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視点2. ネットワークの財産はユーザー

 1980年代,電話網上で通話,FAX,データ通信,映像伝送を統合する構想があった。いわゆるISDN構想である。しかし,現在の状況を見ると,インターネットがまさにその役目を果たす存在になっている。一方,電話網は衰退傾向にある。

図2●電話とIPアドレスの構造
ツリー構造になっており,非常に似ている。

 一般に意識されていないが,インターネットのアドレス体系と,電話のアドレス体系はそれほど変わるものではない(図2[拡大表示])。IPアドレスも電話番号も一意に決まるツリー構造でできている。インターネットの成功の理由として,パケット交換と回線交換という技術の違いを指摘する声もあるが,これは的を射ていない。今のイーサネット・ネットワークではレイヤー2スイッチが導入され,ほとんど回線交換システムと変わらない。別に,電話網が今のインターネットになっていてもおかしくないのである。

 インターネットが勝った理由を筆者は,「人のみならずコンピュータをもユーザーと定義した着眼点」にあると考えている。意図したかは別として,多くのコンピュータにIPアドレスが無償もしくは無償に近い形で割り当てられ,このアドレス体系がコンピュータ通信の標準になった。一方の電話番号は,新しい番号を得るためだけに,金銭的負担が必要だった。例えば,日本では7万円以上の施設負担金を支払わなければならなかった。

 何が言いたいのかといえば,電話会社が電話番号の割り当てにお金を取るというビジネスをやり続けたがゆえに,コンピュータという新しい“ユーザー”をつかみ損ねたということだ。ネットワークの財産は,それを使うエンドユーザーが多数いることであり,インフラ会社の使命はそこに向けたサービスを提供することである。インターネットは,アドレスの無償配布によってコンピュータをネットワークにまず取り込み,そこで新しい付加価値を提供していくことで今の地位を築いた。もし,電話会社がただ同然の値段でコンピュータ用の電話番号を配り,積極的にコンピュータを電話網に取り込んでおけば,世界は変わっていたかもしれない。

 このように,ネットワークの価値はユーザー数ということを肝に銘じ,スタート時に一時的に損をこうむっても最終的に得を取る考え方が重要である。