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 2004年の「US NEWSの裏を読む」は,IT業界の新しい動きに注目してきた。米IBMのパソコン事業売却,米Microsoft/米Sun Microsystemsの電撃和解に象徴されるよう,既存の巨大勢力が姿を変える一方,米Googleなどの斬新なアイディア/技術を持った企業が大きく成長,またオープンソースへの支持もかつてないほど高まっており,流れは大きく変化している。今回はそんな2004年を振り返りつつ,最新情報も交えながらレポートする。これらは2005年の動向を占う上でも重要になると思う。この冬休みのこの時期にじっくりと考えてもらえれば幸いである。

■デジタル・コンテンツとPtoP

 2004年はデジタル音楽市場が賑わった年となった。5月には米Napster(旧名:Roxio)が英国で配信サービスを開始,米Microsoftも「MSN Music」を正式開始,世界展開を図った。もちろん米Apple Computerも健在で,フランス,ドイツ,英国,カナダでサービスを始め,12月には楽曲の販売数が2億曲を突破した。また同社の「iPod」はこのクリスマス商戦の花形商品となっている。各小売店では品切れと入荷を数日単位で繰り返しており,今年は記録的な売上げを達成しそうという(NBC11.comに掲載の記事

 “違法音楽交換の温床”と言われやり玉に挙げられてきたPtoP技術については,そのステータスに変化が生じた年となった。本コラムでも5月にPtoPに関する記事を掲載した(記事)。PtoPをベースにした企業協業システム向けソフトや,動画など大容量コンテンツをPtoPで配信できるソフトの開発が進んでいること,ソフトウエア・ベンダーが自社ソフトの配信にPtoPを活用しているといった事例を紹介した。PtoP技術が認知され,健全で有用な手段として利用されるという動きであるが,そうした傾向はさらに加速しているようだ。

 12月に入って,そんなニュースが報じられるようになった。例えば,旧Napsterの創業者Shawn Fanning氏がデジタル音楽を有料で交換/配信できるネットワークの技術を開発しており, Universal Musicと契約したというニュース(BusinessWeek onlineに掲載の記事)。米Groksterが,Fanning氏の技術を使ったPtoPサービスを1月に立ち上げるようで,これにSony BMG Music Entertainmentが楽曲を提供するというニュースもある(USATODAY.comに掲載の記事

 PtoPの健全なイメージで2004年に大成功したのがルクセンブルクのSkype Technologiesである。同社は,PtoPによるインターネット電話ソフトを2003年8月にリリース,2004年7月には固定/携帯電話への発信か可能な有料サービス「SkypeOut」を始めた。サービスの登録者数はその後もうなぎ上りに増え,11月末時点では1740万人,12月半ば時点のソフトのダウンロード数は4500万弱になるという。今後もますます発展し,世界の通信事業者を脅かすような存在である。

■オープンソースが台頭

 オープンソースの世界でも大きな動きがあった。顕著だったのは米Mozilla FoundationのWebブラウザである。IE(Internet Explorer)のシェアが過去7年間で初めて減少するなど,大きな影響を与えた。MozillaがFirefox 1.0正式版を公開したのは11月9日。公開から2週間のダウンロード件数は600万近くとなり,1カ月後には1000万件を突破した。ユーザーなどの寄付によって費用を集め,米New York Times紙に2ページ全面広告を出すなど,活気ある展開をしている。またMozillaは12月に入って「Thunderbird 1.0」と「Mozilla 1.7.5」もリリースした。Thunderbirdの方は最初の10日間で100万件ダウンロードされたという。メール・クライアントに加え,RSSリーダーの機能も備えており人気が高まっている。

 Mozilla以外では,スウェーデンMySQL AB,米JBoss Group,米Zend Technologiesなどの活動,前回の本コラムでも取り上げた「Wiki」への注目も高まった。またEclipseコンソーシアムがIBM社から完全独立したことも記憶に新しい。

 Linuxについては,Linuxサーバーの売上高が前年同期比42.6%増加,初めて10億ドルを突破した。これは7四半期連続の2ケタ成長である。サーバー市場全体におけるLinuxサーバーの売上高シェアは9.2%となった(米IDCの調査)。IDCの別の調査では,2008年にはこれが91億ドルに達する見込み。出荷台数ベースでは,世界サーバーの約26%がLinuxを搭載することになると分析している(関連記事)。

 またSun Microsystem社が,11月に次期「Solaris 10」の無償提供を発表したが,同社はこの延長線上で,Solarisのオープンソース化を計画している。発表資料によると,同社はMozilla Public License, version 1.1(MPL)をベースとしたライセンス「CDDL(Common Development and Distribution License)」のドラフトを作成し,既にOSI(Open Source Initiative)に提出している(発表資料)。ソフトを無償にし,さらにオープンソースも採り入れ,Solarisのシェア拡大を図るという狙いである。2005年はSun社にとって新しい事業モデルで再スタートする年になるのだろう。

■Googleがけん引した検索市場

 検索市場も活発な1年だった。顕著だったのがGoogle社。同社はこの1年,検索技術を使ったさまざまなサービスを発表,それに遅れまいと米Yahoo!やMicrosoft社といった大手が追従した。

 Google社が容量1Gバイトのメール・サービス「Gmail」を発表し,皆を驚かせたのは4月(発表日が1日だったことから最初は誰もがエープリルフールだと思った)。これに対抗すべくYahoo!社も自社サービスの容量を拡大したが,Google社の活躍はその後も目覚ましかった。ニュース収集サービスの「Google News」を発表した後,NASDAQ市場に上場,パソコン内の高速検索ツール「Google Desktop Search」も公開し,大いに話題をさらった。

 Google社の動きに特に敏感に反応したのがMicrosoft社だった。同社はGoogle対抗のニュース収集サービス「MSNBC Newsbot」や,デスクトップ検索「MSN Toolbar Suite」を提供したほかMSN Searchも刷新,広範な分野でGoogle社に対抗している。
 
 しかしGoogle社の新サービスはその後も他社の追従を許さない勢いで展開されている。ここ最近でも,書籍の内容を検索対象にする「Google Print」,学術文献を検索する「Google Scholar」,検索語の一部を入力すると残りの単語/フレーズを一覧を表示する「Google Suggest」を矢継ぎ早に発表した。2005年の展開が楽しみな企業である。