世界規模で急増しているソフトウエアの違法コピーやライセンス契約違反。損害額は年間100億ドルを大きく上回る。こうした事態にソフト会社が「待った」をかけ始めた。米マイクロソフトは次期オフィス・ソフトに違法コピー防止の機能を導入。サイボウズは,正規料金を支払わないでグループウエアを使い続けたり,契約数を超えるユーザーが利用する,といった行為を防止する仕組みを作った。業界団体も違法行為の撲滅に向けて動き出した。

 「君,私の家で使うソフト,コピーしてくれたかい?」と上司。「は,はい。これです」と,部下がCD-R(書き込み可能なコンパクト・ディスク)を手渡す。と,そこに現れたアニメの主人公「喪黒福造」が叫ぶ。「ソフトの違法コピーは犯罪ですぞ!」――。

 これは,違法コピー撲滅を呼びかけるテレビCMの一場面だ。米マイクロソフトをはじめ主要ソフト会社で構成する米国の業界団体「ビジネス ソフトウェア アライアンス(BSA)」が,コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)と共同制作した。BSAの日本担当事務局によれば,このCMの放映が始まった今年2月以降,BSAのWebサイトへのアクセスや企業からの問い合わせが急増したという。

企業には最高1億円の罰金

 ソフトの違法コピーやライセンス契約違反が増加の一途をたどっている。BSAの調査によれば,こうしたソフトの不正利用による1999年の損害額は,世界全体では約122億ドル,日本国内では約10億ドルに達する。BSAは2000年の調査結果をこの5月に発表するが,損害額が1999年度を上回ることは間違いないと見られる。

 今年1月1日付で施行された「改正著作権法」は,まん延するソフトの不正利用に歯止めをかける施策の一つだ。同法により,社員のソフト違法コピーなどで著作権を侵害した企業には,最高1億円もの罰金が科されることになった。従来の罰金は最高300万円だった。BSAの日本担当顧問を務める石原修弁護士は,「ソフトのライセンス管理に対する企業の責任が格段に重くなった」と指摘する。

 BSAとACCSは,企業内の悪質な違法コピーやライセンス契約違反の実態を掘り起こすため,社員の「内部告発」を呼びかけている。通報者には謝礼として,告発内容の信憑性が高ければ3万円を,裁判になった場合に法廷で証言すれば30万円を支払う。「企業内の違法コピーは表面化しにくい。しかし,テレビCMなどの効果もあって,多数の情報が寄せられている。もちろん,すべてを鵜呑みにするのではなく,告発内容を慎重に調査している」(BSA日本担当事務局の水越尚子事務局長)。

 内部告発が発端となって訴訟にまで発展したケースは,日本でも3件ある。このうち,2000年12月に米マイクロソフトなどが国内の大手バイク便業者を訴えたケースは,現在も係争中だ。

(玉置 亮太)