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ハード・ディスクや光ディスク・ドライブの接続に使われているIDE(ATA)は18年前に,拡張ボードの接続などに利用されているPCIは10年前に規格化され,今日まで使われ続けている。当時は転送速度を稼ぐために並列にデータを送るパラレル方式が採用されたが,今となっては足枷となっている。そこで,限界が見えたこれらに代わって新しいシリアル・インタフェースが登場してきた。2003年にはIDEに代わりSerial ATAが,2004年にはPCIに代わりPCI Expressが普及し始める。

図1●パソコンの新しいシリアル・インタフェースのロードマップ。
2002年にはUSB 2.0,2003年にはSerial ATA,2004年にはPCI Expressの普及が始まる
 Serial ATAの規格策定は2000年2月,PCI Expressの規格策定は2001年3月に始まった(図1[拡大表示] )。2001~2002年に規格が固まり,現在は製品やサンプルが出始めている。

 普及のカギを握るのは「米Intel社のチップセットがいつ対応するか」である。新しいインタフェースが登場しても,対応機器が少ないうちは,パソコン・メーカは余分なコストをかけてまで対応しない。だから対応機器も増えない。チップセットが標準で対応すれば,少ないコストで新しいインタフェースを搭載できる。こうなるとパソコンの対応が進む。その結果,対応機器も増えるという好循環を生む。

 典型例がUSBの高速規格であるUSB 2.0だ。USB 2.0の規格が策定されたのは2000年4月。これに基づき,2001年春から夏にかけてUSB 2.0のインタフェース・ボードや対応機器が出始めた。だが,この時点では製品数も少なく,マニア向けという色合いが強かった。状況が一変したのは2002年5月にIntelがUSB 2.0対応チップセット「845E」「845G」「845GL」の出荷を開始してからだ。これ以降,外付けハード・ディスクやビデオ・キャプチャ・ユニットなど対応機器が続々登場している。

 Serial ATAは現在,コントローラ・チップが製品化され,RAIDボードやマザーボードに対応製品が出てきた段階で,対応ハード・ディスクも2002年内には登場する見込みだ。Intelは2003年半ばに対応チップセットの出荷を計画しており,それ以降は多くのハード・ディスクがSerial ATAに対応するだろう。

図2●Serial ATAとPCI Expressによりパソコンがシリアル化される部分。
主記憶とCPUのバス以外はすべて変わる

 一方,PCI ExpressはNECなどがコントローラ・チップの開発を進めている段階だ。2003年前半には製品化される見込みである。また,IntelはPCI Expressを採用する新しいパソコン用プラットフォーム「Big Water」の開発を進めている。2003年中に仕様を確定し,2004年からの普及を目指すという。このスケジュールから考えると,2004年には同社のチップセットがPCI Expressに対応する可能性が高い。

AGPやチップ間接続も置き換え

 Serial ATAやPCI Expressが普及すると,パソコンの内部構造が大きく変わる(図2[拡大表示])。Serial ATAの普及で,まずハード・ディスクや光ディスク・ドライブの接続がシリアル化される。さらにPCI Expressが普及すると,従来のPCIのみならず,グラフィックス・ボード/チップの接続に使われるAGPもPCI Expressに置き換えられる。また,チップセットを構成する二つのチップ(メモリ・コントローラ・ハブとI/Oコントローラ・ハブ)の間を結ぶIntel独自のインタフェースであるハブ・インタフェースもPCI Expressになる。ただし,米AMD社のCPUを搭載したシステムでは,この部分に同社が開発した「HyperTransport」というチップ間接続インタフェースを使うため,PCI Expressは使わない可能性もある。

高速化の余地を残すSerial ATA

 IDEからSerial ATAに変わっても,現在の仕様ではそれほど性能に差はない。Serial ATAは1.0版の転送速度は150Mバイト/秒。現在のIDEで転送速度が最も速いのは,133Mバイト/秒のUltra ATA/133だ。ほぼSerial ATAと同じである。ただし,Ultra ATA/133は米Maxtor社の独自規格で,他社のハード・ディスクは対応していない。標準規格では,100Mバイト/秒のUltra ATA/100が最高速である。いずれにしても,Serial ATA 1.0の転送速度は桁違いに速いわけではない。

 シリアル化の意義は,むしろ将来に向けて高速化の余地を確保する点にある。パラレル・インタフェースである従来のIDEでは,Ultra ATA/133を超える高速化は技術的に難しい。これに対し,Serial ATAは2004年には300Mバイト/秒,2007年には600Mバイト/秒と,高速化していく道のりが見えている。

 背景には,ハード・ディスクの性能向上がある。ハード・ディスクの内部転送速度は,記録密度の向上などにより年に40%の割合で向上しているという。現在の内部転送速度は,高性能なハード・ディスクだと70Mバイト/秒を超える。一方,IDEのデータ転送にはオーバヘッドがあるため,実質的な転送速度はスペックの60%程度だ。つまり,Ultra ATA/133では80Mバイト/秒,Ultra ATA/100では60Mバイト/秒程度の内部転送速度が限界である。インタフェースがボトルネックにならないためには,シリアル化は必然の流れなのである。

コネクタとケーブルが小型化

 Serial ATAには高速化以外にもメリットがある。まず,従来のIDEには付き物だった「マスタ」や「スレーブ」を気にしなくてもよくなった点だ(図3[拡大表示])。従来は,同じケーブルに接続したマスタとスレーブのドライブのどちらかが低速だと,それに合わせて高速な方のドライブも遅くなるという問題があった。Serial ATAでは,ホスト・コントローラと各ドライブは独立して接続するためこうした問題がない。

 小型のコネクタや細いケーブルも魅力だ(写真1)。コネクタが小型化することで,省スペース・パソコンを作りやすくなる。また,ケーブルが細くなることで取り回しが楽になり,通気性の向上も期待できる。

図3●従来のIDEとSerial ATAのドライブ接続イメージ。
Serial ATAではマスタ/スレーブの区別がなくなる
 
写真1●Serial ATAのコネクタ/ケーブル(左)と従来のUltra ATA/66/100/133用のコネクタ/ケーブル(右)

 Serial ATAでは,2本の信号線の電位差を検知して動作する「差動伝送方式」を採用している。また,データの行きと帰りに別々の信号線を用意する。つまり,1ビットの双方向の転送に4本の信号線を用いる。Serial ATAケーブルは,これに3本の接地線を加えた7ピンで済むので,従来のIDEケーブル(コネクタは40ピン,Ultla ATA/33以前が40芯,Ultla ATA/66以降が80芯)に比べて大幅に小型化できた。ケーブル長の限界も,IDEが約46cm(18インチ)までなのに対し,Serial ATAでは1mに緩和されている。

(大森 敏行)