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 6月1日,米Sun Microsystemsが中国・上海で開催した発表会「SunNetwork Conference」で,同社の歴史的な方針転換を表明した。基調講演で主役を務めたのは今年4月に社長兼COO(Chief Operating Officer)に就任したばかりのJonathan Schwartz氏。「It's All About Network Innovation」と題した基調講演で同氏が明らかにしたのは,「ネットワーク・コンピューティングの新時代」(同氏)に向けた新ビジネス戦略。それを具体化したのが, サブスクリプション・モデルで提供する製品やサービス(関連記事),富士通との提携拡大(関連記事),「Solaris」のオープンソース化計画などである。ITバブル崩壊後の再生に失敗したと言われるSun社だが,はたして今度の戦略は起死回生となるのだろうか。

■「研究開発はSun社のDNAから切り離せない部分」

 ITバブル崩壊後,Sun社は売上高が10四半期連続して減少するという苦い経験を持つ(関連記事)。また2002年第4四半期には22億8300万ドルの大赤字,2003年第2四半期も10億3900万ドルの赤字を報告している(関連記事)。この間に何度か黒字転換も果たしているものの,いずれも純利益はごくわずか,あるいは収支トントンという状況(直近の決算でも,7億6000万ドルの赤字を報告した)。「Sun社はいまだバブル崩壊後の復活がままならない状態」と言われるのはこのためである。

 その要因の1つとされているのが,研究開発費などの膨大な投資金額だ。しかし今回の富士通との提携拡大によって,Sun社はこれまで「UltraSPARC」にかけていた研究開発費を大幅に節約できることになる。その代わり,ソフトウエアやストレージ,サービスといったビジネス分野に注力する。米CRN誌の報道によると,研究開発費の削減は同社の株主が長年求めてきたこと。しかしSun社会長兼CEOのScott McNealy氏はこれまでそうした意見をあまり聞き入れず,「研究開発はSun社のDNAから切離せない部分」という同氏の持論を繰り返していた(掲載記事)。そのSun社がここにきて大きく方向転換するというわけだ。次で,米メディアの報道なども見ながら,その概要について見てみよう。

■ローエンド向けの開発に注力

 まず,サーバー戦略について簡単に整理する。Sun社と富士通はこれから,コードネームで「APL(Advanced Product Line)」と呼ぶ,Solaris搭載UNIXサーバーの開発に着手する。ハイエンド機に搭載するプロセサは富士通が開発・製造し,OSであるSolarisはSun社が開発を続ける。これが完成し発売となるのは2006年中ごろで,現在のSun社「Sun Fire」,富士通の「PRIMEPOWER」に置き換わる製品となる。また,販売はそれぞれのチャネルで別々に行うが,両社の同一ブランドで展開する。

 その一方でSun社は,最近名称変更したプロセサ部門「Throughput Systems Unit」でローエンド機向けのプロセサを開発する。コード名は「Niagara」と「Rock」。いずれもスループット・コンピューティング・プロセサと呼ばれるもので,同時に複数のスレッド処理を実行するチップ・マルチスレッディング技術を採用している。米InfoWorldの記事によると,これはSun社が2002年に買収した米Afara Websystems(注1)が開発していた技術。Niagaraは2006年に,Rockは2007年に量産可能になるという(掲載記事)。

注1:Afara社は,Sun社でUltraSPARCの設計に当たったLes Kohn氏などが設立した企業。同氏は米Intelで「80960」「80386」などの開発に携わっていた人物である。

 米IDCの調査によると,2004年第1四半期のUNIXサーバーの市場規模は41億ドル。同市場はすでに成熟化しているものの,Windowsサーバー市場(38億ドル)と比べても依然大きく,安定した収益が見込める(関連記事)。この市場におけるSun社のシェアは28%で現在2位。今回の富士通との提携拡大でサーバーの価格競争力を高め,首位の米HP(シェア31%)を追い抜き,また3位の米IBM(同25%)を引き離したい考えだ(米Washingtonpost.comの記事)。

■サブスクリプションの範囲を大幅拡大

 Sun社が今回発表した製品/サービス戦略の中心にあるのが,サブスクリプション・モデルというビジネス戦略だ。社長就任前にJonathan Schwartz氏が打ち出していたソフトウエア・ライセンスのサブスクリプション制を,広範な分野に拡大している。

 これには,データ・センター向け性能評価サービス「Sun Preventive Services」,RFID(IC無線タグ)ソフトウエア「Java System RFID Software」,ストレージ・システムの「StorEdge Power Unit」などがある。さらにSun社は今回,サーバー用統合ソフト「Java Enterprise System(JES)」,デスクトップLinux「Java Desktop System(JDS)」のバージョン2なども発表しており,これらも従来通りサブスクリプション形式で提供する。

 このうち,サーバー用統合ソフトのJESでは,一風変わった施策を打ち出してる。それは発展途上国の政府向けにJESをサブスクリプションで提供するというもの。料金は人口1人に付年間0.33~1.95ドル。この料金はその国の人口数や発展度合いによって変化する。これは国連の資料をもとに算出するという(発表資料)。

 データ・センター向けPreventive Servicesでは,顧客がある一定の性能目標を達成し維持できれば最大20%安くするという特典を付ける。Java System RFID Softwareは,RFIDから得た情報を企業システムに統合するソフトウエア。Jonathan Schwartz氏は今回の発表会で,「携帯電話によって着メロの市場が生まれた,RFIDによっても新しい市場が開花する」と述べていた。RFIDの将来をにらんで開発した新製品というわけだ。

 ストレージのStorEdge Power Unitは,1Gバイト当たり月額1.95ドルという従量制で提供する。現在のところSun社が用意している契約の最小単位は30Tバイトで,小さな企業には敷居が高い状態。米メディアを見ていると,このことを非難する向きもあるようだ。

 IDCによれば,Sun社はストレージ部門でも伸び悩んでいたという。とりわけミッドレンジの製品が弱い。2004年第1四半期における同社のストレージ製品売上高は,2億2700万ドルで,前年同期の2億2900万ドルから減った。シェアでは7%から6.5%に下落したという。今回の新戦略ではまず,これまで弱かったミッドレンジ分野の顧客に狙いを定めるところから始めるようだ(米CNET NEWS.comの記事)。

■Solarisをオープンソース化?

 以上ざっと見てきただけも,Sun社がまったく違う企業に生まれ変わろうとしている様子がよくうかがえる。事実上,ハイエンド・サーバー開発からの撤退,ソフトウエア提供方法の抜本的改革,サービス事業への注力。そして,もう1つある。

 Jonathan Schwartz氏は今回の発表会で企業ユーザーに向けて,Solarisのオープンソース化を決定したことを告げたという(米New York Timesオンライン版の記事/Sun同社の発表資料としては未公表)。

 今のところ,ソースコードの一部を公開するのか,すべてなのか,また,どのような形式で公開するのかについては未定で,Sun社は今,顧客からフィードバックをもらいながら検討中であるという。

 New York Times紙の同記事では「オープンソース化とは言っても限定的なもので,Sun社がOSのコア部分について一定の権限を保ちながら行う可能性がある」とするアナリストの見解を掲載している。また,「Linux成功後の今となっては時すでに遅し」との声もあるという。

 その一例として,OSI(Open Source Initiative)創設者であるEric A. Raymond氏のコメントを掲載している。「Solarisが高価なこと,クローズドな姿勢だからこそ,Linuxの開発が促進された」(掲載記事)。なるほど,確かにそれは一理あるかもしれない。

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