをして,研究開発費も削り,短期間でバランス・シートを改善しろと要求されているのだ。しかしCEOのScott McNealy氏をはじめとする経営陣は,これに必死に抵抗している。もう少し辛抱して研究開発に注力し続ければ,景気の回復と共に,利益が上がるようになる,と言うのだ。

二者択一を迫られる

 この一方でSunは,もう一つの経営方針である「高価格・高付加価値」商品へのこだわりは捨て去り,最近では比較的安いサーバーも発売している(関連記事)。だが,こちらの道にも懸念はある。「雇用の維持」「研究開発の重視」という2大モットーは,「安売り商法」と真っ向から対立するからである。

 中途半端が一番いけない。Sunもやる以上は,腹をくくって二者択一するしかない。しかし同社が今さら,Dellのような安売り商法に切り替えられるとは思えない。結局,相当の痛みは覚悟の上で研究開発力を維持し,徹底的にユニークな商品の追求に活路を見出さざるを得ないだろう。