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ノベルとマイクロソフトが2000年1月から2月にかけ,相次いで新しいディレクトリ・サービス製品の提供を始める。いずれも大規模ネットワーク環境でユーザー情報やネットワーク資源を効率的に管理できるようにする。ディレクトリ・サービスで管理するユーザー情報を,ほかのアプリケーションで利用するための機能も充実している。マイクロソフト製品はWindows2000環境に,ノベル製品はWindows NTやNetWareの混在環境に向く。

表1●マイクロソフト「Active Directory」とノベル「NDS Corporate Edition」の主な機能
 ディレクトリ・サービスの有力2製品が相次いで登場する。まずノベルが1月17日に,NDS(Novell Directory Services)の新版である「NDS Corporate Edition」を出荷。2月18日には,マイクロソフトがWindows NTの後継OSである「Windows2000」の標準機能として,ディレクトリ・サービス「Active Directory」の提供を開始する(表1[拡大表示])。これまでディレクトリ・サービスの分野では,6年前にNDSの初版を投入したノベルが大きく先行してきた。マイクロソフトは最新OSであるWindows2000の強みを生かして,ノベルに挑む。

大規模ネットワークを想定

 NDSとActive Directoryはいずれも,企業内ネットワークにつながったコンピュータを利用しているユーザーの情報や,ネットワーク上にあるサーバーやプリンタ,アプリケーションといった“ネットワーク資源”に関する情報を効率的に管理できる。本社・部門・部・課といった組織形態に合わせ,ユーザーやネットワーク資源を階層構造で一元管理し,ユーザーのアクセス権限などを容易に設定できるという利点がある(図1[拡大表示])。

 例えば,部や課などの組織単位でネットワーク資源のアクセス権限を設定すれば,その組織に所属するすべてのユーザーは設定に従ってアクセスが許されたネットワーク資源だけを利用できる。組織変更や人事異動があっても,管理画面上でのマウス操作などによって,容易に設定内容を変更できる。

 両製品は,地理的に離れた複数の拠点から成る大規模ネットワークを想定している点も共通している。例えば,ユーザーやネットワーク資源に関する管理情報の複製機能だ。ディレクトリ・サービスを搭載したサーバーを複数の拠点に配置し,各拠点の管理情報の変更内容をほかのディレクトリ・サービスの管理情報に反映できる。ユーザーはネットワーク資源を利用するたびに,遠隔地にあるディレクトリ・サービスにアクセスしなくてもすむ。

NetWareなしでNDSを利用可能に

図1●Active Directoryの管理画面の例。実際の組織構造に合ったディレクトリを作成し,各部門に所属するユーザーを登録する。各部門に対してセキュリティ・レベルやネットワーク資源のアクセス権限などを設定できる
 NDS Corporate Editionはノベルが1999年7月に出荷した「NDS8」の次期版だが,機能面での変更はほとんどない。最大の違いは動作環境である。NetWare 5に加えて,Windows NTとSolarisでも動くようにした。さらに今回初めて,NetWareサーバーがなくても,Windows NTサーバーやSolarisサーバーで構成するネットワークのユーザーや資源を管理できるようにした。

 ノベルはNDS8の前にも,Windows NTとSolarisで動く「NDS for NT」,「NDS for Solaris」を提供していた。しかし,Windows NTサーバーやSolarisサーバーだけで構成するネットワークの資源を管理する場合でも,最低1台のNetWareサーバーが必要だった。管理情報の複製がうまくいかないなどの理由で,複数のNDSの管理情報が一致していない場合に,これを修復する機能がNetWareでしか動かなかったからである。

 一方,Active Directoryはマイクロソフト初のディレクトリ・サービスである。従来のWindows NTのネットワークでは,複数のWindows NTサーバーやプリンタなどのネットワーク資源をまとめて「ドメイン」と呼ぶグループ(以下,NTドメイン)を構成し,これを単位にしてユーザーのアクセス権限などを設定する必要があった。一つのNTドメインの中では,ユーザーをグループ化してアクセス権限を設定するなど,管理を効率化するための機能が用意されているが,異なるNTドメインのネットワーク資源にアクセスするためにはNTドメイン同士の「信頼関係」を定義するといった面倒な作業が必要になる。そのため,大規模なネットワーク環境でユーザーやネットワーク資源を一元管理することは極めて難しかった。

NTドメインからの移行がカギ

図2●NDSの管理画面の例。別売のミドルウエアを使えば,ノーツ/ドミノの設定もできる。例えば,同じグループに所属するユーザー同士が同期させるスケジュール情報などのデータについて定義できる
 NDSは管理情報として,既存のNTドメインやSolarisに登録されたユーザー・アカウントを取り込める。ところが,Active Directoryは,これと同じことができない。したがって,NetWareやWindows NT,Solarisが混在するネットワーク環境では,NDSを利用するのが妥当だろう。Active Directoryは,Windows2000だけで構成するネットワーク環境に向く。

 多くの企業の社内にはすでに多数のNTドメインが存在しており,しかもNTドメインの単位が組織に対応していないことも多い。マイクロソフトによれば「多くのNTドメインをActive Directoryの環境に一気に移行するのは手間がかかる」(熊谷恒治ビジネスソリューションズ事業部デベロッパーマーケティング統括部ソリューションテクノロジー部担当課長テクニカルエバンジェリスト)。

 Active Directoryでは,管理画面に表示する階層構造の一部としてNTドメインを扱うことはできる。これにより,管理者はネットワーク上にどのようなNTドメインがあるかといった基本的な情報は把握できるが,Active Directoryの管理画面からNTドメインの設定内容を直接参照したり変更することはできない。NTドメインの環境からActive Directoryの環境に徐々に移行するための暫定的な措置と考えるべきだろう。

 マイクロソフトはWindows NTからWindows2000への移行を促進するため,NTドメインの設定内容を読み取り,Active Direcotoryの管理情報として設定し直すためのツール「Directory Migration Tool」を3月にも出荷する。これを使えば「NTドメインからActive Directoryへの移行は容易になる」(熊谷テクニカルエバンジェリスト)という。

アプリのユーザー情報と同期

図3●Active Directoryのユーザー情報と,アプリケーションのユーザー情報を同期させる方法。Active Directoryに対応したアプリケーションは,Active Directoryと直接連携してユーザー情報を同期させる。Active Directoryに未対応のアプリケーションは,別売のミドルウエア「Zoomit VIA」を介してActive Directoryと連携し,ユーザー情報を同期させる
 マイクロソフトは,Active Directoryに対応した最初のグループウエア製品「Exchange2000」を5月中には出荷する(図3[拡大表示])。Active DirectoryとExchange2000の一方にユーザー情報を追加すると,もう一方にも同じユーザー情報を自動的に登録できる。「シングル・ログイン」も可能になる。例えば,Active DirectoryにログインするだけでExchange2000を利用できるようになる。

 これらの機能は,次期データベース製品「SQL Server2000」にも持たせる計画だ。同社が2000年春から提供するミドルウエア「Zoomit VIA」を使えば,Active Directoryに未対応のアプリケーションでも同じことができる。

 ノベルもNDSのユーザー情報とNDS未対応のアプリケーションのユーザー情報を同期させたり,シングル・ログインを可能にするミドルウエア「Single Sign-on 1.0」を2月から出荷する。対象製品はERPパッケージ(統合業務パッケージ)の「PeopleSoft」やノーツ/ドミノなど5製品。

 このうちノーツ/ドミノについては,ユーザー情報の同期やシングル・ログインに加えて,NDSの管理画面からノーツ/ドミノの設定までできるようにするミドルウエア「Synchronicity for Notes」(23ページの図2[拡大表示])を1月中に出荷する。

(栗原 雅)