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ノート型パソコンはデスクトップ型に比べ,入力デバイスの制約が大きい。小型/軽量化に伴い,パソコンの入力インタフェースも変化を見せている。注目されるのは,タブレットをOS標準の入力インタフェースとして採用したタブレットPCだ。一方,キーボードやマウスも地道に改良が続けられている。

 タブレットは,パソコンに手書きの文字や絵のデータを入力するための装置である。

 ペンが指す座標をタブレットが検出する方法には大きく四つある。一つ目は,ペンからの磁界を検知してペンの位置を割り出す電磁誘導方式。二つ目は,電界を検知して位置を割り出す静電結合方式。三つ目は,ペン先でシートを押すことで位置を割り出す感圧方式。そして,最後はタブレットからレーザ光線を発し,ペンがレーザ光を反射する角度により位置を割り出すレーザ方式である。現在,主流になっているのは電磁誘導方式だ。他の三つの方式に比べて座標を検出する精度が高いためである。タブレットPCも電磁誘導方式が使われている(写真1[拡大表示])。

 電磁誘導方式のタブレットでは,電磁誘導を利用するためのセンサ・コイルが液晶パネルの下にあるセンサ基板にびっしりと並んでいる(写真2[拡大表示])。

写真1●タブレットPC。
マイクロソフトの「Windows XP Tablet PC Edition」を搭載しているノート型パソコン。手書き入力ができる
 
写真2●電磁誘導式タブレットのセンサ・コイル
写真3●タブレット専用ペン。
種類によって異なるが,サイド・スイッチやテール・スイッチで機能を分けられる

 一方,座標を指示するペンにもコイルが入っている。ペン先やペンの上部にあるテール・スイッチの近くに組み込まれている(写真3[拡大表示])。

ペンからの磁界の強さを検知する

 ペンの位置を割り出す方法をもう少し細かく見ていこう。

 まず,タブレット内部のセンサ・コイル群に電流を流し磁界を生じさせる。磁界が生じるとペン側のコイルには誘導電流が流れる。ペンのコイルにはコンデンサが接続されており,共振回路を形成している。

図1●電磁誘導式タブレットの構造。
液晶の上には強化ガラスがあり筆圧に耐えられるようになっている。センサ基板は表と裏でx軸とy軸を感知している。ペンの位置は,ペンのコイルの磁界がタブレットのセンサ・コイルに誘導起電圧を生じさせ,一番大きい位置を検知する

 ペンのコイルに電流が流れることで,ペンからも磁界が生じることになる。その結果,タブレット側のセンサ・コイル群には,ペンが指し示す付近のセンサ・コイルにだけ誘導電流が流れる(図1[拡大表示])。ペン先に一番近いセンサ・コイルには最も強く電流が流れ,遠ざかるにしたがって流れる電流は弱くなる。

 この電流の強さを曲線として描くと,コイル群のどの辺りで頂点になるかがわかる。頂点の部分がペンの位置となる。x座標とy座標それぞれでこの頂点を検出して座標を検出する。

 ペンを使った手書き入力では,手の動きが直接反映されるので,すばやい動きや細かい動きに対応する必要がある。マイクロソフトが提唱するタブレットPCは,1秒間にペンの座標を133回検出することを推奨している。この133回というのは,「普段紙に書くのと同じ感覚で字や絵を書くために必要な性能」(ワコム電子機器カンパニー開発部の千頭敏秀ジェネラルマネージャー)である。文字の認識だけなら100回/秒以上あれば可能だという。

 位置を読み取る精度はセンサ・コイルが左右する。ワコムがタブレットPC向けに出荷しているタブレットの精度は0.01mmだ。

スイッチと筆圧の情報を区別

 タブレットで使うペンはいくつかの機能を備えている。ペンの種類や使うアプリケーションによって多少変わるが,ペンの横についているサイド・スイッチはマウスの右ボタンやダブル・クリックの機能に対応している。ペン先の反対側についているテール・スイッチは消しゴム機能になっている。また,太く濃く書きたいときは筆圧を強くし,細く薄く書きたいときは筆圧を弱くすればよい。

 スイッチと筆圧を検出する仕組みはほぼ同じである。

 どのスイッチが押されたのかは,ペンの共振周波数の変化を検出することでわかる。ペンが内蔵する共振回路に電流が流れると,ある共振周波数の交流電流が生じる。共振周波数はコイルとコンデンサで決まる。スイッチを押すと,コンデンサの容量が変化するようになっており,それを共振周波数の変化としてタブレットが検知する。ちなみに,コンデンサが変化する容量はスイッチごとに異なるため,どのスイッチが押されたかがわかる。コンデンサではなく,コイルの特性を変化させるものもある。

 次に,筆圧の検出方法である。これも同じように共振周波数を変化させることで検知する。ペン先に入っている圧力センサが筆圧の違いを感知して,コンデンサの容量を変化させる。

 共振周波数は,スイッチと筆圧で異なる。スイッチの方が筆圧を変化させたときよりも,コンデンサの容量を大きく変化させる仕組みになっている。したがって,スイッチを押しながらでも筆圧変化が同時に検出できる。

(堀内 かほり)