ホンダはアプリケーションを新規開発する速度を従来の2倍に引き上げることを狙って,「RAC(ラピッド・アプリケーション・センター」というIBMの開発支援サービスを採用する。ホンダは日本IBMと「コ・ソーシング」と呼ぶ契約を締結,両社の技術者が協力して開発を進めていく。

表●米IBMが2000年7月から実施しているアプリケーション開発支援サービス「RAC(ラピッド・アプリケーション・センター)」の概要
(出所:米IBM)

 RACは,ビジネス知識を持つ事業部門の担当者,情報システム部門,そしてIBMの技術者が,少数精鋭による共同チームを作り,プロトタイピング手法を使って,アプリケーションを素早く開発するものだ([拡大表示])。開発作業をIBMにアウトソーシングするのではなく,両社が協業して進めることから,コ・ソーシングと呼んでいる。こうした契約は日本で初めて。

 ホンダは5月末に,日本IBMとRACの契約を締結,6月1日から開発チームの編成や開発センターの準備に入っている。契約期間は数年にわたるが,正確な年数および契約金額は公表していない。成果保証をはじめとする,契約内容の詳細も明らかにしていない。ホンダは過去1年近くをかけて,RACの内容を検討し,パイロット・プロジェクトも実施した上で,正式採用に踏み切った。

 RACの特徴は,開発組織,業務プロセス,開発手法,管理の仕組みを具体的に規定してあること。開発手法を例にとると,「開発すべき機能のうち,重要度の高い8割分を開発し,残りの2割を先送りする」,「プロトタイプの作り直しは3回までにとどめる」といったポイントを詳細に規定している。

 RACの導入に関与する人材は,ホンダの情報システム部門400人のうち,埼玉県和光市の開発センターにいる250人。日本IBMはグループ企業を含めて,150人の技術者を開発センターに参加させる。ホンダと日本IBMは順次,1チーム6~8人程度の開発チームを組織していく。年内をメドに,両社合わせて400人が複数の開発チームあるいはサポート・グループを形成する。サポート・グループは,開発手法,生産性の計測,テスト技術に精通した技術者で構成し,各開発グループを支援する。

 新体制により,ホンダは,生産管理や販売管理など業務アプリケーションの新規開発をこなしていく。ビジネス要件を決定できる事業部門の人材もチームに入れるため,要件定義からテストまで一貫して行え,開発速度が上がるという。当初は,Web技術を使った中規模の開発案件が中心になる見通し。CADなど研究・開発用アプリケーションは対象外である。

 ホンダがRACを採用した最大の理由は,開発のスピードを向上させることである。開発すべきアプリケーションが山積しているため,対策を検討した結果,RACの採用に至った。

 さらに,日本IBMの技術者と一緒に仕事をさせて,ホンダのシステム部門の技術者のスキルを高める狙いもある。RACの契約締結に先立って,ホンダは3月末に既存システムの運用を日本IBMにアウトソーシングする契約を結んだ。今後,ホンダのシステム部門の技術者は,アプリケーションの企画や開発に専念していく。

 ホンダは,開発まで含めたフル・アウトソーシングの提案を日本IBMから受けたが,「企画や開発は企業の生命線であり,自社内で実施すべき」という考えから,コ・ソーシング方式のRACを選択した。

(谷島 宣之)