2000年12月1日,労働者派遣法が改正され,「紹介目的派遣」が可能になった。情報技術(IT)関連の大手人材派遣会社は,IT関連技術者の紹介目的派遣に取り組む意向を表明している。紹介目的派遣とは,派遣社員が一定期間ある企業に勤務した後に,派遣先の正社員として就職できる仕組み。派遣社員と企業がお互いを十分理解した上で採用できるメリットがある。ただし,新制度には不便な点も多く,人材派遣各社の取り組みにも温度差がある。

 IT関連技術者が不足している状況にあって,技術力のある人材を低コストで手軽に調達する手段として,人材派遣を活用する動きが活発になっている。ただし,派遣社員を受け入れる企業と人材派遣会社が契約を結ぶ形態なので,派遣社員と直接契約することは原則としてできない。

 このような状況が,12月1日に実施された労働者派遣法の改正で大きく変わりそうだ。改正の目玉は,派遣社員を受け入れ企業が正社員や契約社員として採用できる「紹介目的派遣(テンプ・ツー・パーム)」という制度を認めたことだ。テンプ・ツー・パームとは,「テンポラリからパーマネント」という意味である。

 具体的には,企業は正社員あるいは契約社員として採用することを前提に派遣社員に勤務してもらう。最長1年間の派遣期間の後に,企業と派遣社員の双方の合意の下に正式な雇用契約を結ぶ。派遣会社は,派遣社員を送っている間は派遣仲介手数料を受け取り,その後派遣先の正社員として契約する際には紹介手数料を受け取る。

お互いを知り尽くして採用・就職

 派遣社員と採用側企業の双方は,派遣期間を正式雇用に先立つ“試用期間”とみなし,お互いを十分に知った上で雇用契約を結べることになる。つまり,派遣社員と採用側企業は,派遣と紹介/あっせんがそれぞれ持つメリットを享受できる。

 公募や個人による紹介以外の,人材仲介会社など第三者機関による就職支援策としては,派遣と紹介/あっせんが主要な手段だった。しかし,紹介/あっせんを利用する場合は正社員として採用される可能性が高いものの,就職までに時間のかかるケースが多い。

 これに対し,紹介目的派遣を使えば,求職者にとっては派遣勤務と同様にすぐに働き始めることができ,希望すれば紹介を利用した場合と同様に,正社員に転じることができる。採用側の企業にとっては募集や面接など通常の採用プロセスにかかる人手や時間を省きながら,必要な人材だけを正社員として採用できる。

 IT関連技術者派遣に実績のある大手人材派遣会社も,紹介目的派遣の導入にはおおむね積極的な姿勢を見せる。「働く人にとって,労働形態が多様化し選択に幅ができることは喜ばしいこと」(パソナの加藤達哉IT派遣事業部営業担当マネージャー)という姿勢は全社に共通するものだ。

 「システム関連の業務ではチーム・ワークが重要になるので,同僚の性格まで十分理解した上で就職できるメリットは大きい」(パソナソフトバンクの渡辺達也経営企画部次長)。「IT関連技術者の中には面接で自分をアピールするのが苦手な人が多い。1回の面接でなく実務で評価される紹介目的派遣なら,このような人のチャンスが広がる」(インテリジェンスの武林聡専務)。

 採用側の企業にとってのメリットも大きい。「知名度や就業条件が良くない企業でも,実際に働いてもらって良さをわかってもらえると,就職希望者が現れるケースもある」とリクルートスタッフィング(東京都千代田区)の上村裕介IT開発部長は指摘する。

(小林 暢子)