図1●日本郵船の業績推移(決算期は3月)。売上高の伸びは1997年度以降ほぼ横ばい状態だが,経常利益は1998年度以降大幅に伸びている

海上運送業最大手の日本郵船は2000年4月,世界で初めてという「海運業向けのマーケットプレイス」を提供する新会社「いーじゃん」を設立した。いーじゃんは7月に,荷主や船主が商談の情報を登録したり,契約交渉の場を提供するWebサイト「e-JAN」を開設。仲介業務の効率を大幅に向上させることを狙う。ほかにも,2001年度中をメドに,顧客向けに積み荷の配送情報を提供する「総合物流システム」を稼働させる計画だ。

 国内の海運業最大手の日本郵船が,好業績を続けている(図1[拡大表示])。売上高こそほぼ横ばい状態だが,経常利益は1998年度から1999年度にかけて258億円から391億円へと大幅に増加。2000年度の経常利益も450億円に増加する見込みである。

 日本郵船の好調の要因は,船費などの経費削減を進めていることに加え,世界の海運の4割を占めるアジア地域の景気が回復しつつあることが大きい。しかし同社は,海運業界の先行きを決して楽観視していない。海運業界の業績は景気変動に左右されやすいうえ,低価格を売り物にする発展途上国などの新規参入組に対する脅威もある。

 「IT(情報技術)によって既存業務に付加価値を生みだしたり,新規ビジネスへ進出することが急務だ」(服部浩IT戦略グループ長)。

ネット・ビジネスを推進

図2●日本郵船はIT(情報技術)活用戦略として三つの柱を立てている。中でも力を入れているのが,インターネット・ビジネスの推進である

 日本郵船は2000年5月,ITの積極活用やグループ経営の効率化などをうたった,今後3年間の中期経営計画「NYK21」を発表した。同社がNYK21の中で掲げるIT戦略には,三つの柱がある(図2[拡大表示])。

 一つ目が,インターネット・ビジネスの推進である。同社の本業である海運関連の事業をインターネット上で展開することもちろん,「既成の枠を越えた,全く畑違いの新規事業にも積極的に乗り出す」(赤木聰之ネットビジネスチーム長)考えだ。

 第1弾として2000年4月に,貨物船の荷主と船主を仲介する「マーケットプレイス」のWebサイトを運営する新会社,いーじゃん(東京都中央区)を設立。7月にはWebサイト「e-JAN」を開設してサービスを開始した。

 e-JANが対象にするのは,貨物の運送を依頼する荷主が,日本郵船や他の海運会社など貨物船を所有する船主と交渉して船を手配する,「チャータリング」と呼ぶ業務の仲介である。チャータリングの仲介は日本郵船の主要業務の一つだ。e-JANでは,荷主と船主(あるいはそれぞれの代行業者)がそれぞれ希望条件を登録しておき,互いに希望が合えば,契約交渉に入る仕組みだ。

 「海運関連の情報を提供するWebサイトはほかにもある。しかし,チャータリングの契約交渉までできるWebサイトは,おそらく世界初だろう」(いーじゃんの近藤尚武社長)。いーじゃんは契約が成立した企業向けに,契約書類の作成を代行するサービスも有償で提供する。

 ほかにも,「今年2月から5月に社内公募した157件のインターネット・ビジネス案件について,事業化を検討している。年内にも事業化のメドの立った案件を発表したい」(同)。    (玉置 亮太)