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電力線がアンテナとなり電磁波を放射

 二つ目の漏洩電磁波への対策は,実用化に当たって最も重要だ。漏洩電磁波は,伝送路として使用される電源線が,アンテナとして機能してしまうことが問題を深刻にしている。伝送路を流れる電流が周期的に変化すると,電磁波が空中へ放射される。伝送路が波長の2分の1や4分の1などの長さだと共振するため,アンテナとなって効率よく電磁波を放射する。2M~30MHzの場合は波長が10m~150mとなり,家屋に敷設されている電力線はちょうどアンテナになりやすい長さと考えられる。

 PLCの場合,漏洩電磁波はモデムと電力線の両方から発生する。モデムでは,モデム内部のスイッチング電源やデジタル回路で発生したノイズの低周波成分が電力線に伝導ノイズとして現れ,高周波成分は基板の配線パターンなどがアンテナとなり漏洩電磁波として空間に放射される。

 電力線で問題となるのは,信号用の電流とは別に一方向に流れる電流(コモンモード電流)が発生する場合だ。コモンモード電流には大きく2種類ある。上述したPLCモデムから電源線に伝導するノイズ電流と,電力線の特性が悪いことでPLC信号にコモンモード成分が発生しノイズ源になる電流である。特に後者の電流が漏洩電磁波に大きく影響する。

ノイズレベルは電力線の特性に依存する

図4●ケーブルに流れる2種類の電流
信号を送信する場合,伝送路の平衡がとれていると,「行き」と「戻り」という等しい大きさの逆向き電流が流れる。これをディファレンシャル・モード電流と呼ぶ。ところが電力線はもともと通信用の線ではないため,伝送路としては平衡がとれていない(平衡度が悪い)。このため,二つの線を流れる電流の大きさや位相が異なり,一方向にだけ電流が流れる。これをコモンモード電流と呼ぶ。
図5●ノイズの種類と対策
PLCのノイズは,PLCモデムから放射されるノイズと,PLCモデムから電力線に伝導ノイズが流れることで電力線がアンテナになって発生する放射ノイズがある。両方のノイズを十分なレベルにまで低減させなければならない。

 ここで問題となる電力線の特性は平衡度である。平衡度とは,2本の線の「行き」と「戻り」が電気的に同じである度合いのこと。電力線は2本の平行線から成り,1本の信号を行きとすると,もう1本には逆向きの信号が流れる(図4[拡大表示])。このときに流れる電流をディファレンシャル・モード電流と呼ぶ。もし2本の電力線の平衡がとれていれば(平衡度が高い場合),2本の線には大きさが等しい逆向きの電流が流れる。「行き」と「戻り」が等しい大きさの電流であれば,線上に発生する磁界が打ち消し合うので漏洩電磁波はほとんど生じない。

 ところが実際は,2本の線の平衡がとれていないことが多い。つまり平衡度が悪いため,大きさが異なる電流が流れる。すると大きい電流が流れる方に向かって,2本の線に電流が流れているように見える。この電流がコモンモード電流である。平衡度はケーブル構造だけでなく,電力線の接地方法や接続されている電機製品の平衡度に強く依存する。

 つまりノイズ源は大きく三つに分けられる(図5[拡大表示])。これらのノイズを徹底的に排除するには,PLCモデムだけでなく電力線にも対策が必要だ。PLCモデムに対しては,内部回路で発生した高周波成分によるノイズが直接空間へ放射される量を抑えるため,配線パターンを工夫する。次に伝導ノイズが漏れないようにポートの前に部品を挿入する。これはコモンモード・チョークと呼ばれ,ディファレンシャル・モード電流のみを通過させコモンモード電流をカットする。

 いくらモデム側に対策を施しても,電力線の平衡度が悪ければ漏洩電磁波は発生する。この特性は敷設してある建物によって大きく変わる可能性がある。つまり電力線の交換や,電力線自体へのシールド対策が必要になる。だがこの作業は壁内の線を入れ替えたり,壁材にシールド性の高い金属成分を混ぜるなど,大がかりになりがちだ。低コストで済む有効な手段は今のところ存在しない。

 このような事情により,現在はモデムへの対策に頼るしかない。PLC-Jによると,ノイズ対策を施したモデムを使って測定した漏洩電界強度は,目安に掲げた44dBμV/mよりも低く抑えられているという。