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 パソコンの出荷台数が伸び悩む中,着実な成長を見せているのが中古パソコン市場である。「個人間の取引が多いため正確な数字ではないが,年間10~20%程度の伸びだと言われている」(NECパーソナル企画本部の宮本保之マネージャー)。

 この好調な中古市場に追い風が吹いてきた。まず2003年7月に,メーカー2社が中古パソコン再生事業に乗り出した。そして,2003年10月には個人向けパソコンの再資源化が義務付けられる。

メーカーが中古市場に参入

写真●日本IBMのRefreshed PC
図1●NECが実施する買い取りの仕組み
Webサイトで回収を申し込むと,業者が引き取りに来る。NECからは査定額がユーザーに通知され,承諾すると代金が振り込まれる。
 中古パソコン事業に乗り出したのは,日本IBMとNEC。日本IBMは2003年7月2日,自社製の使用済みパソコンをクリーニングし,「IBM Refreshed PC」という名称で販売すると発表した(写真[拡大表示])。7月22日にはNECも,自社製の使用済みパソコンの回収/販売を開始した。「NEC Refreshed PC」という名前が付けられる。

 名称は同じだが,対象となるパソコンは違う。日本IBMが再利用するパソコンは,企業向けにリースしていたものだ。同社はこれまでも,リース後のパソコンの再生を手がけていた。これにRefreshed PCという名前を付け,事業の強化を図る。「パソコン市場はまだ新品の比率が高すぎる」(日本IBMグローバル・アセット・リカバリー・サービス主任の安食直也セールス・スペシャリスト)と考えているからだ。

 一方のNECは,一般ユーザーから使用済みパソコンを買い取る(図1[拡大表示])。クリーニングやメンテナンスをした後,販売店経由で売り出す。「製品の購入時から使用後の廃棄,リサイクルまで,トータルなサービスを提供したい。その一環として,使用済みパソコンの買い取りを始めた」(NECパーソナルプロダクツPC事業本部マーケティング本部の小澤昇シニアエキスパート)。

 新品のパソコンを販売するメーカーが,中古品販売を推進するのは矛盾しているようにも見える。しかし両社とも,中古と新品は十分棲み分けができると考えている。メインに使う1台目は新品で,中古は2台目以降,というユーザーが多いからだ。

 中古買い取りのシステムを構築することが,逆に新品の購買を促進する面もある。「数年経っても中古として売れると思えば,新品を買いやすくなる」(日本IBMの安食氏)。結果として「新品に買い替えるスパンが短くなる」(NECの小澤氏)。

中古パソコンの品薄を解消

 パソコン・メーカーによるこうした動きは,中古パソコン市場をさらに活性化させる材料になる。中古品を敬遠していたユーザーの心理的な壁が低くなるし,流通する中古パソコンの数が増えるからだ。

 一般に中古品は,メーカーの保証がない分ユーザーに眼力が求められる。その点,メーカーの手で再生された製品なら安心感がある。2社の中古パソコンは,ハードディスクのデータが確実に消去され,ソフトウェアのライセンス問題もクリアしていることが保証されている。さらにNECは,6カ月間のメーカー保証を付けている。何かあったときメーカーに修理を依頼できれば,購入に対する不安は減る。

 中古市場にとっては流通量の問題も大きい。中古パソコンを扱う販売店にとって今一番大変なのが「在庫の確保。いかにモノを集めるかが大きな問題」(ソフマップ総合企画部広報・IR室の松田信行室長)となっている。足りなければ増産すればよい新品と違い,中古は品物をかき集めなければならない。しかし商品価値のあるパソコンは限られる。比較的新しく,状態が良くなければならない。つまり「今はとにかく売るモノが足りない。在庫はあればあるだけ売れる」(日本IBMの安食氏)。

パソコン廃棄にコストがかかる

図2●JEITAによるパソコン再資源化の枠組み
各メーカーに回収依頼をすると,ゆうパックの伝票が送られてくる。これを使って送付されたパソコンは各地の物流倉庫に運ばれて,その後各メーカーの再生施設に届けられる。
表●パソコン回収に必要な料金
価格は各社に任されているが,現在発表されているものはどのメーカーも同じである。
図3●パソコン廃棄時の作業
ユーザーはメーカーに連絡後,梱包してゆうパックで送る。回収料金を払う必要もある。

 もう一つ,中古パソコンの流通量を増やす要因になりそうなのが,個人向けパソコンの再資源化が義務付けられたことだ。既に義務化されていた法人向けパソコンに加え,個人が所有するパソコンも,廃棄時に製造業者が回収/再資源化しなければならなくなった。「資源の有効な利用の促進に関する法律」の改正によるもので,2003年10月1日から施行される。

 これに伴い,電子情報技術産業協会(JEITA)がパソコンの回収と再資源化の枠組みを決めた(図2[拡大表示])。まず,パソコンの所有者はメーカーに回収を依頼する。パソコンは,日本郵政公社のサービスによって,一元的に集められる。最終的に各メーカーの施設に運ばれ,解体後リサイクルに回される。

 現在,この枠組みへの参加を表明している企業は32社。主なパソコン・メーカーは軒並み入っている。これで,日本のパソコンの95%以上がカバーできるという。

 統一的な枠組みを使う理由は,パソコンが複数メーカーの製品の組み合わせで使われることが多いためだ。例えば,ディスプレイとパソコン本体のメーカーが違うことはよくある。統一的な回収の仕組みがあれば,ユーザーはこれらを同時に廃棄できる。メーカーにとってもメリットがある。廃棄されたパソコンは物流倉庫で分別されるため,自社の製品だけを受け取れる。

 回収には費用がかかる。2003年10月1日より前に出荷されたパソコンについては,回収時にユーザーが支払う。料金設定は各社に任されているが,発表された価格を見るとどのメーカーも同じだ()。1台につき,3000~4000円が必要になる。一方,10月1日以降に出荷されるパソコンは,最初から回収費用が含まれている。「PCリサイクルマーク」を付けて区別する。

市場に中古パソコンが増える

 つまり10月1日以降は,パソコンの廃棄は少し面倒になる。これまでのように粗大ゴミとして捨ててはいけない。まずメーカーに連絡し,自分で梱包後,送付しなければならない(図3[拡大表示])。回収料金も必要になる。

 それなら,捨てるよりも売ることを考えるユーザーが増えるだろう。例えばNECの買い取りサービスを利用すれば,業者が梱包してくれるぶん作業も楽だ。回収料金を払うどころか,対価も得られる。使用済みパソコンの売却が,これまで以上に一般的な行為になることが予想される。結果として,店頭に並ぶ中古パソコンが増える。品揃えも豊富になる。一般のユーザーがパソコンを選ぶ際,十分有力な選択肢の一つとなり得る。

(八木 玲子)