ブロードバンドの普及を阻害する課題を解決しようとする取り組みが国内でも本格的に始まった。今後コンテンツが大容量化したり,アクセスするユーザーが増えても,高速にコンテンツを配信できるようにする「CDN(コンテンツ・デリバリ・ネットワーク)」サービスが相次いで登場している。一方,大手のインテグレータやプロバイダが主要メーカーと組んで,コンテンツ配信に不可欠な著作権管理や決済,認証などの基盤整備に乗り出した。

 2000年末に約1万世帯だったADSL(非対称デジタル加入者回線)のインターネット接続サービスのユーザーは,そのわずか3カ月後には約7万世帯に急増。今年末には100万世帯に達する勢いだ。一方,「FWA(加入者系無線アクセス・システム)」による無線のインターネット接続サービスも相次いで登場。さらに今年3月からは,有線ブロードネットワークス(東京都千代田区)が東京と大阪の一部地域で,光ファイバを使ったインターネット接続サービスを開始した。

 ブロードバンドの正確な定義はないが,「帯域が500kビット/秒を超える,定額料金制のインターネット常時接続サービス」を指すことが多い。ADSLは512kビット/秒(下り),FWAは1.5Mビット/秒が一般的。有線ブロードネットワークスのサービスは,実に100Mビット/秒という超高速を売りものにしている。こうしたブロードバンド・サービスを利用すれば,画質の高いストリーミング映像を楽しんだり,音楽ファイルなどのコンテンツを短時間でストレスなくダウンロードできる。実際,ブロードバンドの高帯域という特徴を生かしたコンテンツ配信サービスに乗り出す企業も増えてきた。

 ところが,今後コンテンツが大容量化したり,アクセスするユーザーが増えると,ブロードバンドによるコンテンツ配信サービスは大きなカベに直面することになる。最大の問題は,コンテンツ配信に利用するサーバーやネットワークにかかる負荷が急速に増大して,配信速度が低下することだ。これでは,せっかくのブロードバンド対応コンテンツを快適に利用することはできない。

「CDNサービス」が本格化

表1●日本でCDNサービスを手がける主な企業
専業のアカマイに対して,アクセリアやデジタルアイランドはWebホスティングも手がける。AIIやJストリームは,コンテンツ配信サービスの一環としてCDNサービスを提供する
 ブロードバンドが抱えるこうした問題を解決する切り札として,キャッシング技術を利用してコンテンツ配信を高速化する「CDN(コンテンツ・デリバリ・ネットワーク)」サービスが,国内でも相次いで始まった(表1[拡大表示])。

 CDNサービス事業者は,主要ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)の多数の接続拠点などに,コンテンツの複製が置かれたキャッシュ・サーバーを設置。コンテンツ保有者や配信事業者が自社またはデータセンターで運用しているコンテンツ配信サーバーへのアクセス要求を,最適なキャッシュ・サーバーに振り分ける。これにより,コンテンツ配信サーバーに対するアクセス集中を回避できるので,ユーザーは大容量のコンテンツでも快適に利用できるようになる。

 コンテンツ保有者や配信事業者にとっては,自前のコンテンツ配信サーバーだけを使う場合に比べて,はるかに大容量かつ高速のコンテンツ配信が可能になる。ハードの増強など,システム投資も抑制できる。

 2001年4月には,CDNサービス最大手の米アカマイ・テクノロジーズが,ソフトバンクブロードメディア(東京都中央区)と合弁で,アカマイ・テクノロジーズ・ジャパン(同中央区)を設立した。「ブロードバンドのインフラを整備しない限り,優良なコンテンツが広く流通することはない。その意味で,CDNサービスを提供する事業者の役割は大きい」(同社の橋本太郎社長)。今年2月には,国産のCDNサービス事業者であるアクセリア(東京都千代田区)が活動を開始。米デジタルアイランドも日本法人を通じて,1999年6月からサービスを提供している。

 こうした専門の事業者のほかに,コンテンツ配信事業の一環としてCDNサービスを提供する企業も増えてきた。ストリーミング配信を手がけるジェイストリーム(東京都港区)やAII(同品川区)である。2001年4月にはNTTコミュニケーションズ(同千代田区)も両社と同様のサービスを開始した。

(中村 建助)