年初から絶好調だったパソコンの販売状況に異変が起こっている。月別販売台数が9月に今年最低を記録。期待の新OS「Windows Me」が9月後半に登場したものの,パソコン拡販にあまり貢献しなかった。例年,ボーナス商戦後は販売台数が落ち込む傾向にあるものの,ユーザーの反応はWindows95や同98が発売された当時と比べて大きく違う。大手量販店やメーカーは,「Windows Meのインパクトは小さかった」と漏らしている。

 2000年に入ってから,前年を大幅に上回るペースで成長してきたパソコン市場。9月22日の「Windows Me」発売によって,この勢いはさらに加速するという見方も出ていた。だが,その予測は外れた。

9月の販売実績は今年最低

図1●家電量販店など約3200店舗のPOSデータを基にしたパソコンの月別販売台数の推移
1998年4月~1999年3月の月間平均を100とした場合の相対値を示した。9月は今年に入って最低の値だった。
 まずは図1[拡大表示]を見てほしい。主に個人ユーザー向けのパソコンを販売する家電量販店など3200店舗のPOSデータから,パソコン販売台数(国内のパソコン総販売台数の約2割,店頭販売台数の約4割に相当)を月ごとに集計した調査の結果である。

 一見して,2000年はどの月も,前年を大きく上回っていることが分かる。特に2~3月は,前年比で約90%増と大幅に伸びた。ボーナス商戦まっただ中の7月にも,第2の大きなピークを迎えている。メーカーの証言もこうした傾向を裏付けている。「6月前後の販売台数は,前年比で70~90%も伸びた」(富士通の大谷信雄パーソナル販売推進統括部統括部長代理)。

 しかし,2000年の月別販売台数の推移を見ると,8月以降は一転して大きく下降している。10月16日に発表された最新データによれば,9月の販売台数は今年最低となった。夏のボーナス商戦が終わった直後のこの時期に,販売台数が落ちること自体は珍しくない。「ボーナス商戦の影響で,この時期に在庫を十分に確保できない商品があったかもしれない」(T・ZONE.本店でWindowsデスクトップフロアを担当する,CSK・エレクトロニクスの武田輝氏)という事情もある。だが,今年の販売実績を大きく下回る昨年でさえ,これほど極端な減り方ではなかった。

 そこで浮上したのが,「一般消費者がWindows Me搭載パソコンの発売を待ち,買い控えの現象が起こったのではないか」(デルコンピュータ=神奈川県川崎市=の原田洋次ダイレクト事業部マーケティング本部ブランドマネージャー)という見方だった。Windows95やWindows98が発売された時期にも,同様の現象が起きたからだ。

(坂口 裕一)