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 「R/3」をバージョンアップするユーザーの間で,システム開発を担当するインテグレータが推奨するハードを用意したにもかかわらず,処理性能が出ないという問題が発生している。SAPジャパンは必要最低限の推奨値を提示しているだけなので,ユーザーは自己責任でハード仕様を見積もる必要がある。

 R/3が日本に本格上陸して5年たち,日本のR/3ユーザーは本格的なバージョンアップ時期を迎えている。この年末年始も,数十社が休暇を利用して更新作業をする見通しだ。ところが,これに先立ち,2000年8月の夏期休業を利用して,R/3のバージョンアップ作業を実施した企業25社のうち,4社がトラブルに見舞われた。その内容は,バージョンアップ後に動かすハード仕様の見積もりを誤り,本番移行後に性能が出ないというものだ。

 財務会計(FI),管理会計(CO)などR/3の主要4モジュールを導入している製造業ユーザーは8月に予定していた移行作業を,11月末にようやく終えた。同社は,開発機上でバージョンアップしたR/3システムを本番機に移行する作業を移行2日前になって,いったん延期した。本番機(UNIX機)のハード仕様が,バージョンアップ後のR/3システムを動かすには不十分なことがわかったからだ。ハードを増強し直したため,当初3000万円を予定していたハード増強費は約1億円になった。

 ユーザー企業がバージョンアップ後に必要なハードの仕様を見積もりきれなかった理由は,R/3の導入作業を委託した日立製作所が提示してきた「ハード仕様の推奨値に幅があり,判断しにくかった」(このユーザー企業の担当者)ことにある。同社は8月に稼働させる予定だったハードの仕様を決める際に,「最小構成では不安だし,最大構成ではコストがかかるので,ちょうど中間のハード構成に決めた」が,日立から「特別なアドバイスはなかった」。

 いったん決めたハード仕様が不十分と指摘してきたのはSAPジャパンである。移行作業の2日前に,SAPジャパンの担当者から,「御社のハード仕様のままでバージョンアップしても,パフォーマンスが出ない。作業を延期したほうがよい」という連絡が入った。

 SAPジャパンは,このユーザー企業がバージョンアップする以前に,複数のインテグレータが手がけた三つ案件で,ハード仕様にまつわるトラブルが起こったことを把握していた。このためバージョンアップを予定するユーザーに注意を呼びかけていた。

 SAPジャパンの神戸信岳サポートサービスディレクターによると,SAPが提示するハード仕様の推奨値は,「R/3本体だけを動かす必要最低限の数値。R/3の周辺に付加して動かすアドオン・ソフトは考慮していないため,あくまでも目安にしかならない」。

 アドオン・ソフトを含むR/3システム全体をバージョンアップする場合に必要なハードの仕様は,「R/3システムの構築を担当したSAPのパートナ企業あるいはユーザー企業が自分で検証して決めていただくしかない」(神戸ディレクター)。

 先のユーザー企業の例では,R/3システムの開発を請け負った日立は,ユーザーのシステム規模や利用形態を勘案した上で,所定のパフォーマンスが出る推奨値を算出し,もっと早くアドバイスすべきだった。

 SAPジャパンは相当数のバージョンアップが予想される年末年始に向けて,いくつかの手を打っている。まず,保守サービスの一環としてユーザーに提供している,R/3システムのリモート診断サービス「ゴーイングライブチェック」を強化した。バージョンアップ後のR/3システムが,ユーザー企業の想定するハード上で正常に動くかどうかをSAPの社内システムで自動診断し,結果を通知する。

 2001年1月からは,日本語で結果を通知する。これまでは英語で通知していた。加えて,「ハード・ベンダーとも協力して,ユーザー企業に対して,より的確なハードの推奨値を出すよう努めていく」(神戸ディレクター)方針だ。

(戸川 尚樹)