マイクロソフトがオープン・システムに見切りを付けた。この9月26日に発表したWindows2000最上位版「Datacenter Server」は,認定ハードウエアとセットでしか販売しないことにした。さらに顧客には,障害を事前に予防したり,復旧を迅速化するサービス商品の導入を義務付ける。いずれもミッション・クリティカル・システムが求める信頼性を実現するための措置である。これにより年間ダウン8.76時間以下(稼働率99.9%以上)を最低でも保証する。
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図1●マイクロソフトはWindows2000の最上位版「Datacenter Server」の信頼性を向上させるため,主に三つの対策を講じる。これにより,UNIXサーバー並みの年間ダウン8.76時間以下(稼働率99.9%以上)を保障する |
この9月26日は,マイクロソフトの25年の歴史のなかで,特筆すべき1日となった。この日,日米で同時に正式発表したWindows2000の最上位版「Datacenter Server」で,脱オープン・システムを宣言したのである。
Datacenter Serverは,マイクロソフトにとって長年の悲願である「ミッション・クリティカルな大規模システム分野への進出」(日本法人の阿多親市社長)を果たすための最終兵器である。ミッション・クリティカル・システムが求める水準の信頼性を確保するために,過去の成功を支えてきた「さまざまなメーカーのハードウエアで動き,気軽に導入できる」という売り文句を思い切って封印した。
マイクロソフトも「信頼性の向上は,テクノロジの工夫だけでは達成できない」(米マイクロソフトのブライアン・バレンタイン上級副社長)ことにようやく気づいたのである。
メインフレームの流儀を採用
マイクロソフトは,Datacenter Serverをまるでメインフレーム用OSやハイエンドUNIXのように販売する。「OS単体の価格はいっさい明らかにしない」,「決められたメーカーの認定ハードとセット販売する」,「顧客には必ずサービス商品と一緒に購入してもらう」といった具合である(図1[拡大表示])。
Datacenter Serverは価格面でも,これまでのWindowsとは一線を画する。メーカー各社は,まだDatacenter Serverを組み込んだサーバーの価格や,Datacenter Server向けサービス商品の料金体系を明らかにしていないが,全体では最低数千万円,おそらく多くのシステムは1億円を超えるだろう。
Datacenter Serverは動作対象のハードウエアを極端に絞り込む。実際に周辺機器を接続した状態で実施する入念なテストをパスしたサーバーだけを,対象ハードウエアとして認める。
顧客が認定を受けた機種以外の環境で,Datacenter Serverを動かすことがないように,OS単体ではいっさい販売しない。プラットフォーム選択の自由度は,事実上ハイエンドUNIXサーバーと同じレベルにまで低下した。
さらにマイクロソフトは,障害の発生を予防するサービス商品をDatacenter Serverとセットで販売することを,各サーバー・メーカーに義務付ける。メーカーには,それぞれマイクロソフトと共同で,Datacenter Server専門の障害対策組織を開設してもらい,復旧にかかる時間を短縮する。Datacenter Serverを利用する顧客には,この障害対策組織の利用契約も必ず結んでもらう。
障害の発生を予防したり,迅速な復旧を支援するサービス商品の購入を義務付けることによって,マイクロソフトはDatacenter Serverの顧客を信頼性に対する意識の高い企業に限定しようとしているようだ。Windows2000の前身であるWindows NTでも,サーバー・メーカー各社は同様のサービス商品体系を整備していた。ところが「手軽に導入できる」というイメージが災いして,これらの商品を購入する企業は,それほど多くなかった。 (星野 友彦)