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企業間取引などにXML(エクステンシブル・マークアップ・ランゲージ)を本格利用するための基盤が整い始めた。マイクロソフトなどが,異なるシステム間でXMLデータを容易にやり取りするための仕様「BizTalkフレームワーク」を4月に発表。これに対応したさまざまなソフト製品を,国内ベンダーが年内に投入するからだ。電子商取引(EC)システムにおけるデータ交換の仕組み作りが容易になる。

図1●BizTalk Server2000の役割。複数の企業が注文データなどをやり取りする場合に,企業固有のドキュメントとBizTalkドキュメントを相互に変換できる
 マイクロソフトやボーイングなど欧米の約40社が参加する団体「Biz-Talk.org」は今年4月,「BizTalkフレームワーク」を国内で正式発表した。BizTalkフレームワークは,企業間の電子商取引(EC)などで,XML(エクステンシブル・マークアップ・ランゲージ)形式のデータを容易にやり取りできるようにするための仕様。マイクロソフトはこの発表に合わせて,BizTalkフレームワークの中核ソフト「BizTalk Server2000」を10月にも出荷することを明らかにした。

 BizTalkフレームワークでは,XMLデータの先頭に,データの送信先と送信元を示す“ヘッダ”を付加した「Biz-Talkドキュメント」を,標準フォーマットのデータとして扱う(図1[拡大表示])。商品の注文データなどをXMLで記述し,ヘッダで発注先企業と発注元企業のシステムの所在を記述する,といった使い方を想定しており,企業間ECなどに適用しやすい。BizTalk Serverは,BizTalkドキュメントのヘッダの内容などに基づいて,システム間のデータ交換を仲介する役割を持つ。

 XMLはデータの意味や構造を定義できる利点があるが,企業間ECに利用する場合は,各企業があらかじめ定義を共通化しておく必要がある。各企業の定義が異なる場合は,データ変換の機能を作り込まなければならない。BizTalk Serverは,こうしたXMLの課題も解決する。各企業が扱うXMLデータの定義をBizTalk Serverに登録しておけば,XMLデータの意味と構造を自動変換する機能を備えているからだ。

 BizTalk Serverで処理できるのは,BizTalkドキュメントだけではない。「EDIFACT」といった標準EDI(電子データ交換)の仕様に準拠したデータや,「CSV」形式のデータなどを,Biz-Talkドキュメントと相互に変換できる。これにより「企業が既存システムに手を加えることなく,BizTalk対応のシステムを持つ企業と取引できる」(マイクロソフトの深瀬正人製品マーケティング本部サーバー製品マーケティンググループプロダクトマネジャー)。

BizTalk対応のECソフトが登場へ

表1●BizTalkフレームワーク対応ソフトを提供する主な国内ベンダー。いずれもBizTalkドキュメントを入出力でき,BizTalk Serverと連携する
 BizTalkフレームワークに対応したソフト製品も,2000年内に相次いで登場する(表1[拡大表示])。いずれも,XMLデータを業務に利用しやすくすることを狙ったもので,大塚商会(東京都千代田区)や日立製作所など国内22社が,製品化の意向を表明した。

 分野は主に,EC,ワークフロー管理,帳票作成の三つである。ECとワークフロー管理のソフトは,BizTalkドキュメントを入出力する機能を備え,BizTalk Serverと連携することによって,異なるシステム間のデータ交換を実現する。

 特に注目されるのはEC関連ソフトだ。大塚商会は2000年末にも,中小企業向け業務パッケージ「SMILEα e-Solutions」の企業間EC向け機能を強化し,BizTalkドキュメントを入出力したり,BizTalk Serverと連携できるようにする。「取引に参加する企業が,XML形式の注文データの定義を共通化しなくてもすむことが最大のメリット」(大塚商会の伊藤昇web事業推進部XMLソリューショングループ部長代理)。東芝アドバンストシステム(東京都新宿区)とランセプト(同目黒区)も,それぞれの企業間ECシステム構築ソフトに,同様のBizTalk対応機能を持たせる計画だ。

 ワークフロー管理では,日立製作所が2000年内にも出荷するグループウエア「Groupmax」の機能拡張版で,BizTalkドキュメントを使ったワークフロー管理を可能にする。例えば,「備品を購入する際の申請書をBizTalkドキュメントとして記述し,異なるシステムを運用する部門間で申請書をやり取りするワークフロー管理を実現できる」(藤瀬洋ネットワークソフトウェア本部ネットワークアプリケーションソフト設計部長)。

インターネット取引所にも利点

 このほか,BizTalkドキュメントを生成できるソフト製品も登場する。ジェットフォーム・ジャパン(東京都新宿区)は2000年中に,帳票作成ソフト「FormFlow 99」で作成した帳票データからBizTalkドキュメントを生成できるようにする。XML関連ソフト大手のインフォテリア(東京都目黒区)も,XMLデータの定義・生成ソフト「XML Authority」にBizTalkドキュメント生成機能を追加する。

 企業間ECを仲介するWebサイトであるインターネット取引所もBiz-Talkに対応する。富士ゼロックスは,同社が運営しているオフィス用品調達用のインターネット取引所「x-Plaza(クロスプラザ)」のシステムにBiz-Talk Serverを導入する計画だ。「煩雑になりがちな参加企業間のデータ変換の定義を簡単にする」(軒野仁孝ニュー・ビジネス・センターテクナレッジマネジメントオフィス室長)のが狙い。参加企業にとっては「既存システムに手を加えたり,自らBizTalk Serverを導入することなく,多くの企業との取引に参加できる」(ニュー・ビジネス・センターi-Service開発部ドキュメントサービスグループの菅野透氏)という利点がある。

送信先と送信元はURLなどで指定

図2●BizTalkServer2000のデータ変換機能の設定画面。異なる二つのデータ構造を画面に表示して,それぞれのデータが持つ意味をマウスのドラッグ&ドロップ操作で対応づける。対応関係の定義に,演算ロジックを埋め込むことも可能だ
 ここで,BizTalk Serverによるデータの変換や送受信がどのように行われるのかを少し詳しく見てみよう。43ページ図1をもう一度参照していただきたい。

 BizTalkドキュメント自体も,<biztalk_1>タグで始まる一つのXMLデータである。ヘッダでは,まず送信先を<to>タグで,次に送信元を<from>タグで指定する。具体的には,それぞれのタグの中で,<address>タグにURLやメール・アドレスを記述する。ヘッダに続けて<body>タグに,商品の注文内容などXMLデータの“本体”を記述する。

 送受信するデータがBizTalkドキュメントなのか,標準EDIなど他のフォーマットのドキュメントなのかは,あらかじめBizTalk Serverに登録しておく。同様に,XMLデータのタグの名称や意味,データ構造などを定義したDTD(文書型定義)や,使用する通信プロトコルなども登録する。

 BizTalk Serverは登録された情報に基づいて,例えば送信元企業から受け取ったBizTalkドキュメントに含まれるXMLデータを,送信先企業の定義に従って変換する。さらに,ヘッダの内容に基づいて,変換したXMLデータを含むBizTalkドキュメントを送信先企業に送る。

 BizTalk Serverでは,GUIでデータ変換の定義を登録できる(図2[拡大表示])。データを交換する双方の企業のDTDなどを読み込んでデータ構造を表示し,マウスのドラッグ&ドロップ操作でデータの対応付けを行う。

演算処理を使った変換も可能

 企業A社が既存システムに手を加えることなく,BizTalk対応のシステムを利用している企業B社に商品を発注するケースを考えよう。

 A社は,既存システムで出力した注文データ(図1の例ではCSV形式)に,送信先と送信元の情報(「to,B」と「from,A」)を付加して,BizTalk Serverに渡す。BizTalk Serverは,登録されている定義情報に基づき,<to>タグと<from>タグを使ってBizTalkドキュメントのヘッダを生成する。発注内容についても同様に,B社のシステムが処理できる<製品名>タグや<単価>タグなどを使ってXMLデータを生成する。最後にヘッダとXMLデータから成るBizTalkドキュメントを生成して,B社に送信する。

 A社の注文データに演算処理を加えてから,B社に送信するXMLデータを生成することも可能だ。例えば,A社が注文商品の金額を「価格」と「消費税」という二つの項目に分けて管理している場合,これらを合計した金額を<価格>タグのデータにする,と定義しておけばよい。

(栗原 雅)