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 コレガは2003年6月2日,同社のIEEE802.11g対応無線LAN製品を高速化する「ジェットモード」に対応したファームウェア/ドライバの配布を開始した。ジェットモードを適用すると11gの通信がすべてのケースで高速化するという。

写真●ジェットモードに対応したコレガの無線LANルーター「WLBAR-54GT」とPCカード「WLCB-54GT」ファームウェアのアップデートでジェットモードに対応する。
図1●ジェットモードを設定した場合としない場合の実測値の違いジェットモードに対応したときの方が,11gの速度が向上していることが分かる。
図2●ジェットモードの動作モデルジェットモードでは,単位時間における11gの占有時間を増やすように,連続して11gのパケットを送る。

 そこで,早速,ジェットモードの効果を実測してみた。実験には,コレガの11g対応無線LANルーター「WLBAR-54GT」,無線LANカード「WLCB-54GT」を用意した(写真)。

 実験では,アクセスポイントの有線ポートにつないだパソコンと,無線LANカードを挿したパソコンの間の実効速度を測定した。

 結果は図1[拡大表示]の通りである。まず,アクセスポイントと11g端末1台が通信している状態(11g onlyモード)ではジェットモードをオンにした方が若干(700kビット/秒程度)高速化した。一方,11bと11gの端末が同時に通信した場合(11b/gモード)は,ジェットモードを有効にすると11gが6.26Mビット/秒から10.6Mビット/秒と高速化したが,反対に11bは3.13Mビット/秒から1.17Mへと速度が低下した。

11bの占有時間を奪って高速化

 コレガが今回投入したジェットモードの正体は,コレガ製品に無線LANチップを供給する米Intersil社が4月15日に発表したソフトウェア技術「PRISM NITRO」である。

 IntersilがNITROを投入した背景には,11bと11gが同時にアクセスポイントとデータをやり取りする際に,11gのパフォーマンスが大幅に低下することを防ぎたいという思いがある。図1を見れば分かるように,11gだけしかアクセスしていない場合は,22Mビット/秒以上も出るのに,11bが同時にデータ転送をすると,6Mビット/秒程度しか出ない。これでは高速化のために11gを導入しても,その効果は半減してしまう。

 b/g混在時に遅くなるのは,11bに帯域を占有され,11gが使える時間が短くなるからだ。11bの最大送信速度は11Mビット/秒,11gは54Mビット/秒である。このため,11bでパケット1個を送信するのに11gの5倍の時間がかかってしまう。

 11gの規格には,11bのパケットと11gのパケットが1対2の割合で流れるような工夫がある。それでも,11bが占有する時間は長く,11gの通実効速度は大きな影響を受けてしまう(図2上[拡大表示])。

 そこでNITROでは,11gのパケットが流れる割合を1対2より大きくした。具体的には,ランダム時間(バックオフ時間)待った後にCTS(Clear to Send)パケットを送信し,複数の11gパケットを連続送信する時間を確保する。そして,CTSで確保した時間分だけ,データパケットを連続送信する。もともと11gが送信できる割合は11bの2倍だったので,11bと11gのパケットの比率は,1:2×n(nは連続して送るパケット数)になる。コレガのジェットモードでは,三つのパケットを連続して送信するように作られているので,11bと11gのパケットは1対6の割合で流れるようになる(図2下)。

 これを踏まえて,図1の測定結果を見直してみると,11b/gモードにおいて,ジェットモードなしの場合,11gが11bの2倍,ありの場合11gが11bの6倍になっており,理論通りに働いていることが分かる。

メリットのある環境は限られる

 ジェットモードは11gの高速化に対してメリットがありそうだが,全体的にはいいことばかりでない。

 まず,11bユーザーの立場に立つと,実効速度は確実に低下する。ジェットモードにより11gパケットの占有時間が増えるからだ。実際,コレガも「11bの速度が大きく低下することは問題だと考えている。現状のものが,最適な設定かどうかは考えていく必要がある」(商品企画部商品企画1課の藤川為廣氏)と見ている。

 「NITORO(ジェットモード)は家庭や小さなオフィスでしか威力を発揮しない。端末3台程度のネットワークでしか効果がないからだ」(米Atheros Communications社のSheung Liプロダクトラインマネージャー)という指摘もある。ジェットモードを搭載した複数の端末が同時にアクセスすると,一つの端末が多くの時間を占有し,端末間に不公平が出るというのだ。

 また,ジェットモード対応と非対応の製品が混在したときにも,不公平が出る。ジェットモードの対応の端末は1度に複数個のパケットを送るが,未対応の端末は1個のパケットしか流れない。このため,ジェットモードが速くなる代わりに,未対応の端末は遅くなる。

他社もジェットモード対抗を準備

 最後に,他社の動きをまとめておく。

 米Broadcom社製の無線LANチップを採用しているメルコは,コレガのジェットモードとほぼ同等の機能を実装したファームウェアを2003年6月末に配布開始するとしている。

 Atheros CommunicationsはIntersilやBroadcomとは別のアプローチで11gのスループットを高速化するファームウェアを開発済みである。早ければ2003年7月にも,このファームウェアの配布を開始するベンダーが登場する見込みである。

(中道 理)