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予想外の付加価値を提供

 筆者は,Webサービスという言葉は二つの部分,「Web」と「サービス」に分割できると考えている。「Web」の部分が意味するのは,インターネット・フレンドリな技術である。HTTP,XML,SOAP,WSDLなどの技術を利用して,これまでには考えられなかった何かを実現するという意味がある。一方,「サービス」の部分は字義のとおりである。人の役に立つ,便利なサービスをインターネット・フレンドリな技術で提供すると,それを利用した新たなサービスが生まれる可能性がある。

 例えばAmazon Webサービスには,世界中のAmazonにおける商品のカタログとその付随情報(購入者のレビューなど)にアクセスできる「E-Commerce Service」や,Amazon.comの関連会社である米Alexa Internet社がWebクローラーを使って収集しているWebページに関する膨大な(40億ページ,100Tバイト以上)データにアクセスできる「Alexa Web Information Service」などがある。Amazonと同規模のカタログ情報を一から自力で集めるのは容易なことではないし,Alexaと同じデータを収集し,日々更新するのも,これから新たに始めるのはなかなか難しいだろう。しかしこれらがWebサービスとして公開されていれば,それを利用してしまえばよいのである。

画面5●A9.com
「Java」というキーワードで検索したところ。キーワードを含むWebページや関連する画像,映画などの情報が表示される。

 「A9.com」という検索サイトで「tom cruise」を検索すると,多様な検索の結果が返される。最も一般的なWebページの検索は,よく見るとGoogleの検索結果を借用している。それぞれの検索結果についている「Site Info」ボタンにマウスをあてると,Alexaによるそのページのデータがポップアップ表示される。同じページには,Amazon.comで書籍を検索した結果や,「IMDB .com」での映画データベース検索,Googleでのイメージ検索,「Guru.net」でのテキスト検索といった結果も示されている(画面5[拡大表示])。

 A9.comは,これらさまざまなサイトの機能を利用しつつ,「History(検索キーワードを記憶しておく機能)」「Bookmarks(Webページのブックマーク)」「Discover(Historyを基にWebページを推薦する機能)」「Diary(Webページについてメモしておく機能)」などの独自のサービスを付加している。これまでのように,自社で収集した商品カタログを自社固有の用途にのみ利用していたり,自社が持っている検索エンジンを自社のインタフェースでしか利用できないようにしていたなら,A9.comのような「付加価値サイト」の出現はあり得なかった。A9.comのようなサイトを作るには,商品カタログも,映画データベースも,Webページの統計データも,すべて自分で用意しなければならなかった。

 インターネット・フレンドリ,つまり誰もが簡単に利用できる技術を通して,有用なサービスをプログラムから利用できるようになれば,サービス・プロバイダが予想もしなかったような付加価値を持つ新しいサービスが生まれる可能性がある。ユーザーはより便利な機能を,サービス・プロバイダはサービスの利用に伴う対価を,それぞれ手にできるようになる。これこそが,かつてインターネット上で一般のユーザーによる商取引が可能になって以来の,インターネットで実現される革新である。

 Webサービスは革新を実現するための中核技術になろうとしている。「いわゆるWebサービス」が撒き散らすマーケティング・メッセージに気をとられず,実際に必要とされているものを実現する手法を考えれば,答えは既に足元で力強く芽吹いているのである。


吉松 史彰 Fumiaki Yoshimatsu

アマゾン ジャパン Amazon Webサービステクニカル・エバンジェリスト
XMLやWebサービス技術,とりわけAmazon Webサービスを普及させ,Amazon Webサービスの開発者コミュニティを盛り上げるために活動している。アマゾンジャパン入社以前から,COM,.NET,XMLやWebサービスなどの分散システム技術の調査研究,およびそれらを日本の開発者コミュニティに紹介する活動を一貫して続けている。1998年以来,毎年「Microsoft Tech・Ed」などでシステム構築技術に関する講演を行っている技術解説のプロフェッショナル。書籍や雑誌,Webサイトなどでの技術解説の執筆,講演多数。