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AMDとIntelの性能競争が激化している。両社ともサーバー向けの高速CPUをデスクトップ向けに投入して2003年をしのぐ構えだ。1チップに複数CPUを集積する「Chip Multi Processor」の実装に着手し始める2005年が正念場になる。

図1●米Advanced Micro Devices社(AMD)と米Intel社のCPUコアとブランド名の関係
両社ともサーバー/ワークステーション向けのCPUコアをデスクトップ・パソコン向け最上位版に転用した。
表●AMDの64ビットCPU「Opteron」と「Alhlon64シリーズ」の主な仕様
図2●AMDとIntelの主なCPUのロードマップ
図3●Opteron/Athlon 64の内部構造
アーキテクチャ上は一つのCPUダイに二つのCPUコアを集積できる。
 米Intel社製CPUと同程度の性能でより安価な互換CPUを提供してきた米Advanced Micro Devices社(AMD)。そのAMDが同社独自の64ビット命令セット「AMD 64」を掲げ,ミッドレンジ以下のサーバー,パソコンそれぞれの市場で攻勢をかける。AMDは2003年4月に出荷を始めたサーバー向け64ビットCPU「Opteron」に続き,同年9月24日にクライアント向け64ビットCPU「Athlon 64 3200+」とその上位版「Athlon 64 FX-51」の出荷を開始した。「パラノイア」(偏執狂)を自称するIntelはこれに対抗。両社の切り札は「サーバー向けCPUのデスクトップ転用」だ。

 Athlon 64 FX-51は,性能面でPentium 4 3.2GHzを引き離すフラッグシップという位置付け。OpteronのマルチCPU機能のみを削り,デスクトップ向けに投入した製品だ(図1[拡大表示])。

 迎え撃つIntelが採った対抗策もAMDと同じ。2003年9月16日,Intelは同社のサーバー向けCPU「Xeon MP」として開発していた「Gallatin」(開発コード名)をデスクトップ向けCPU「Pentium 4 Extreme Edition」(Pentium 4 EE)として投入すると発表した。2003年内に出荷を開始する。動作周波数こそ3.2GHzと通常のPentium 4の最上位版と同じだが,Pentium 4 EEは1次/2次の両キャッシュに加え2Mバイトの大容量3次キャッシュを搭載することで高速化を図る。

 IntelがPentium 4 EEをAthlon 64 FX対抗として市場に送り出すのは価格面でかなりのチャレンジだ。競合するAthlon 64 FX-51の価格は9万1625円(1000個注文時の単価)。2003年10月14日時点でPentium 4 EEの価格は未定だが,Athlon 64 FX対抗の意味合いで10万円前後の値付けが予想される。Pentium 4 EEとCPUコアを同じくするXeon MPは,2.8GHz版の価格で3592ドル。日本円にして約40万円だ。Pentium 4 EEをXeon MP 3.2GHzと仮定すれば,マルチCPU機能こそないものの,本来40万円強の値が付けられるCPUコアを約10万円で販売することになる。

サーバーCPU転用の副作用で割高なメモリーが必須に

 ともにサーバー向けCPUをデスクトップ向けに転用する形で対峙する両CPUだが,動作プラットフォームの面ではAMDが不利だ。Athlon 64とAthlon 64 FXはCPUソケットの形状が異なる([拡大表示])。Athlon 64が754ピンであるのに対し,Athlon 64 FXは940ピン。Athlon 64とAthlon 64 FXとではマザーボードが共用できないのだ。

 754ピンと940ピンの違いは,デュアル・チャネル対応の有無によるものだ。デュアル・チャネルに対応していれば2枚のメモリー・モジュールを同時に読み書きできる。Athlon 64は,デスクトップ向けという位置付けからデュアル・チャネル機能を省いたメモリー・コントローラを統合した新コアを採用した。Athlon 64 FXはデュアル・チャネル対応のOpteronコアをそのまま流用しているため,Opteronと同じ940ピンになる。

 Opteron流用の副作用はもう一つある。Athlon 64 FXを採用するパソコンでは,「Registered」タイプのメモリー・モジュールしか利用できない点だ。Registeredタイプのメモリー・モジュールは,信号の補正回路を設けて接続可能なメモリー・モジュールの枚数の上限を増やしている。信号補正回路のコストがかかる,流通量が少ない,といった理由から,「Unbuffered」と呼ばれる信号補正のない通常のメモリー・モジュールよりも割高になる。例えば512MバイトのUnbufferedタイプのメモリー・モジュールは,実売価格で9000円前後。これに対しRegisteredタイプでは,同じ512Mバイト容量で1万4000円前後になる。デュアル・チャネル構成を取るのであれば,メモリーにかかるコストはさらに倍だ。

2004年には早くも互換性を失うAthlon 64のマザーボード

 メモリーの対応状況がチップセットではなくCPUに引きずられてしまうのは,メモリー・コントローラの混載により性能向上を図ったAthlon 64の泣き所だといえる。デュアル・チャネルではRegisteredタイプのメモリー・モジュールしか使えないという欠点を解消すべく,AMDはUnbufferedタイプのメモリー・モジュールでもデュアル・チャネルで使える新Athlon 64「San Diego」(開発コード名)を2004年前半に投入する(図2[拡大表示])。しかしSan Diegoはデュアル・チャネル駆動用の信号線が増えるため,CPUのピン数が現行Athlon 64の754ピンから939ピンに増える。現行Athlon 64の754ピン用のソケットと互換性はない。940ピンのAthlon 64 FXも,939ピンの新ソケットには装着できない。

両社とも目指すは「1チップでマルチCPU」

 AMDがSan Diegoコアの新Athlon 64を出荷する頃には,Intelが2004年第1四半期に出荷を予定している次期Pentium 4「Prescott」(開発コード)が姿を現す。PrescottはCPUの製造プロセス・ルールを0.13μmから90nmに微細化し,動作周波数の向上によって処理性能を引き上げる。当初の動作周波数は3.4GHzから始まり,2004年内に4GHzに達する見込みだ。

 これに対しAMDは,64ビットCPUのメリットである4Gバイトを超えるメモリーの搭載と64ビット処理によるアプリケーションの高速化を前面に押し出す。米Microsoft社が2004年第1四半期に出荷予定のOpteron/Athlon 64対応OS「Windows XP 64-Bit Edition for 64-Bit Extended Systems」も追い風になる。ただし64ビット処理による高速化が期待できるのは巨大な数字を扱う暗号処理や3次元グラフィックス処理,科学計算などのアプリケーションに限られる。オフィス・スイートなどのビジネス・アプリケーションではメリットが少ない。

 すべてのユーザーにとって処理性能の向上が見込めるのは,1チップに複数のCPUコアを作り込む「Chip Multi-Processor」(CMP)のCPUだ。現在Intelが実装している「Hyper-Threading」テクノロジのような仮想CPUではなく,物理的に複数のCPUを一つのCPUダイに集積する。
すでにAMDは,メモリー・コントローラの統合と同時に,マルチCPU動作時の割り込みコントローラをOpteron/Athlon 64に組み込み済みだ(図3[拡大表示])。構造上は,CPUを二つ組み込むための回路が準備できている。

 とはいえ,CMPのCPUが登場するまだ先の話だ。CPUの原価は,1枚のシリコン・ウェハーから取り出せるCPUダイの数で決まってくる。価格を度外視するのでなければ,CMPを実現するには一つのCPUダイに二つのCPUコアを組み込むだけの余裕を製造プロセス・ルールの微細化によって確保しなくてはならない。各CPUメーカーとも,現行の0.13μmルールから90nmルールへの移行が落ち着いた段階で,サーバー/ワークステーション向けCPUからCMPにする算段だ。例えばIntelは,同社のサーバー/ワークステーション向け64ビットCPU「Itanium 2」の次世代コア「Montecito」(開発コード名)を2CPUのCMPとして2005年に出荷する。製造プロセス・ルールが65nmプロセスに移行する2006年以降は,デスクトップ向けのCPUもCMPに移行する見込みだ。

(高橋 秀和)