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 今年も春が来た。4月1日には街中の至る所に新入社員とおぼしき若い人たちの姿を見ることができたが,そんな新入社員諸君に私なりのアドバイスを送ってみたいと思う。

10年後に,自信が持てるもの何か一つ身につけよう

 思い起こせば10年以上前に私が新入社員だった時,社長は入社式でこんなことを言った。

「10年後に,他の会社から引き抜かれるような人材になってください」

 新社会人のスタート初日にとんでもないことを言われたわけだが,この言葉だけは未だに鮮明に覚えているし,その後の私の行動指針の一つになったことは間違いない。この言葉に,私なりの解釈を加えてみよう。

 まず,社会人としての成長は10年が一区切りということだ。私自身は10年を待たず6年で会社を辞め,ベンチャー企業に1年,その後会社を設立して4年以上経つが,大きく影響したのはオープンソースとの出会いだろう。いわゆる「パラダイム」の転換を感じてその渦中に身を投じた,と言ったら格好つけすぎだが,それぐらいの大きな転換点があったから会社を辞めた。

 しかし,会社を辞めても,自分の中での社会人としての成長は10年が一区切りで,今はちょうど次の区切りに入ったぐらいと感じている。10年間は長くて短く,様々な困難や分かれ道が待ち受けているかもしれないが,結果が出なくても焦らず気長に最初の10年を有意に過ごそう。特に最初の3年間は,細かな点よりも社会や会社がどのような仕組みで動いているのか,広い視野で学んでみるつもりでいてもいいのではないだろうか。

 そして10年後には何か一つ,これだけには自信があるというものを身につけていたい。その時点で自立して自分のやりたいことを選んでもよいし,他の会社から引き抜かれることもあるだろう。あくまで一つの例ではあるが,参考にしてほしい。

中身の見えるオープンソースなら全てを自分のものにできる

 それでは10年間,どこで学べばよいのだろうか。最も有力なのは当然会社だ。しかし,会社だけが成長のための場所ではない。むしろ,会社の中に閉じこもって目の前の仕事だけしていたのでは,井の中の蛙になりかねない。就業時間後や土日休日などを使って,思い切って会社から飛び出してみよう。遊びに行くのも時間の使い方だが,もっと楽しくて,かつ後に残る有意義な時間の使い方をしてみよう。

 まずは本を読もう。そして何でも試してみること。ITエンジニアを志すのであれば,自宅にPCの2台や3台,置いてあって当たり前だと思うこと。できれば自分でPCを組み立ててみよう。お金はなくても時間はあるはず。どうしたら予算の範囲内で安く作れるか考えてみよう。自分で組み立てることで,コンピュータの仕組みの理解がぐっと進むはずだ。

 そして色々なOSやソフトを試してみてほしい。仕事ではWindowsを使う機会が多いかもしれないが,Windowsはいわばブラックボックスで,いくら使い方を覚えてもなかなか中の仕組みまで理解するのは難しい。それよりも,LinuxやFreeBSD,OpenSolarisなど,様々なオープンソースのソフトウエアが無料で入手できるいい時代なのだから,使ってみないのは損だ。大したことはできなくてもいいから,どんどん使い比べてみよう。

 もし中の仕組みを知りたくなったら,ソースコードはすべてオープンなのだから頑張って読んでみるのも一つの勉強だ。中身の見えるオープンソース・ソフトウエアなら,頑張れば全てを自分の血肉にすることもできる。

コミュニティは様々な知識と経験を与えてくれる学校

 これはと思うソフトがあれば,コミュニティにも目を向けてみよう。オープンソースのソフトウエアは,そのソフトを作っている人,使っている人,その他マニュアルを書いたり翻訳したり,様々な人が集まってコミュニティを形成している。そんな人の輪の中に飛び込んでみることだ。例えあなたが技術的にはまだまだ駆け出しだとしても,きっとその若さで何かできることがあるはずだ。

 また,コミュニティの中には,仕事ではなかなか知り合えないようなベテランの,あるいは優れたエンジニアの方から直接話を聞くことができる機会も沢山ある。そんな得難いチャンスを有効に活用したい。

 そしていつかは,同じようにコミュニティに飛び込んで来る次の人たちにあなたが何かを教えていく番になるだろう。

ただ座って,与えられたことだけこなしていては成長はない。「会社が教育してくれない」と嘆くよりも先に,コミュニティという素晴らしい学校に飛び込んで,沢山勉強してほしい。そのための門戸は常にオープンに開かれている。

オープンソースカンファレンス2005開催

展示会場
講演会場
 3月25日(金),26日(土)の2日間,日本電子専門学校において『オープンソースカンファレンス2005』を開催した(関連記事)。昨年に引き続き2回目の開催だが,今回は2日間で1100名もの方に参加していただいた。

 10以上のセミナー会場と展示会場での開催となったが,満員のセミナーが続出し,展示スペースも全部で30コマと活気あふれる会場となった。これだけのイベントの大部分が,参加した多数のオープンソース・コミュニティによる自主的な運営で成り立っていることも特筆すべき点であろう。それでもまだまだ人手が足りない部分もあるので,是非イベント運営に参加してみてほしい。仕事ではなかなかこのような機会は得られないだろうから,大いに勉強になると思う。

 今後,9月に再度東京で開催する予定の他,北海道,沖縄,大阪で開催する予定なので,各地域の方も是非開催の折りにはご参加いただければと思う。


宮原 徹(Toru Miyahara)
■著者紹介

宮原 徹(みやはら・とおる)氏

株式会社びぎねっと 代表取締役社長/CEO。1994年~99年,日本オラクル株式会社でデータベース製品およびインターネット製品マーケティングに従事。特に,日本オラクルのWebサイト立ち上げ,および「Oracle 8 for Linux」のマーケティング活動にて活躍。2000年,株式会社デジタルデザイン東京支社支社長兼株式会社アクアリウムコンピューター代表取締役社長に就任。2001年,株式会社びぎねっとを設立し,現在に至る。1972年,神奈川県生まれ。中央大学法学部法律学科卒。Linuxやオープンソース・ソフトウエアのビジネス利用を目指したProject BLUEの設立をはじめ、様々なオープンソース・コミュニティの活動に従事している(宮原氏インタビュー「会社に閉じこもらず交流しよう」)。