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視点6. 組み合わせの“妙”を考えよう

 万能の技術は無能である――。このことは技術者の間では通説となっており,筆者もこの説を支持している。筆者の記憶をたどっても,技術主導で登場した万能製品や多機能製品が成功した例は存在しない。

 ただし,(1)ある特定の目的で開発した技術に必要に応じて付加された技術や,?最終的に実現されるサービスに共通項を持つ技術の融合には価値がある。例えば,携帯電話のメールサービスは(1)の成功例である。携帯電話はそもそも通話のための装置だったが,メールサービスによってページャー的な要素を取り込んだことでユーザーの使い勝手を高めた。(2)の例にはプリンタ複合機が挙げられる。FAX,スキャナ,プリンタ,コピーという紙と電子データの変換という共通項をうまくパッケージ化したところに勝因がある。今後を考えれば,無線LANを使ったVoIPとPHS,携帯電話をシームレスにつなぐような統合は,(2)に該当するために,成功する可能性が高いと思う。

 マスコミや研究者の間では今,ソフトウェア無線が注目を集めている。ソフトウェア無線は研究対象としては面白いが,ビジネス的には未来がない気がしてならない。ソフトウェア無線とは組み込み用プロセッサを搭載し,ソフトウェアの書き換えだけで異なる無線方式を実現させるシステムである。しかし,現在のブロードバンドで要求される通信速度を実現するためには,現在市販されているプロセッサの1桁ないし2桁以上の高速動作求められる。

 またコストの観点からも,高速動作のプロセッサを搭載しソフトウェアで実現するよりは,それぞれのシステムに対応した複数個の無線トランシーバを統合したチップを使う方が断然安い。

 技術者としては,「何でもできる技術」と聞いた瞬間,疑いの目を向けるべきだ。