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図3●各色2列の画素を並べたCCD
一つひとつの画素間の距離や画素の大きさは同じだが,片方の列の画素を半分ずらすことによってスキャンするポイントを増やしている。解像度を上げつつ,感度を保つためだ。
図4●画素の上に配置したマイクロレンズ
撮像素子のフォトダイオードは,中央部がより感度が高い。この性質を利用して,マイクロレンズで中央部に光を集めて感度を高めた。
図5●ダイヤモンドピクセルCCDの仕組み
1画素の周辺部の面積を減らし,隣の画素の光を受け取らないようにした。これで周囲の画素に入るべき情報を減らし,画像のぼけを少なくした。

上位機種は縮小,下位機種は密着

 このような特性の違いから,高画質を求める上位機種は縮小光学系,安価で小型な下位機種は密着光学系を採用している場合が多い。読み取りに厳密な性能が求められる業務用スキャナでは,縮小光学系が使われている。「自動で給紙する業務用スキャナでは,読み取り時に多少原稿が浮いてしまうことがある。それでもきれいに読み取るには,縮小光学系が必須」(PFUの楠氏)。

 ただ画質に関して,密着光学系が有利な点が一つある。撮像素子の大きさだ。同じ画素数を作り込んだ場合,縮小光学系に比べて1画素当たりの面積を大きくできる。そのぶん感度が上がり,きれいな色再現ができるはずだ。

 だが実際には,高解像度の密着光学系は実現し難い。密着光学系に使う撮像素子は,1枚の半導体で作られていないからだ。原稿と同じ幅の撮像素子を1枚の半導体で作成しようとすると,歩留まりが悪くコストがかさんでしまう。このため,複数の小型の撮像素子をつなぎ合わせて作っている。これらの出力特性にはどうしてもばらつきがある。高解像度にするとこの差が目立つようになる。

 さらに素子のつなぎ目をうまくごまかさなければならない。これも,高解像度になるほどつなぎ目に入る線が目立つようになる。被写界深度が浅いこともあり,結局密着光学系は,小型で低価格の機種に採用される場合がほとんどだ。

CCDの改良で高解像度化

 最近の動きで目立つのは二つ。まず上位機種の高解像度化だ。撮像素子にさまざまな工夫が加えられている。さらにソフトウェア処理やノイズの除去を工夫することで,より美しい画像を生成する努力も続いている。もう一つは複合機の充実だ。プリンタ,コピー,スキャナを1台で実現する多機能な機器として,一般家庭への浸透が進んでいる。

 解像度を上げるためには,撮像素子の画素数を増やせばよい。しかし単純に画素数だけを増やしてしまうと,1画素当たりの面積が減る。その結果,感度が下がる。

 この問題を解決するために,セイコーエプソンやキヤノンはRGBの各色ごとに2列の画素を並べた(図3[拡大表示])。この方式なら,従来と同じ大きさの画素で操作するポイントの数を2倍にできる。

 これに加え,さらに感度を上げるための工夫を盛り込んだのがセイコーエプソンである。各画素に対して,カラーフィルタの上にマイクロレンズと呼ばれる微小なレンズを配置した(図4[拡大表示])。これを使って,1画素のうち,光を電荷に変える部分(フォトダイオード)の周辺部に入った光を中央部に集める。その理由は「フォトダイオードは中央部の方が感度が高い傾向にある」(セイコーエプソンの百瀬氏)ため。感度の高い部分に光を集めれば,より効率よく電荷を発生させられる。

 一方キヤノンは,感度よりも解像力を重視した。同社が「ダイヤモンドピクセル」と名付けたCCDである(図5[拡大表示])。「画素を2列に配置すると,ある画素だけが受けるべき光をその隣の画素も受け取ってしまい,その部分の画像がぼやけてしまうという現象が発生する」(キヤノンの鳥海氏)。これを避けるために,1画素の形状を6角形にし,画素の周辺部からあまり光を受け取らない構造にした。

 ソフトウェア処理の工夫もある。セイコーエプソンは2003年5月,スキャナのドライバに「退色復元機能」を追加した。「昔の写真をスキャナで読み取ってパソコンで管理したいというユーザーは多い。しかし写真自体の色が劣化しているため,きれいに読み込めない場合がある」(エプソン販売マーケティング本部マーケティング企画部の松井利浩係長)。退色復元機能は,劣化した部分を自動判別し,撮ったばかりの写真に近い色に補正する。

 ノイズの除去機能を備える機種も多い。原稿面に着いたホコリや傷をソフトウェア的に検出して,生成する画像からそれらを除去するものだ。読み取ったデータから不自然な細かな模様や筋などを見つけ,画像処理で取り除く。

 しかしこの方法だけでは十分ではない。例えば原稿に元々入っている小さな模様をホコリと判断し,消してしまう場合もある。キヤノンは,これを防ぐ仕組みを搭載している。銀塩カメラのフィルムを読み込む機能を持つ上位機種に,通常の光源とは別に赤外線の発光部を設けている。フィルムを読み込む場合,通常の読み取りの後に赤外線を照射して再度読み取りを実行する。その結果,ホコリや傷の影だけが映った画像が得られる。この情報を利用してノイズを除去すれば,元々のデータを誤って消さずに済む。

(八木 玲子)