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写真1●試走会と直前の追い込み
大会の2週間前に開催された試走会で,金沢工業大学の「夢考房.NET」チームはコース上の緑の部分を黒線と認識するなど,動作に不安定さが見られた(右上)。一方NECソフトウェア北陸の「ムンムン」チームは,割り箸で作られたでこぼこ道(オフロード)も軽々と越え,昨年の優勝タイムを上回る走りを見せた(右下)。大会の1週間前には,「加賀百万石」チームも交えて夢考房に集合(左下)。最後の追い込みに熱が入った。
図●ムンムンチームのモデル図の一部
カーブ,坂道などコースの形状によって走り方を変えるチームが多い中で,ムンムンはコース形状にとらわれず,舵を切る角度(操舵角)に応じて速度を制御する。舵を切る角度が小さく,白と黒を交互に検知しているときは「エッジ」なので高速に走る。一定時間以上連続で同色を検知すると舵を切る角度は大きくなり,「アラート」や「ライン中央」に移る。具体的には,カーブや坂道などでコースを外れそうになったときにこの状態になる。このときは速度を落として転倒を防ぐ。シンプルな走行戦略がきちんとモデル化されていたため,審査員から評価された。
 「良いモデルは高性能か」─この難題に答えを出すことを一つのテーマにした「ETソフトウェアデザインロボコン(ETロボコン)」が,7月2~3日に開催された。全国各地から集まった48チームが,自作ソフトを組み込んだロボットの走行タイムと,ソフトの設計情報であるモデルの優劣を競った。

 初日はロボットの走行タイムを競う競技会。48チーム中,無事に完走できたのは16チーム。会場のガラス窓から差し込む光に多くのチームが悩まされた。ロボットは光センサーの値を頼りに黒いラインを識別して走る。このため,コース上に当たる光の加減でセンサーの値が左右される。適切にコースを判別できず,コースアウトや障害物への激突が相次いだ。

 そんな中,昨年の優勝記録を上回る好タイムで優勝したのが「加賀百万石」。石川県から個人参加した初出場チームだ。確実にコースに沿いながら高速で一気に走り抜けた。2位には8秒差で「FF宮ノ台」(東芝情報システム)が入った。「夢考房.NET」も8位に入賞した。

 2日目はモデルの審査発表。優秀モデルは5チームで,どれも競技会では完走できなかった。モデルと性能の相関は,ついに確認できずじまいだった。

 この結果を受けて審査員から導き出された結論は「“技”とモデルのバランスが大事」というもの。現場で培われてきた組み込み開発ならではの技は,モデル化できないが性能向上には欠かせない。それに加えて,ソフトウェアを論理的に整理し,正しく保守するためにはモデルが必須になる。両者をすり合わせバランスを取ることが,今後の組み込みソフト開発に必要と言えそうだ。

八木 玲子