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シリコン・フォトニクスとは,シリコン基板上に規則正しい原子配列を保った強誘電体膜(フォトニック結晶)を作り,この強誘電体に電界を加えると光の屈折率や反射率が変化する原理を応用して光デバイスを作製するもの。一般に,シリコンと強誘電体材料の格子定数は異なるため,シリコン基板上にフォトニック結晶を作製することは難しい。 試作した光変調デバイスは,シリコン基板上に外部から入力したレーザー光を2分するフォトニック結晶の導波路をつくり,導波路に電界を印加する電極を埋め込んでいる(図[拡大表示])。
伝送データを基に作成した電気信号を外部からこの電極に印加すると,電極を埋め込んだ導波路の光の位相や強度が変化する。そして,2分した導波路が合流することで,それぞれの導波路で変化したレーザー光の位相や強度が合成され,最終的に強弱のあるパルス波形としてデジタル化される。
このようにシリコン・フォトニクスを応用すると,光―電気変換,電気―光変換することなくレーザー光を直接変調可能である。しかも,安価なシリコン半導体製造技術を採用できる。Luxteraに限らず,シリコン・フォトニクスの原理を使って同様の技術を開発している大学や企業は多い。米Intel社もその一つだ。
今回の発表は,10Gbps,2kmを達成したことだけでなく,(1)現在商用製品に使っている CMOSプロセス技術を使って製造した,(2)シリコン・フォトニクス回路ライブラリを整備している,(3)具体的な製品化スケジュールを明らかにしている―という点で注目される。
Luxteraは,製造工場を持たないファブレス・メーカである。試作チップは,米Freescale Semiconductor社に委託して製造した。具体的には,Freescale社がPowerPCプロセサの製造に使っているのと同じ0.13μmルールのSOI CMOS技術を用いた。
今回試作したチップは光変調デバイスだが,それに限らず同社は,シリコン・フォトニクス回路を既存のツールで設計するためのライブラリの作成を進めている。「将来,他社にライセンス供与する可能性もある」と,社長兼CEOで同社の共同創設者であるAlex Dickinson氏は,本誌の質問に回答を寄せた。
2005年中に具体的な製品発表を行い,2006年第2四半期(4~6月)にサンプル出荷を始める。