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UNIXならタイプライター・ペアリング

 キーボードの配列で論争を招くのが,「(」と「)」が「9」「0」の上にある「タイプライター・ペアリング」と,「(」と「)」が「8」「9」の上にある「ロジカル・ペアリング」の違いである。数字キーに割り当てられた記号の組み合わせ方(ペアリング)が異なっているのだ。タイプライター・ペアリングは,文字通りタイプライターのペアリングと同じものである。一方のロジカル・ペアリングは,ASCIIコードの下位4ビットが同じコードを持つ数字と記号を組み合わせた配列である。そのため論理的なペアリングと呼ばれている。

 AppleIIや米Commodore社の「VIC1001」といった1970年代のパソコンのキーボードはロジカル・ペアリングとなっている。1980年代に入ってからのAppleIIeやCommodore社の「AMIGA」といった後継機はタイプライター・ペアリングを採用している。理由は定かではないが,あるタイミングで一斉に変更されたようだ。

 当然,ミニコンから発展したワークステーションのキーボードもタイプライター・ペアリングであった。主にUNIXを使っていたエンジニアや研究者は,タイプライター・ペアリングのキーボードで仕事をしていた。ところが,パソコンの台頭によってワークステーションにおいてもロジカル・ペアリングのキーボードが添付されるようになった。しかもIBM PC AT互換であるために「CAPS Lock」キーが「A」キーの隣に,CtrlキーがShiftキーの下に移動していた。タッチタイプ時に小指によるCtrlキー押下を多用するUNIXユーザーからは不評であった。

図5●PFUが1997年に出荷した「Happy Hacking Keyboard」のキー配列
Ctrlキーと文字キーの組み合わせを制御キーとして多用するUNIXユーザー向けにキー配置を工夫した。101/104,および106/109Aキーボードとの違いはCtrlキーがAキーの段にあること。タッチタイプ時に小指で押下しやすい。

 私が開発に携わったHappy Hacking Keyboardは,これらUNIXユーザーのために開発したキーボードである(図5[拡大表示])。設計思想の基本は5点。(1)タイプライター・ペアリングであること,(2)CtrlキーがAキーの隣にあること,(3)CAPS Lockがないこと,(4)ESCキーが1キーの隣にあること,(5)ファンクション・キー,テンキーがないこと,というのが特徴である。特に101/104,および106/109Aキーボードとの違いとして大きいのが,CtrlキーがAキーの隣にあること。タッチタイプ時に小指で押下しやすい。

 今回は英字と制御キーを中心としたキー配列の変遷を私なりの解釈を交えながら眺めてみた。Happy Hacking Keyboardは画一化するパソコン向けキーボードに対する一つの提案である。HHKのように,今後ある用途に特化したキーボードが生まれればと期待している。

 次回は「親指シフト」や「M式」といった日本語入力の効率を高めることを目的としたキー配列と,キーボードの使い勝手を左右するキーの構造を解説したい。さらに次世代キーボードとして「投影型」のキーボードを紹介する。

八幡 勇一Yuichi Yawata

ピンチェンジ テクノロジープロモーター
PFU入社以来,ミニ・コンピュータ,サーバー,ワークステーションの開発に携わる。システム・サポート業務を経てPFU研究所に移籍。StrongARM搭載のPDA開発のかたわら,キーボードの配列および構造についてのヒアリングを重ね,東京大学の和田英一名誉教授の協力の下「Happy Hacking Keyboard」を世に送り出した。現在はピンチェンジに在籍。次世代キーボードを中心にさまざまな新製品の開発に従事する。