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防犯グッズを使いこなす

 情報が流出するのは,何もインターネットを通じてばかりではない。パソコンをローカルで操作されてしまったら,いくらファイアウォールでネットワークを守っていても,情報はザルからこぼれるように漏れてしまう。パソコンそのものが盗まれて,後からじっくりとデータを吟味されてしまうと手の打ちようがない。パソコンの盗難を防ぐことは,セキュアなネットワークを構築することと同じ意味を持つ。

写真1●手軽で効果的な盗難防止ロック
さまざまな種類がある盗難防止ロック。ワイヤーが付いたロックをノートパソコンのセキュリティ・スロットに取り付けて使う。机などにワイヤーを巻きつけておけば,簡単には盗まれない。ほとんどの商品が5000円以下で入手できる。
写真2●盗難防止ロックの使い方
基本的に使用方法はどの製品でもほとんど同じ。ロック部をパソコンの本体に設けられたセキュリティ・スロットに取り付け,ワイヤーを机の脚などに巻きつける。この際,ワイヤーの先端の輪にロック側をくぐらせ,写真のような部分に巻き付ける。パソコンを持ち出すにはワイヤーを切断するしかない。
写真3●ロックはキー式とダイヤル式の2種類
左がキーを回して施錠/解錠する,米Kensington Technology Group製の「スリムマイクロセーバー」(Web直販価格5480円。http://www.nanayojapan.co.jp/)。中は,設定した番号をセットして解錠するターガス・ジャパンの「デフコンCL」(実売価格約5500円。http://www.targus.co.jp/)。写真右の製品は,ダイヤル式の南京錠を使い,マウスやテンキーパッドなどのケーブルを同時にロックできる,サンワサプライの「SL-21」(価格1980円。http://www.sanwa.co.jp/)。
写真4●パソコンをオリに閉じ込めてしまう「クリプトボルト」
3本のアームとアームを根元で固定するシャフトを使って,ノートパソコンを閉じ込めてしまう。盗難を防ぐだけでなく,不在時にパソコンを勝手に使用されることも防ぐ。オープン価格で,実売価格は約1万1000円。日本ポラデジタルが国内で販売している。http://www.poladigital.co.jp/

パソコンを盗られないために

ワイヤーで固定するか
盗難防止アラームを取り付ける

 情報を盗み出す側になったつもりで考えてみよう。インターネットを通じてセキュリティ・ホールを突き,重要なデータを盗み出す。これは一つの方法だ。しかし,ネットワークをセキュアにしてサーバーやクライアントを守っていれば,そうそう簡単に不正アクセスはできないだろう。

 だが,方法はこれだけではない。インターネットを経由したリモート操作で盗み出すのが難しければ,ローカルでパソコンを操作してしまえばよい。もっと簡単なのは,パソコンごと盗み,後でゆっくりと情報を抜き出すことだ。情報を盗むという点では,クラッキングよりも確実でうま味もあるだろう。

 ノートパソコンは基本的に持ち運びできる。ということは,パソコンを盗む側にとっても持ち出しやすいということになる。パソコン盗難の60%がオフィスで発生しているという調査結果もある。

 このため,パソコンの盗難を防止することは大切なセキュリティ対策の一つになる。盗難を防ぐには物理的にパソコンを持ち出せないような対策を施す。または,盗まれようとする際に警報音などを鳴らす。その際に有効なのが,盗難防止ロックや盗難防止アラームである。

種類の多い盗難防止ロック

 盗難防止ロックは,さまざまなメーカーが販売している。主要なメーカーは米Kensington Technology Group社(国内販売は七陽商事),ターガス・ジャパンなど。サンワサプライ,エレコム,ロアスなどのOAサプライ・メーカーも取り扱っている。それぞれ,ロックの種類やワイヤーの太さなどに応じて,数種類の製品を出している(写真1[拡大表示])。製品は数多く存在するが,基本的な使い方は同じである。

 古くからのユーザーなら,ケンジントン・ロックという名前に聞き覚えがあるかもしれない。これは,Kensington Technology Groupの盗難防止ロック製品の総称として使われている。同社製品が盗難防止ロックで最も名の知れた製品ということもあり,ケンジントン・ロックという呼び方が広く認知されるようになったようだ。

 現行の盗難防止ロックのほとんどは,ノートパソコン向けに販売されている。ノートパソコン側に設けられたセキュリティ・スロットに取り付けて使う注1)写真2[拡大表示])。セキュリティ・スロットは,Kensington Technology Groupが最初に盗難防止ロックを発売した際に提唱した,専用のスロットである。セキュリティ・ロック・スロット,セキュリティ・ロック・ポートなどと呼ばれることもある。幅7×高さ3mm程度の長方形の穴で,ノートパソコンの側面に設けられていることが多い。背面,底面などに設けたパソコンもある。最近では,ほとんどのノートパソコンがセキュリティ・スロットを備えている。

 盗難防止ロックは,金属製のワイヤーの先端が錠前の役割を果たすロックになっている。ロックの先端には,セキュリティ・スロットに挿せる大きさの爪がある。爪の形状はT字型のバーや,開いたり閉じたりする羽状になっている。スロットに挿してからカギをかけると,先端がスロットの穴の中で90度回転したり,閉じていた羽が開く。これにより,ロックを解除しない限り先端部がスロットに引っかかって取り外せない。

 ロックと反対側は,ワイヤーを輪にして閉じてある。ワイヤーを机の脚などに巻いて,ロック側をこの輪に通してパソコンに接続する(写真2)。この際,ワイヤーを抜き取れないように巻き付ける。こうしておけば,パソコンを持ち出すことが不可能になる。

 ロックの種類は,キー式とダイヤル式に分類できる(写真3[拡大表示])。キー式では,キーがないとロックを解除できない。ダイヤル式は3桁ないし4桁の数字を合わせる製品が一般的だ。どちらでも使い方に迷うことはないだろうが,盗難防止という観点ではキー式の方が確実だ。キーを紛失するリスクはあるが,ダイヤル式は総当たりで試されると,ある時点でロックを解除されてしまう。

 ワイヤーを南京錠で止めてしまう方式の製品もある(写真3)。この製品では,セキュリティ・スロットに挿した部品にワイヤーを通し,そのワイヤーが抜けないように南京錠を使う。ノートパソコンだけでなく,マウスやテンキーパッドのケーブルを通して,パソコンとともに持ち出せないようにできるのが特徴である。

PCを金属枠に閉じ込める製品も

 ワイヤーではなく,金属製のオリにパソコンを閉じ込めてしまう,米Kryptonite社の「クリプトボルト」(写真4)のような製品もある。3本の太いU字型の金属アームをカギ付きのシャフト(3本のアームを根元で固定する縦の金属棒)で止めてある。ロックを解除すると,アームを止めているシャフトが抜け,そこからパソコンをオリの中に入れる。アームでパソコンを挟み,シャフトを入れてロックすれば,パソコンを抜き取ることも,開くこともできなくなる。実売価格は1万1000円程度と盗難防止ロックよりも高いが,ワイヤーも8mm径と太く,安全性は高い。

ワイヤーを切断するのは簡単か?

写真●細いワイヤーなら短時間で切断できる
一般的な金属用ノコギリで,1.6mm径のワイヤーを切断してみた。初めは苦労したが,3分ほどの作業で完全に切断できた。
 量販店で販売されている盗難防止ロックは,ほとんどが2000~5000円で購入できる。価格の違いは,ロック部の作りとワイヤーの太さ。ロック部は内部のシリンダの構造や,キーの形式などに違いがある。シリンダの構造が複雑になるほど,こじ開けるのが難しくなる。ピッキングに強いキーを採用している製品もある。

 切断はワイヤーが太いほど難しい。では,ワイヤーを切断するには,どの程度の時間がかかるのだろうか。実際に試してみた。

 使った切断器具は,工具店で販売している一般的な金属用ノコギリ(1000円程度)に,標準の刃よりも強力という替え刃(1200円程度)を付けたもの。ワイヤーは市販製品の中で最も細い部類に当たる直径1.6mmのタイプを選んだ。最も短時間で切断できる例として,参考にするためだ。

 切断してみた結果が写真である。ワイヤー表面のビニールの被覆はすぐに切れた。その時点で,より線であるワイヤーのうち1~2本が切れた。そこからしばらく時間はかかったが,結果的に完全に切断するまでに要した時間は3分ほどだった。

 5分と言われる一般的な犯行時間の中での3分間が,長いか短いかは判断が難しい。また,実際にパソコンが置かれている環境は,切断作業に向く環境ではないだろう。これよりも時間がかかる可能性は高い。それを嫌う実行犯もいるはずだ。

 ただし,盗む側が盗みたいパソコンを特定し,初めからワイヤーを切ることも覚悟のうえなら,細いワイヤーだけではパソコンの盗難を防ぐことはできないかもしれない。狙いを定めた1台を盗むだけならば,3分は十分な時間と言える。なるべく太いワイヤーを使う方が無難だ。現在のところ,直径8mmの太いワイヤーも販売されている。

(仙石 誠=日経バイト)