東洋情報システムが元気だ。3月にコマツとアプラスの情報システム子会社を相次いで傘下に収めたのに続き,この8月には旧・三洋証券のトレーディング・センターを買い取り,インターネット・データセンター事業への本格参入を宣言した。東洋情報システムの船木隆夫社長は「成長の波に乗るためには,変化への挑戦が欠かせない」と語る。「社員一人当たりの売上高を5割程度増やす」という高い目標の実現には,「既存のやり方の“改善”ではなく,“改革”が必要」と説く。

-“バブルの象徴”として有名だった旧・三洋証券のトレーディング・センター・ビルを買い取って,インターネット・データセンター事業に本格参入するそうですが。

 来年4月までに都内3カ所にインターネット・データセンターを開設します。旧・三洋証券のビルは,そのうちの1カ所です。残りの2カ所は既存のメインフレーム用のアウトソーシング施設を,インターネット・データセンターに改装します。3カ所を合わせた床面積は,3万3000平方メートルと国内最大級になります。これにより,2003年度には,データセンター事業で約300億円の売り上げを目指します。

-インターネット・データセンターは,すでに供給過剰という指摘があります。

 当社は,今ある設備を流用することで,他社よりも早くサービスを提供できます。ビジネスという意味では,このスピードが効いてくると思っています。

データセンター事業はスピード重視

 最近,「いい土地があるから,データセンターを建てませんか」といったお誘いをよくいただくのですが,すべて断っています。変化の激しいこの時代ですから,新たに土地を手当てして,データーセンター用のビルを建てていては,お客様の要求にこたえられません。

 都心近くにある上に,耐震設備も完備している旧・三洋証券ビルを手に入れられたのは,幸運でした。ビルの購入や施設の改装に,30億円超かかりますが,十分に元は取れると考えています。

 これが,同じ金額を費やすのでも,完成が3年後とか,5年後というのでは,ビジネスとして成功するかどうかは,はっきり言ってわかりません。競合他社も続々,データセンター・サービスを始めるでしょうから,数年後には供給過剰になっている可能性もあります。

-今年3月には,コマツやアプラスの情報システム子会社を相次いで傘下に収めました。これもスピード重視の一環ですか。

 いやいや,これは結果として発表が続いただけで,交渉そのものは1年ぐらい前から進めていました。コマツを例にとると,昨年の5~6月に,話し合いを始めました。

-コマツの情報システム子会社を買収した狙いは。

 コマツの情報システム子会社コマツソフトは,当然のことですが,生産管理や制御系の分野で非常に強い。さらにPOS(販売時点情報管理)関連のシステムも早くから手がけていて,流通系の実績も豊富でした。

 一方,当社は,もともとの得意分野である金融向けシステムには自信がありますが,生産とか流通ははっきり言って弱い。そこで,事業の柱をもう一本つくりたいと思い,話しを持ちかけたところ,事業の再編を考えていたコマツさんと思惑が一致したわけです。

 企業というのは常に,新しいことに挑戦して,成長し続けなければなりません。いくらIT業界全体に追い風が吹いているといっても,成長の波に乗る会社と,乗り遅れる会社というのは,当然出てきます。昭和40年代の高度成長期も,そうでした。

 僕はやっぱり波に乗りたいと,社内で常々言っています。インターネット・データセンターへの参入や,情報システム子会社の買収は,そのための方策です。

 もちろん,拡大だけでは会社は成り立たない。会社が伸びているときでも,事業のスクラップ・アンド・ビルドは,積極的に進めていきます。

-情報システム子会社を引き取ってほしいという依頼は,他からも来ているのではないですか。

 ないことはないですね。ただ,こっちにだって,選ぶ権利があるから…。

 取り柄と言ったら,失礼かもしれませんが,先方さんにキラリと光るものがないと,なかなか買収には踏み切れません。ただ人数がいますというだけではつまらないですよ。

“親離れ”できて一人前

 親離れが比較的進んでいることも,コマツソフトを子会社化した理由の一つです。コマツソフトは,ユーザー系インテグレータということになっていますが,コマツ・グループ向けの売り上げは,半分をちょっと割っています。

 コマツソフトは,グループ内の別会社として,活躍してほしいと思っています。コマツソフトを社内に取り込んで,当社の枠の中にガチッとはめてしまったら,コマツソフトの良いところが消えてしまうでしょう。もちろん,人事面での交流や,プロジェクトごとの協力は積極的に進めていきます。

-今,親離れという話がでましたが,東洋情報システムも,一般には三和グループ系と言われています。

 IT業界では,システム・インテグレータを,メーカー系,ユーザー系,独立系と分けますが,当社は独立系と考えています。きちんと一本立ちしています。三和銀行とその直系会社に対する売り上げ比率は,期によって異なりますが,おおむね10%内外です。

 親会社への依存度の高いユーザー系では,いつまでたっても市場の信頼は得られません。ローソンなどと合弁で,EC(電子商取引)向けの物流決済会社「イーコンテクスト」を設立する際に,こんな話がありました。

 ローソンの藤原謙次社長は,当社の売り上げの半分以上が,三和銀行向けと思っていたそうです。それで「うちは10%足らずですよ」と申し上げたらば,「それじゃあ本物ですな」とお誉めの言葉を頂戴しました。

 こんな具合ですから,来年1月1日に,社名から三和グループを示す「東洋」を外し,これまでの略称「ティアイエス(TIS)」を正式社名とすることについても,三和銀行から,いっさいクレームは出ていません。それどころか,「お前のところ,まだ東洋情報システムだったのか」と言われたぐらいです(笑)。

-今後,TISをどういう会社にしていきたいですか。

 去年から,社内でワイワイやりまして,2010年までの長期ビジョンを立てました。そのなかでは,ちょっと恥ずかしいですけど,「世界一のものすごい会社になろう」と言っています。

 そういう長期的な“夢”を念頭において,3年ごとの中期計画で,一歩一歩,目標に向かって,社内を変えていきます。

生産性を5割以上高める

 今年度から始まった中期計画「SEA-Change21」では,社名はもとより,経営手法から企業文化・風土まで,さまざまな点での変革をうたっています。

 SEA-Changeという中期計画の名称も,「著しく大きく良い方向に変化する」ということを意味しています。社内に知恵者がいまして,シェークスピアの戯曲「テンペスト」の一節から,この言葉を探しだしてきてくれました。

-中期計画の数値目標を教えてください。

 まずは社員一人当たりの売上高を5割程度増やしたい。前期は売上高が約780億円で,社員数が2000人弱ですから,だいたい一人当たり4000万円程度です。今でも,業界で高いほうだと思いますが,これを2002年度に6000万円程度に持っていきたいと考えています。

-そのための方策は見つかりましたか。

 一人当たりの売り上げを増やすには,手がけるシステムの品質とか生産性を向上させることが不可欠です。

 そのために,生産改革プロジェクト室という組織を社内に設けました。社内の衆知を集めて,品質や生産性を上げるための方法を考えさせています。

 これは物づくりのやり方を,これまでの“改善”ではなく,“改革”しようとする試みです。プロジェクト室長には,「絶対改革だ。改善では話にならない」と伝えてあります。

 以前銀行におりましたときに,QC活動に携わった経験では,10%や20%の生産性向上は,気合いだけでできますが,油断するとすぐに戻ってしまいます。

 ところが,最低でも50%,できれば70%ぐらい生産性が向上する手立てを講じれば,そのまま定着するんですね。もちろん,そのためには,仕事のやり方を大きく変えないとダメです。

 手段はいろいろとあると思いますよ。部品をもっと活用するとか,ERPパッケージ(統合業務パッケージ)を全面的に使うとか。部分部分でロスがでるでしょうが,全体として絶対そのほうが効率が良いはずです。

(聞き手=本誌副編集長兼編集委員,
星野 友彦)