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図1●光ディスクの容量
現在1層当たりの記憶容量はBlu-ray Discの27Gバイトが最上位。再生原理自体はCD-ROMと変わらない。しかし現行技術の延長では100Gバイトを超えるのは難しい。これを一気に200G~1Tバイト超に引き上げる「ホログラム記録」および「近接場光記録」の開発が進んでいる。
図2●現行の光ディスクを大容量化する主な手法
レーザーやレンズの工夫によってディスクの記録マークを小さくしたり,記録層を多層化する。
図3●レーザー光の波長とレンズの開口数(NA)の関係
ビームの集光範囲(ビーム・スポット径)を小さくするには,レーザーの波長を短くするかレンズの集光能力を上げる。
図4●ホログラム記録の原理
記録時に記録データを画像として符号化した「情報光」に「参照光」と呼ぶ別光源を干渉させ,その干渉縞をフォトポリマーなどの記録媒体に3次元記録する。再生時には,参照光のみを記録媒体に照射するだけで記録画像を読み出せる。

 光ディスクはCDの650M~700Mバイトから,DVDの4.7G~9.4Gバイトへと進化し,今後普及するデジタル・ハイビジョン・テレビ(HDTV)を想定した次期光ディスク「Blu-ray Disc」や「HD DVD」は片面2層で前者が50Gバイト,後者が40Gバイトと発展してきた。

 だが,その先は見えていない。ストレージ・デバイスの本流とも言えるハードディスクは,記録密度を高めて1Tバイト超の容量まで到達する見通しがついている*1。光ディスクも目指す容量は同水準だが,Blu-ray DiscやHD DVDを大きく超える技術はまだ確立していない。光ディスクの現行方式は,理論的な限界を迎えている。

 光ディスクはレーザー光の熱によって「記録マーク」を作成してきた。この記録マークを小さくすれば容量は増える。つまりレーザー光をレンズで集光する能力を高くして,なるべく小さな記録用スポットを作れればよいわけだ。しかしこの路線を続けられるのは1層当たり100Gバイトまで(図1[拡大表示])。その壁を越えTバイト級を実現するには新しい光技術が必要になる。

迫る光の「回折限界」

 現在の光ディスクは,記録層に反射率を変えられる材料を使い,その反射率の違いによって「0」と「1」を識別する。例えばCD-RWやDVD-RWといった書き換え可能な光ディスクでは,温度によって結晶状態が変わる相変化材料を記録層に使う。記録層を多層化したり,記録マークを小さくするなど,この基本構造に改良を加えることで容量を上げてきた(図2[拡大表示])。

 記録マークはレーザー光の波長が短いほど小さくできる。Blu-ray DiscやHD DVDは,レーザー光源を赤色レーザー(波長は650nm)から青紫色レーザー(同405nm)に変えることで1層当たり20Gバイトを超える容量を実現した。DVD-ROMでは記録層を2層にして容量を倍に増やした。DVD-RAMでは,記録マークの両端で起きる反射率の変化でビットを判別する「マークエッジ記録」によって記録密度を高めた。

 しかし記録マークの大きさはこれ以上小さくできない。記録マークの大きさは,ビームの集光範囲(ビーム・スポット径)で決まる(図3[拡大表示])。ビーム・スポット径の大きさを決めるのはレンズの集光能力と光の波長。焦点では光が「点」になるように見えるが,実際には光の波長程度の広がりを持つ「面」になる。これが光の「回折限界」だ。ビーム・スポット径の中心部のみ高温となって記録マークを形成するので,記録マークの限界はビーム・スポット径の約半分ということになる。現時点で最も波長が短い半導体レーザーである青紫色レーザーで0.2μm前後が限界である。さらに波長が短いレーザー光源はあるが,小型化のめどが立っていない*2

ホログラム記録でテラバイトを目指す

 回折限界が存在する以上,これまでと違う手法で記録マークを作成する必要がある。一気にTバイト台を実現する可能性を秘めている技術は二つ。ホログラム記録と近接場光記録だ。ホログラム記録は1960年代から研究されていたが,ここにきて実用化のめどが立った。早ければ2006年にも200G~1Tバイト容量の製品が登場する。近接場光記録は光をあてた物質の周囲に発生する微少な光の膜「近接場光」を使って,極小のスポットを作り出して記録する方式。実用化は2010年前後の見込み。現在,複数の記録原理が検討されている。

 ホログラムに情報を保存するという考え方は,立体画像を記録して投射するホログラムの原理を応用したもの(43ページの別掲記事「ホログラムを捨てた立体ディスプレイ」)。ホログラム記録の原理は1963年に米Polaroid社によって提案された。記録時に記録データを2次元の画像として符号化した「情報光」に,「参照光」と呼ぶ別光源を干渉させる。そのとき生じる干渉縞をフォトポリマーなどの透明な媒体に記録する(次ページの図4[拡大表示])。再生時には参照光のみを記録媒体に照射すると,干渉縞によって記録した情報光を復元できる。一つの干渉縞から画像のピクセル数に応じたデータを取り出せるので,テラバイト級のストレージを実現できる。

【おわびと訂正】記事掲載当初,「ホログラムの原理は1963年に米Polaroid社によって提案された」としましたが,正しくは「ホログラム記録の原理は(以下同)」でした。ホログラムの原理は1948年に当時British Thomson-Houston研究所に籍を置いていたDennis Gabor博士が考案したものです。おわびして訂正します。