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 先日,米Sun Microsystemsの共同設立者であるBill Joy氏が米SpikeSourceの取締役会に加わったというニュースがあった(関連記事)。Joy氏はSun社の元チーフ・サイエンティスト。SPARCの設計やSolaris,Javaの開発などで重要な役割を果たした人物。SpikeSource社はオープンソース・ソフトのサービス・ベンダーで,米Oracleで社長/COOを務めたRay Lane氏が2003年に共同設立した会社だ。SpikeSource社はほかにもビッグネームを揃えており,米メディアにも頻繁に登場している華やかな企業だ。

 オープンソースのビジネスモデルについては,その将来を悲観する見方もあるが,米国では少し事情が違うようだ。大物が続々と参加しており,大手ベンチャー・キャピタルも積極的に投資を行っている。果たしてそんなに大きなビジネスチャンスがあるのだろうか。今回はそんな視点でレポートしてみる。SpikeSource社という企業に代表されるビジネスモデルにそのあたりの答えがあるのかもしれない。

ずらりと並ぶビッグネーム

 まずSpikeSource社とはどんな組織なのか,簡単に見てみる。現在同社の会長を務めるのは共同設立者のRay Lane氏。同氏はベンチャー・キャピタルKleiner Perkins Caufield & Byers(KPCB)でジェネラル・パートナー(GP)を務めている。そしてBill Joy氏も今年1月にKPCBにリミテッド・パートナー(LP)として加わった。KPCBは,SpikeSource社設立時から同社を支援しており,同社のインキュベーターという存在。KPCBに加わったBill Joy氏がSpikeSource社の取締役会に入ったのも自然の流れと言える。

 SpikeSource社は2004年9月,Kim Polese氏をCEOとして迎え入れた。同氏は,Sun社でJavaのプロダクト・マネージャを務め,その後Marimbaを設立,CEO兼社長としてMarimba社をIPOに導いた人物だ。2004年4月にMarimba社が米BMC Softwareによって買収されるまで会長を務めていた。

 今年3月,SpikeSource社は諮問委員会を設立した。企業でのオープンソース導入を促進することを目的とした委員会だが,これには, Mozilla FoundationプレジデントのMitchell Baker氏,Apache Software Foundation創立者のBrian Behlendorf氏,MySQL AB CEOのMarten Mickos氏,O'Reilly Media創立者のTim O'Reilly氏などが参加した。

 そして同社は今年4月,各種サービス/製品を一挙に発表し一般提供を開始した。その後の5月には,Intel CapitalやFidelity Venturesといったベンチャー・キャピタルから1290万ドルの投資を受けている(米Computer Businessに掲載の記事)。

SpikeSource社のサービスとは

 SpikeSource社はどんなサービスを提供しているのだろうか。SpikeSource社は「Core Stack」と呼ぶパッケージを無償でダウンロード提供している。これは,LAMP/LAMJに,50ほどのソフトウエア・コンポーネント/ユーティリティを組み合わせ,同社が相互運用性のテストを行い,認定を済ませたものだ(Core StackのWebサイト)。Fedora CoreやRed Hat Enterprise,SuSE,WindowsといったOSごとのインストーラーを用意するほか,これらインストール作業を一括制御し,また必要なコンポーネントをダウンロード前に設定できるインストーラーも提供している。

 企業がオープンソース・ソフトを利用する際,障壁となるのが互換性。同社があらかじめ各コンポーネントについて,相性やセキュリティの問題など,さまざまなテストを行っておき,それを組み合わせて提供することで導入の垣根を低くする。それがCore Stackというわけだ。

 またオープンソース・ソフトは日々,セキュリティ・アップデート,パッチ,バグフィックスなどが行われるが,同社はそれらを逐一チェックし,そのテスト結果をWebサイトで公開している。

 これら無料のサービスに加え有料サービスも提供している。顧客がすでに導入しているプロプライエタリのソフトとオープンソース・ソフトとの組み合わせを検証/認定したり,日々のセキュリティ・アップデートなどに対応するサポート・サービスやコンサル・サービスなどを提供している。

 同様にしてISV(Independent Software Vender)にもサービスを提供している。ISVの開発者がオープンソース・コンポーネントの採用について検討する際,各ソフトウエアでライセンスが衝突していないかなどアドバイスしたり,自社開発したアプリケーションとオープンソース製品の相互運用性も検証している。ISVに代わって顧客に応対するサポート・サービスなども用意しており,至れり尽くせりといった感じである。

「オープンソースでチャンスつかむ企業が続々登場」

 しかし,そこには大きなビジネスチャンスがあるのだろうかという疑問が浮かぶ。SearchEnterpriseLinux.comに掲載されている記事の中でCEOのKim Polese氏は,「今,市場が創出されつつあり,新たな企業が続々誕生している」と説明する。

 同氏はその一例として,米SugarCRMや米Black Duck Softwareといった企業を挙げている。SugarCRM社はオープンソースのCRMソフトやサポート・サービスをサブスクリプション形式で提供している会社(関連記事)。ベンチャー・キャピタルのDraper Fisher Jurvetsonから2004年8月に200万ドル,2005年2月に575万ドル,合わせて775万ドルの投資を受けている。

 Black Duck社はオープンソース・ライセンスの管理サービスを提供しており,先ごろテンアートニと提携したことでも記憶に新しい(関連記事)。同社はSpikeSource社とも提携しており,SpikeSource社のサイト上でライセンスの互換性を検証できる機能「License Calculator」を提供している。2004年7月にはFlagship Venturesなどから500万ドル,2005年6月にはFidelity VenturesやIntel Capital,SAP Venturesなどから1200万ドル,合わせて1700万ドルの投資を受けた。

 このほか,自社開発したVoIP PBXソフトをオープンソース化して,業界における地位を高めたPBX機器メーカーや新しいコンサルティング会社など,オープンソースの市場でチャンスをつかんでいる企業が次々に登場しているという(掲載記事)。

 なるほど,ここ最近の米メディアを見ていても米SourceLabs米OpenLogicといったSpikeSource社のライバルの名がよく出てくる。いずれも企業のオープンソース導入をサポートするというのがビジネス。オープンソースへの関心が高まり,普及が進めば市場は大きくなる。彼らはその市場に向けてまい進しているようである。

「5~10年でソフトウエア業界が大きく変わる」

 米国時間7月21日にスタンフォード大学で開催されたAO 2005 Innovation Summitで司会を務めたRay Lane氏は「我々は,ソフトウエア業界の中でまったく新しい世界を作っている」と述べたという。また「今後5~10年のうち,オープンソースのムーブメントによってソフトウエア業界が大きく変わる」というのが業界リーダーたちの考えという(米CNET News.Comの記事)。

 オープンソース・プロジェクトはコンポーネントを作るのが得意だが,それらを組み合わせるのは不得意。それをとりまとめている1つの企業が今回のSpikeSource社というわけだ。そのため同社はテスト装置を開発,ソースコードの変更があるたびに2万2000以上のテストを実行しているという。この装置はSpikeSource社の中核となる技術で,同社はこれをベースにオープンソース専業のサービス構造を構築している。今後こうしたベンチャーがまだまだ登場するのかもしれない。各ベンチャーがそれぞれ得意分野のサービスを提供していけばサービスが細分化され,すそ野が広がる。業界リーダーたちが言うようにソフト業界は短期間でがらりと変わってしまうのかもしれない。

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