IT(情報技術)企業,あるいはインターネット関連企業で,オフィスを新築したり改築する企業が増えている。それも,ただ単に内装やレイアウトに凝った,美しいだけのオフィスではない。経営トップの理念や,企業戦略を反映させた“主張するオフィス”が最新のトレンドだ。「山積みの資料に囲まれ,キーボードを置くスペースを確保するのがやっと」というIT関連企業のオフィス・イメージを払拭する,最新のオフィスを紹介する。

写真1●アスクルの新社屋は中央に顧客からの電話を受ける「カスタマーリレーションセンター」を配置した。「顧客の声に基づいて全社の業務が進む会社を作りたい」という岩田彰一郎社長の思いがオフィスのレイアウトに反映された

 文具のオンライン販売最大手,アスクルが1月初めに開いた新社屋のお披露目会。招待された顧客やマスコミ関係者は,足を踏み入れた瞬間,息を飲んだ。「一体,これが日本企業のオフィスなのか」。広さ1000坪,天井高5mという規模もさることながら,なんとも斬新なレイアウトで机が配置されていたのだ(写真1)。

 アスクルの岩田彰一郎社長は,こうしたオフィスを作ったことに対し,「“お客様のために進化する”という創業以来の当社の理念を,目に見える形にしたかった。時代の先端を走る企業として,次世代のオフィスの新しい形態を生み出せたと思う」と語る。

経営理念をオフィスに反映する

 好況が続くIT関連やインターネット関連企業の中で,“斬新”,“奇抜”といった形容詞がぴったりはまるオフィスを作る動きが盛んになっている。10年前のバブル期にあったように,いたずらに内装や調度に凝った,ただ美しいだけのオフィスではない。アスクルのように企業理念を形にしたり,機能性を追い求めているのが最新オフィスに共通するトレンドだ。

 例えばコンサルティング会社のプライスウォーターハウスクーパースコンサルタント(東京都渋谷区)は,役員と社員とのコミュニケーションを円滑にするため,役員の個室を撤廃。社長以下の4人の役員はガラス張りのオープンな「役員室」で執務する。Webサイトの開発などを手がけるベンチャー企業のピーエスシー(PSC,東京都港区)は,「社員の働きやすさ」を追求し,間接照明の採用をはじめリラックスして仕事ができるオフィス環境を整えた。

 新しいスタイルのオフィスが増えている背景には,ITの発達が貢献している。内線電話をPHS電話に代替したり,書類を電子ファイル化することによって,従来のオフィスの常識に縛られず,自由な観点でオフィスをデザインできるようになった。

 これに人材獲得や情報共有の促進,生産性の向上といった現実的な狙いが加わる。「オフィスも経営資源の一つ。単に机やいすを並べる場所ではなく,人材や情報システムなどと同じレベルで機能を考えていく必要がある」(PSCの鈴木正之社長)のだ。

(小林 暢子)