写真●KDDIが販売開始したOver The Air対応通信モジュール
CDMA 1xに対応した通信モジュール「UGEP2-601B」。無線で通信モジュールに電話番号を書き込むことができる。
図●OTAによる電話番号の書き込み
(1)~(5)までがOTAのための準備段階で,(6)からがOTAにより回線を開くための手順。(7)の番号取得では,KDDIがサービス事業者からの依頼を受けて,OTA管理サーバー側から通信モジュールに電話番号を書き込む方法もある。通信料金には二つのプランがある。基本料900円で1パケット当たりの通信料が0.1円のプランと基本料440円で1パケット当たり0.35円のプランである。
 セコムの位置情報・異常監視サービス「ココセコム」,パイオニアのカー・ナビゲーション・システム「Air Navi」,森精機の工作機械の遠隔監視サービス,いすゞ自動車の商用車運行管理システム「みまもりくんオンラインサービス」――。これらはどれも,CDMA 1xに対応した通信モジュールを組み込んだ専用ハードウェアを使っている。必要に応じてKDDIのパケット通信を利用するためだ。こうしたサービスをより使いやすくするために,「Over The Air」(OTA)と呼ばれる新しい技術の導入が始まった。通信料の課金を柔軟に制御できるのが特徴だ。

利用開始と課金開始に時間差

 冒頭に紹介したサービスでは,サービス事業者はKDDIから通信モジュールを購入し,一括して通信サービスを契約する。その後,通信モジュールを組み込んだ機器を製造し,エンドユーザーに販売する。通信料金は,エンドユーザーではなくサービス事業者が支払う。

 データ通信を行うには,通信モジュールに電話番号を書き込む必要がある。これまでは,KDDIが通信モジュールを出荷する段階で書き込んでいた。

 問題は,モジュールに電話番号を書き込んだ時点で通信料の課金が始まってしまっていたこと。組み込み機器の場合,機器の製造,販売を経て,エンドユーザーがサービスを利用し始めるまでに時間がかかる。工作機械の場合は,数カ月かかることもある。課金の発生とエンドユーザーの利用開始の間に時間差が生じるため,この間の通信料を誰が負担するかは常に問題になっていた。

無線で電話番号を書き込み

 そこでKDDIが導入したのがOTAである。2004年6月からOTAに対応した通信モジュールの販売を開始した(写真)。

 一般にOTAとは,暗号鍵やプログラムなどを無線を使って送ることを指す。KDDIの通信サービスの場合は,通信モジュールに電話番号を書き込む。これにより,通信料の課金が始まるタイミングをエンドユーザーのサービス利用時に合わせられる([拡大表示])。

 電話番号を受け取る際の通信には,通信モジュールのハードウェアID(機体ID)を用いる。OTA管理サーバーにはあらかじめ通信サービス契約が済んでいる機体IDが登録されている。

 サービスの利用を始める時は,端末側からOTA管理サーバーに電話番号を要求する。OTA管理サーバーは機体IDにより認証し,電話番号を割り当てる。サービスを使わなくなったときも,OTAで番号を消去し,課金を停止できる。

 今後,KDDIが販売する通信モジュールはすべてOTA対応に移行する。デジタル家電を始め,無線通信機能が高い付加価値を生む機器はいくつもある。近い将来,より多彩な機器にこうした通信モジュールが組み込まれるようになるかもしれない。

(仙石 誠)