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瀧田佐登子氏
オープンソースのWebブラウザMozillaの公式アフィリエイト(支部)であるMozilla Japanが活動を開始した。ウイルスやフィッシングの標的となりやすいInternet Explorerの代替を求める動きが出てきており,その最有力候補のひとつとしてMozillaに注目が集まっている。重いという印象があったが,Webブラウザ機能だけを抽出し軽量化したFireFoxも開発されている。Mozilla Japanで,実務の中心となるのが,かつてNetscapeの“顔”として活躍していた理事の瀧田佐登子氏だ。同氏に,設立の経緯や活動内容などを聞いた(聞き手はIT Pro編集 高橋信頼)。

――Mozilla Japan設立の経緯は。

 ご存じかと思いますが,Mozillaは米Netscape Communicationsが開発したNetscape Communicatorをオープンソースとして公開したものです。私は日本ネットスケープ・コミュニケーションズに勤務していたのですが,約3年前に日本法人が撤退,そのあとは米AOL/Netscapeと直接契約して,金融関係のNetscapeの技術サポートと製品のプロモーションを担当していました。ところが1年ちょっと前(2003年7月)に,Netscapeを吸収したAOLがNetscape(Mozilla)部門を独立させ,Mozillaのオープンソース・プロジェクトを支援するためにMozilla Foundationを設立しました。Mozilla Foundationには,私がNetscapeにいたころのスタッフも何人かいました。

 2月にはヨーロッパで,旧Netscapeの社員が公式アフィリエイトとしてMozilla Europeを立ち上げました。そのこともきっかけとなり,日本でもMozillaとその技術を普及啓もうするために法人設立を,という構想が持ち上がり,7月28日にMozilla Japanを設立,8月19日に活動を開始しました。

 Mozillaのユーザー・コミュニティである「もじら組」から「和訳プロジェクト」と「JLP プロジェクト」がMozilla Japanに移りましたが,今までのもじら組の方々がボランティアでやってくださった,多大な貢献を,正式なものにしたかった。また製品も公式リリースにするためには品質に責任を持つ必要がありますし,ライセンスの問題もありますので,Mozilla Japanのプロジェクトとすることになったのです。これまで以上に,もじら組やその他のオープンソースのコミュニティなどと連携しながら,製品の品質管理なども行っていきたいと思っています。国際化のバグなどもMozilla Foundationにフィードバックされやすくなると思います。

――具体的な活動は。

 Mozillaの普及活動を行っていきます。MozillaはWeb標準とオープンソースを代表するソフトウエアです。Mozillaを,企業で使えるWWWブラウザとして認知させたい。企業で使っていただくために,有償を含めたサポートを提供していきたい。既にいくつかの企業から引き合いがあります。またMozillaを使ってビジネスをしたいというパートナーの支援も行っていきます。

 また,Mozillaは単にWWWブラウザであるだけでなく,さまざまな優れた技術の集合体であることも広く知っていただきたいと思います。

 例えば,XUL(XML User Interface Language)というクロスプラットフォームのユーザー・インタフェース言語があります。XULはMozillaのレンダリング・エンジンであるGeckoで動作するのですが,実はMozilla自体がXULで書かれた一つのWebアプリケーションなのです。そしてNetscape 6と7も,同じエンジン上で動作する別のXULアプリケーションなのです。XULは,クロスプラットフォームで,XMLで記述できる,リッチ・クライアントを容易に作るための言語として注目されています。

 また,Mozilla 技術者の育成を行いたいと思っています。7月に東京工科大学でLinux オープンソース ソフトウエアセンターが立ち上がりました。Mozilla Japan 代表理事の相磯秀夫氏は,東京工科大学の学長でもあります。こういった研究機関や企業などと連携し,Mozillaのプロジェクトに参加していただいたり,共同研究を行っていきたいと思っています。

 Web標準の推進もMozilla Japanの大きなテーマです。特定のブラウザの機能を使ったWebサイトや,セキュリティ・ホールのあるバージョンのWWWブラウザを推奨しているWebサイトが多数あります。このようなWebサイトが減少するよう,啓もう活動を続けていきたいと考えています。

――今後のソフトウエアのリリース予定は。

 今,Mozilla Foundationは,WWWブラウザ部分だけを独立させた「Firefox」と,メール・クライアントである「Thunderbird」に注力しています。Firefoxは現在まだFirefoxは現在バージョン0.9.3の段階ですが(取材当時。9月15日にプレビュー版がリリースされた[関連記事]),ユーザーの期待は非常に高く,リリースから10日間で100万回以上ダウンロードされました。

 Mozillaの公式サイトでロードマップが公開されていて,最新の状況を見ることができます。

――Mozilla Japanの財務状況は。

 基金としてテンアートニから1000万円を拠出していただきましたが,運営資金などは,企業などからの有償サポートやコンサルティング,さまざまなプロジェクトなどを手がけたいと考えています。

 もう長年,Netscape Navigator,Mozillaとかかわってきましたので,なんだか我が子のような気もして,見捨てる訳にはいかないというか…。

 NetscapeがMozillaのソースコードを公開した時,私は米国にいて「一つの時代が終わった」そして,「新たな時代の始まり」と感じたのを憶えています。こういう形で存続でき,またオフィシャルにかかわることができるようになったことは感慨深いものがあります。