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類似の応用規約が複数存在する

表●Web サービスの上位規約の例
信頼性やセキュリティなど,企業間取引のような重要な処理に必須となる要件を満たすための規約が検討されている。同一の機能に関する複数の規約が存在する。多くの場合それらは棲み分けができているが,規定範囲が重複しているものもある。WS- Reliability とWS- ReliableMessaging がその一例である。

 次の課題はWebサービスを実際に応用するときに問題となる。企業間取引のような重要な処理をWebサービスで実現する場合,二つのシステムが単に接続できればいいわけではない。セキュリティ,高信頼性メッセージング,トランザクションなどの高度な処理を保証しなければならない。これらに関して,SOAPを使った応用規約が提案されている([拡大表示])。ただ,同じ範囲の処理に関して異なる規約が複数存在する場合がある。

 例えば,メッセージを確実に届けることを保証するためのWS-Reliabilityという規約がある。WS-Reliabilityでは,大きく三つの機能を定めている。(1)送達確認メッセージが返ってこない場合に再送することで,SOAPメッセージが確実に相手に届くことを保証する「送達保証」,(2)再送の結果同じメッセージが二重に相手に届くことを防止する「重複排除」,(3)送信側が同じ相手に送った複数のメッセージが送った順に届くことを保証する「順序保証」,である。これと同様のものに,WS-ReliableMessagingが存在する。両者に細かな違いはあるが,規定する範囲はほぼ同等である。

 より多くの企業が安心してWebサービスを活用するには,規約は一つであってほしい。またその際には,オープンな場で広く意見を集めて議論することが望ましい。規約のうちいくつかはOASISなどの標準化団体に提出されているが,現状では提出されていない規約も多い。

基盤技術はライセンス・フリーに

 三つ目は,Webサービスを実装する際に必要な技術のライセンスに関する課題である。Webサービス関連の規約を実装する際,特定の会社の特許に抵触してしまう危険性が残っている。

 一般に特許をこうした規約に盛り込む際の考え方として,ライセンス条件にはRoyalty-Free(RF)と Reasonable-And-Non-Discriminatory(RAND)という二つがある。RFはその規約を実装する場合に必要な特許の使用料を無料とするもので,W3Cなどが採用しているポリシーだ。一方のRANDは「妥当かつ非差別的に」という意味で,利用については誰にでも分け隔てなく許諾する。ただしその利用に当たってはライセンス料を課すことがあるというものである。ISO/IECがこの方針を採っている。Webサービスに関する規約を見ると,RFである場合は明記される。多くが,ライセンス条件に関する明確な記述を盛り込んでいない。

 W3CやOASISなどの標準化団体に提出されている規約は,ほとんどがRFである。SOAPやWSDLのようなWebサービスの根幹となる規約を実装する際に,ライセンス料の心配をする必要はない。ただ,応用規約の中にはRFでないものも多く存在する。それらはRANDであるか,ライセンス条件を明らかにしていない。例えばWS-ReliabilityやWS-CAFはRFで公開されている。これに対してWS-ReliableMessagingやWS-Federationにはライセンス条件が明記されていない。

 筆者は,Webサービスの実装に当たって必須となる技術はできる限りRFで公開されるべきだと考える。実装者の不安を取り除くためだ。公開されている仕様のどの部分に特許技術が必要なのかは,あらかじめ明らかになっていない。ごく基本的な規約の中にも,どこかの企業が特許を申請中の技術が存在する可能性がないとは言えない。また,これまで特にライセンス料を請求していなかった企業が突如方針を変更することもあり得る。

 標準規約は,広く普及してこそ技術の発展に寄与する。そのためには,皆が公平かつ平等に利用できる方が望ましい。利用に関する制約は少なければ少ないほど良い。

おわりに

 Webサービス技術は着実に発展してきている。実際にシステムを構築した例も増えてきた。今後は,次々と策定される上位規約を利用した高度なシステムも出てくるだろう。そのためには,上位規約の統一が必要不可欠である。

 また上位規約の実装が進むと,相互接続性の確保もますます重要な課題となってくるであろう。標準化活動に携わる者として,さらなる努力してゆきたいと考えている。

沼田 利典 Toshinori Numata

富士通 ソフトウェア事業本部 開発企画統括部 第一計画部
1984年,明石工業高等専門学校(電気工学科)卒業後,富士通に入社。POSIX,UI,OSF,The Open Group等でUNIXの国際化,地域化,日本語処理に関連した標準化活動に従事。Webサービス関連では,WS-I Basic Profile WG及びJapan SIGのメンバーとして活動中。