公正取引委員会は2004年4月8日,バッファローのMO製品に対する警告を始め,周辺機器メーカー数社に対しMOドライブおよび無線LAN製品に関する不当表示の是正を求めたことを公表した。公正取引委員会が情報機器の性能表示にメスを入れたのは今回が初めて。

 公正取引委員会が実施したのは,「不当景品類及び不当表示防止法」(以下,景品表示法)に基づく措置。広告や製品パッケージに示された性能表示が誇大もしくは誤解を招きやすい不当な表示にあたるとして,同法第4条の「優良誤認」の規定に抵触する恐れがあるとみなされた。製品の最大性能あるいは準拠する規格の理論値と,実際の平均的な性能とのギャップがその根拠である。

最大と平均のギャップに警告

 具体的には,USB2.0に対応したバッファロー製MOドライブ「MO-CH640U2」に関して,「超高速5倍速MO! USB2.0対応」や「※5倍速はUSB1.1接続に対しての読み込み転送速度の比較です」などの表示が警告の対象となった。

表●不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)に基づく措置
不当表示については三つの処分がある。景品表示法で違反行為と認められた場合は「排除命令」が下される。違反行為とまでは言えない場合でも,消費者保護の観点から排除命令に準ずる「警告」,警告よりも軽い「注意」が与えられる。

 「警告」は,景品表示法違反の恐れがある場合に適用される措置である([拡大表示])。違反が明らかな場合は「排除命令」が下される。排除命令が“クロ”と認定されたことを示すのに対し,警告は“グレー”といえるもの。景品表示法違反につながる恐れがあるケースには,警告に準ずる「注意」となる。

 MO-CH640U2ではUSB1.1での接続と比べて,「通常は2~3倍程度なのに対し,ごく限られた条件下のみではなく,常に5倍速で読み込み可能のように受け取れる」(公正取引委員会事務総局取引部景品表示監視室)表示との判断から警告となった。

 他のMO製品を取り扱う3社(企業名は非公表)については注意を行った。「表示と実際の性能とのかい離幅がバッファロー製品ほどではなかった」(同)ことから,警告ではなく注意となった。

 対象となった製品はすでに2004年2月に販売を終了しているが,「確かに説明不足だったと反省している」(バッファロー経営管理部広報担当)。今回の警告を受け,同社では表示や広告に対するガイドラインを策定しており,チェック体制の構築により再発防止に努めるという。

無線LANの規格値表示も問題に

 不当表示という点では,4社に対する注意にとどまった無線LANの方が深刻かもしれない。今回の注意では,IEEE802.11aおよび11gの54Mビット/秒,802.11bの11Mビット/秒という規格値の表示が問題視された。

 無線LANの場合,802.11の通信手順を基に理論的な最大スループットを算出すると,11aと11gの場合で約30Mビット/秒となる。この段階ですでに規格値とは大きな開きがある。実際のスループットはこれをさらに下回る。こうした開きは一部のユーザーにとっては半ば常識とも言えるが,「今後は家電への搭載も考えられており,製品に詳しいとは言えないユーザーはさらに増える」(景品表示監視室)。このため,規格値通りの速度で転送できると読めるような違反表示を未然に防ぐために注意を行った。

 これに対し,バッファローは「規格値を示さないのは,かえって消費者の混乱を招きかねない」(経営企画部広報担当)と見ているものの,「誤解を招かないような表現を,他の無線LAN機器メーカーと共同で検討し始めたところ」(同)という。

 もっとも,表示された性能と実際の性能がかい離しているのは無線LANだけではない。実態との差が大きなADSLサービスの最大速度なども,より適切な表現が求められるはずである。

(仙石 誠)