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効果的なハンドオーバー技術

 携帯電話はモビリティが最大の特徴であるため,基地局間を移動したときに通話が途切れないような仕組みが重要になる。cdmaOne/1Xにおいては,複数の基地局からの電波を同時に受信しておくことによって,移動中においても通話が途切れることないようにしている。ただしこれは通信品質の観点からは有効であるが,複数の基地局で1台の移動機に対するリソースを重複して確保しなければならないため,効率を高めにくい。

 これに対して1xEV-DOでは常に同時に一つの基地局からのみ電波を受信して,無線リソースを節約している。一つの基地局からしか電波を受信しないが,基地局が切り替わるときでも問題はない。TDM伝送であるため同期が取りやすいからだ。このようにしてパケットの紛失や重複がないように配慮している。ちなみに,基地局が変わる場合に発生するパケット伝送遅延は非常に短いので,TCP/IPといった上位レイヤーへの影響はほとんど見られない。

1xEV-DOのさらなる進化

図7●今後の1xEV-DOの進化
高速化と高機能化,ALL IP化が3GPP2で検討されている。
図8●音声にもIPを使うALL IP化
ALL IP化すると音声とパケットの両方をIPネットワーク経由で中継する。ALL IP化に対応していない旧端末でも通信できるように,旧端末用のネットワーク(旧端末ドメイン:通信路だけをIP化した回線交換網)を残しておく。

 1xEV-DOは今も機能強化を図っている。その議論は,CDMA2000の標準化団体である3GPP2で進められており,高速化と高機能化が主な強化ポイントとなっている(図7[拡大表示])。

 伝送速度については,下りを2.4Mビット/秒から3.0Mビット/秒,上りを144kビット/秒から1.2Mビット/秒に高速化する予定である。下り方向では,16QAMの変調方式を使いつつ,伝送フレーム内の冗長度を減らすことで実効速度をさらに高める。

 また上り方向は,従来のBPSK変調方式に加え,より高い効率のQPSK変調方式を採用する。かつ下り方向で採用しているHybridARQの仕組みを採り入れて,最大速度を約8倍にまで高速化する。

 高機能化については,(1)QoS(Quality of Service),(2)ブロードキャスト/マルチキャスト機能──をサポートする。(1)のQoSは無線区間において一定の帯域を確保する。端末が接続した際に一定帯域を必要とするか否かを識別し,下り方向においてはスロットを優先的に割り当てる。上り方向では伝送速度を維持するよう基地局側で制御して優先的に扱う。

 (2)のブロードキャスト/マルチキャスト機能は同一情報(コンテンツ)を一斉に配信できるようにする機能である。下り方向のスロットはスケジューラによって1端末にのみ割り当てられているが,この1スロットを同時に複数の端末で受信できる仕組みを持たせる。また事前の鍵交換によるCA(Conditional Access)機能も備えているため,受信端末を限定することもできる。これにより同報サービスを効率よく実現する。

 これらの機能は現状システムとの互換性を保ちつつ実装できる。優先度を重視するアプリケーションや実時間性を要するアプリケーションなどの提供がより一層容易になるだろう。

音声もIPベースへ

 1xEV-DOでは,パケット専用ネットワークが構築されているが,音声通話もIPベースのネットワークに変えるための議論が3GPP2で進んでいる。このような音声通話(回線交換)網を含む移動体通信システム全体をIPベースにすることをALL IP化と呼んでいる(図8[拡大表示])。

 具体的には以下の三つの技術を導入することが考えられている。

 一つ目が,旧端末も使えるようにするため,従来の回線交換網を旧端末ドメインとして階層化し,この中継網をIP化する。IPとISDN/公衆電話網は,メディア変換ゲートウェイで変換する。

 二つ目がパケットデータ網をマルチメディアドメインにすること。音声通話を転送するためには,SIP(Session Initiation Protocol)を基本とする呼制御方式を導入する。

 三つ目がQoSやヘッダー圧縮技術を導入すること。品質制御・管理サーバーを用いて,リアルタイム性の高いトラフィックを転送する。この場合のQoSは端末間(End-to-End)でのサービス品質を保証すること。つまり無線区間のQoSのみならず,IPバックボーン内でのQoSも含んでいる。

 ALL IP化は音声もパケットも同一IPバックボーンを中継させることでコスト削減を狙うのが目的だ。まさに現在,固定網においてIP電話の台頭として見られている発展方向と同じといえる。

渡辺 文夫 Fumio Watanabe

KDDI au技術本部 ワイヤレスブロードバンド開発部長。1980年東京工業大学大学院博士課程了,同年KDD入社。研究所において,アンテナ,衛星通信システム,移動体通信システム等の研究開発を担当。2001年よりKDDI 無線アクセス技術部長として,CDMA2000 1Xおよび1xEV-DOを含むauの無線インフラのシステム開発,導入を統括。2004年4月より現職にて次世代ワイヤレスブロードバンド通信システムの導入検討・開発の指揮を執っている。モバイルITフォーラムシステム専門委員長。ユビキタスネットワーキングフォーラムどこでもNW専門委員長。工学博士。

松田 浩路 Hiromichi Matsuda

KDDI au商品企画本部 プロダクト統括部 商品戦略グループ 課長補佐。 1996年京都大学大学院修士課程了,同年KDD入社。衛星通信システムの開発を担当し, 特にTCP伝送の最適化やIPマルチキャストに注力。ITU-R標準化活動にも従事。 2001年から1xEV-DOのシステム検証および上位レイヤーとの親和性を重視した品質 検証を手がけた後、現在はau端末の商品企画を担当している。