PR

 21世紀のシステム体系が明確になった。「Webサービス」と呼ぶ,インターネット上に散在するアプリケーションを必要に応じて組み合わせて,一つのアプリケーションのように実行する。米マイクロソフト,米IBM,米オラクルは2001年に,Webサービスを開発・実行・管理するための製品群を一斉に投入する。

 アプリケーション開発の生産性向上は,コンピュータ産業にとって積年の課題だった。21世紀を迎え,アプリケーション開発手法の新たな方向性が見えてきた。キーワードは,「Webサービス」である。Webサービスとは,Webサイトを通じて利用できるアプリケーション・サービスを指す。

 「Web上に存在するさまざまなアプリケーション・サービスが協調して動作できる環境が数年後には整う。ユーザー企業やアプリケーション・サービス・プロバイダ(ASP)は,アプリケーション・サービスのコンポーネントを,社内外の区別なく自由に利用し,自社のWebサービスを開発できるようになる」。マイクロソフトで企業向けアプリケーション事業を統括するジェフ・レイクス グループ副社長は今後のアプリケーション開発・実行環境をこう描く。同社が2000年6月に提唱し始めた新体系「Microsoft.NET」は,こうした世界を作ろうとするものである。

図●世界第1位から3位のソフトウエア・ベンダーの製品事業責任者
3社とも,「Webサービス」をキーワードに製品の強化を進めている

 IBMとオラクルもWebサービスを中心にした体系を用意しつつある。

 IBMは「Webサービス・アーキテクチャ」という社内呼称のもと,Webサービスを開発・実行・管理する一連の機能の開発を進めている。IBMはすでに「Webサービス・ツールキット」を同社のWebサイトで公開した。今後も開発した機能は公開するとともに,2001年前半にIBMの主要ミドルウエア製品群にWebサービスを扱う機能を実装する。

 オラクルは2000年12月11日に,Webサービスの枠組みを支える「Oracle 9i Dynamic Services」を発表した。すでに出荷しているOracle9i Application SerevrとOracle8iを組み合わせれば,すぐにWebサービスを利用できることから,オラクルは同サービスを「.NOW」と呼んでいる。

 Webサービス中心のアプリケーション開発は,「複数の企業や消費者がインターネットを介して連携する,いわゆるBtoB(企業間電子商取引)やBtoC(消費者向け電子商取引)システムへの適用を想定したもの」(米IBMでソフト事業部門の総責任者を務めるスティーブ・ミルズ上級副社長)である。「こうしたアプリケーションは,処理の流れに応じてダイナミックにアプリケーションを結合する必要がある」とミルズ上級副社長は説明する。

 オラクルで製品マーケティングの総責任者を務めるマーク・ジャービス 上級副社長は,Oracle9i Dynamic Servicesの応用例をこう話す。「あなたがどこかの宅配便会社を利用しているとする。荷物の認識番号しか知らない場合,これまでは自分ですべての宅配便の会社のWebサイトにアクセスして番号を打ち込まなければ,自分の荷物が今どこにあるのかを調べることができなかった。.NOWを利用すれば,自分の代わりにすべてのWebサイトにアクセスして必要な結果を探し出してくれる。また複数のマーケットプレイスに参加する場合にも,.NOWを利用すれば統合的に利用できる」。

Webサービスの基盤作りが進む

 Webサービスを開発し,実行する環境を整備するためには,データベースやWebアプリケーション・サーバーに必要な諸機能を盛り込む必要がある。

 Webサービス同士が交信するための標準プロトコルとしては,マイクロソフトとIBMが共同開発した「SOAP(シンプル・オブジェクト・アクセス・プロトコル)」が有力視されている。SOAPはWebサービス間でデータを受け渡すとともに,データ受け渡し先のWebサービスの処理を起動できる。いわば,インターネット上でRPC(遠隔手続き呼び出し)を可能にする技術である。

 マイクロソフトのレイクス副社長は,「SOAPによって,Webサービスのコンポーネントはゆるやかに結合する。専門家でなくても,容易に各コンポーネントを組み合わせることができる」と話す。

 さらに,Webサービス同士の連携状況を管理する仕組みが必要になる。「あらかじめワークフローを定義しておき,それにしたがって必要な時に,必要なWebサービスを利用できるようにする。この場合,複数のアプリケーション・サービスの実行状況をまとめて管理できる仕組みが必要になる。いわばn対nのトランザクション処理モニタリングだ」(IBMのミルズ上級副社長)。

 もちろん,Webサービスそのものを開発するツールも必要だ。レイクス副社長が「.NETにおいて最も重要なマイルストーン」と位置づける製品が,次期開発ツール「Visual Studio.NET」である。Visual Studio.NETは,Webサービスのコンポーネントを,マウスでドラッグ&ドロップして組み合わせることができる。IBMやオラクルも,同様の開発ツールを準備中だ。

 このほか,必要なWebサービスがどこにあるかを調べる仕組みも欠かせない。一つの試みが,マイクロソフトとIBM,米アリバが準備中のディレクトリ情報提供サイト「UDDIディレクトリ」だ。UDDIはユニバーサル・ディスクリプション・ディスカバリー・アンド・インテグレーションの略。企業がインターネットで提供できるアプリケーション・サービスを登録したり,利用したいサービスを検索する機能を持つ。

IT産業に構造的な変化を迫る

 Webサービスの概念は,コンピュータ産業に構造変化を迫っている。オラクルのジャービス上級副社長は,「ソフトをパッケージとして購入するのではなく,Webサービスとして利用する時代に入った」と語る。

 マイクロソフトのレイクス副社長も,「アプリケーションの開発手法やサービスの提供形態,ビジネスのソリューション(問題解決策)そのものを,ドラスティックに変えるだろう。さらに,ソフト会社やASPのビジネス・チャンスが飛躍的に拡大する」と予測する。

 かつて犬猿の仲だったマイクロソフトとIBMがWebサービス関連では,密接に協力しあっていることも興味深い。両社は,SOAPやUDDIを外部の標準化団体に拠出し,業界標準に育てようとしている。“囲い込みの両横綱”が手を取り合ってオープンな世界を指向している構図と言える。オラクルもSOAPやUDDIをサポートする意向を表明している。

(谷島 宣之,中村 建助,玉置 亮太)