仕事で使えるアプリケーションが徐々に充実 |

Webとオフィスはほぼ満足
まずWebブラウザに関しては,何といっても「Mozilla」の存在が大きい。完成度の高い米Macromedia社の「Flash Player」や米Adobe System社の「Acrobat Reader」をプラグインとして組み込み,Flash対応のWebサイトを閲覧したりPDFファイルを表示できる。
オフィス・スイートはサン・マイクロシステムズが2002年5月に投入した「StarSuite」でほとんどのユーザーの要求が満たされるだろう注12)。Microsoft Officeの各ファイル形式を難なく読み込める。Excelの関数に関してもStarSuiteの表計算ソフトは9割程度の互換性がある。
また,当初のバージョンで問題があったWordファイルをインポートした際に体裁が大きく違ってしまうという点が修正モジュールで改善されている(写真4[拡大表示])。文章の縦書き表示機能も追加された。
残された社内システムとの接続
実のところグループウェア用のクライアントに関しては,ほぼ手付かずのまま残されていた。具体的に言えば,米IBM社の「IBM Lotus Domino」や米Microsoft社の「Exchange Server」などのクライアント・ソフトである。
LinuxのユーザーはこれらのグループウェアにWebブラウザで接続するが,メールだけPOP3で受け取るといった手段しかなかった。専用クライアントに比べて使い勝手が良くない。機能が制限されたり,レスポンスが悪くなってしまう。
![]() |
写真5●個人情報管理ユーティリティ「Evolution」の画面 電子メールのほか,スケジュール,タスク,アドレス帳を管理できる。 |
Outlookそっくりのクライアント
ところが,この分野にもLinux版のソフトウェアが登場した。米Ximian社が開発している「Ximian Evolution」である。Evolutionは元々,オープンソースの個人情報管理ユーティリティとして,GNOMEプロジェクト内で開発が進められている。デスクトップ環境のGNOMEとともに配布されたりもしているものだ。電子メールや住所録,スケジュールやタスクなどが管理できる(写真5[拡大表示])。Palm OS搭載PDAと接続してデータを同期させることもできる。
XimianはこのEvolutionをMicrosoft Exchange Severに接続できるようにするモジュールを開発した注13)。「Ximian Connector for Microsoft Exchange」として1ユーザー当たり69ドルで2002年3月から販売している。仕組みとしては,Exchange ServerのWebユーザー向けのサービス「Outlook Web Access」にアクセスしてデータを取得している。その意味ではWebブラウザを使うのとあまり変わらないように見えるが,Webブラウザでアクセスするより動作が軽快である。
![]() |
写真6●Exchange 2000 ServerにLinux(左)とWindows(右)のクライアントでアクセスしているところ Linuxは個人情報管理ユーティリティのEvolutionにモジュールを追加して利用している。WindowsはOutlook 2000の画面。 |
Evolutionの画面は,Microsoftの個人情報管理ユーティリティOutlookに画面と使い勝手が似ていた。Exchange Serverに接続した際の画面も似ている(写真6[拡大表示])。機能的な面では基本的なものをすべて使える。全社や部署の単位でファイルを共有するパブリック・フォルダにアクセスすることもできる。できないことは,サーバー上でのメールの自動振り分けの設定ぐらいといえる。
ただし日本のユーザーが使うにはまだ不備がある。電子メールの本文に限って日本語の表示ができないのである。その他の機能では問題なく日本語が使えているので,解決は時間の問題だろう。
多少の不具合はあるものの,Linuxクライアントを仕事に使うための基盤は揃い始めた。2003年は国内でも全面採用を検討する企業や団体が出てくる。例えば,産業技術総合研究所は事業所全体でLinuxをクライアントとして実験的に導入する予定である。オフィス・スイートとしては,無償でオープンソースの「OpenOffice.org」を採用するという。